テスト飛行
次の日、俺とゴズさんは街の北の草原に来ていた。昨日話していたように、今日は魔道飛空艇のテスト飛行をする。
「雨が降らなくてよかったぜ。実際は撥水加工とかするから、ある程度の天候不良ならどうにかなるが、この模型にはそんな手間のかかる作業してないからな」
そう言いながら、ゴズさんは魔道飛空艇を動かす準備を始めた。俺にはまだ何が何だかわからないが、ブツブツ言いながら調整していた。
「よし、これで終わりだ。今から飛ばすぞ。お前さんもよく見ておけよ」
「はい。絶対成功させましょう」
そしてゴズさんが魔道具を起動させた。すると魔道飛空艇が発進した。
しかし魔道飛空艇は空に飛ぶのではなく、ずっと地面近くで低空飛行を続けていた。
「うまくいきませんね」
「いや、これは確実な進歩だぞ。今までは低くてもこんなに長く滞空することはできなかったんだ。レイン、お前さんのおかげだ」
「そうなんですかね?」
俺はゴズさんにそう返事をしたが、頭の中では別のことを考えていた。
前世の飛行機と同じように羽はつけたが、飛び立つことはなかった。何が足りないのだろう。
そうか、角度が足りないのか。飛行機は最初、主翼の後ろ側が可変式になっているから、羽から得る揚力が大きくなってるのか。
しかし魔道飛空艇を斜め上に飛ばすのは、あまり現実的じゃない。飛行機と違って機体が小さくないから難しい。それなら――。
「ゴズさん、解決方法を思いつきました。今度は羽の角度を変えましょう。斜め方向にすれば、機体が受ける上向きの力も大きくなるはずです」
「羽の向きか。一体お前さんの頭ん中はどうなってるんだか。よくそんなことぽんぽんと思いつくな。なら早速取り掛かるぞ」
そう言って、ゴズさんはすぐに工房に戻っていった。
工房に戻ってきた俺とゴズさんは、まず設計図とにらめっこしていた。
「角度を上げすぎると揚力は大きくなるが、速度は大幅に落ちるか。これは角度の調整が必要だな。まずはさらに小型の模型を使って、どの角度が一番かを試してみるか」
「それがよさそうですね。それで、俺は何をすればいいですか?」
「お前さんには、ついに魔道具作成に挑んでもらう。トレント材に魔道インクで魔道回路を描く作業だ。描き方はお手本があるから、とりあえずは模写をしてもらうことになるがな」
「わかりました」
それから俺はひたすら魔道回路を作り、ゴズさんは羽の角度が少しずつ変わっている模型を複数作っていた。
そうして複数回のテストを繰り返し、理想の角度を発見した。そして今日は二度目のテスト飛行を行うことになった。
「よし、じゃあ起動させるぞ」
「なんだか緊張しますね。俺が作った魔道具が実際に動くかどうか」
「これだから魔道具作りはやめられないんだよ」
ゴズさんが魔道具を起動させると、前回とは違い、ちゃんと徐々に高度を上げていった。
「ゴズさん、見てください! 成功しましたよ! ようやく空を飛びました!」
俺が声を上げながら喜んでゴズさんの方を向くと、ゴズさんは泣いていた。
「おう、そうだな。すまねぇ。俺は感動してる。心のどこかではもうあきらめてたんだ。魔道飛空艇が空を飛ぶ姿を見る日が来るとは」
魔道飛空艇は十数分飛び続け、徐々に落ちてきた。
「よし、これなら次の魔道具発表会で研究成果として出すことができる。これでようやく魔道飛空艇が作れるぞ。だが問題は着陸だな」
「着陸はいろいろとやってみないとわかりませんが、魔道具発表会ってなんですか?」
「年に一度、王都で魔道具研究の成果を発表する場があるんだ。ある程度、魔道具開発において実績がある者が参加でき、中にはそこで発表がうまくいくと国家研究所に入ることもできる」
「そこで発表すれば、また国家事業として魔道飛空艇の開発が進められるってことですか?」
「そうだ。これでようやく俺の夢がかなうかもしれない。次の発表会は半年後だ。それまでに完璧に仕上げてやる」
そう言うと、ゴズさんは改まった態度でこちらに向いた。
「レイン、お前には感謝してもしきれない。ありがとうな。それと、俺が教えられることは教えたと思ってる。あとはお前さん次第だ」
「はい。ゴズさん、ありがとうございました」
「と言っても、まだ魔道飛空艇が完成したわけじゃないから、これからもいろいろとお願いすると思うけどな。まだまだ聞きたいことがいっぱいあるしよ」
「そうですね。俺も完成させるために手伝いますよ」
そうして俺とゴズさんは魔道飛空艇を回収して、また工房に戻っていくのだった。
飛行テストが成功した次の日、俺の部屋に手紙が届いていた。
差出人はグランツ商会だった。中身はクリスタルホーンラビットの角が売れたので、それの代金を受け取りに来てほしいという内容だった。
「最近ずっと工房にこもってたから、あんまり日付を気にしてなかったけど、もう一ヶ月以上たったのか」
俺は準備をしてからグランツ商会に向かうことにした。一体いくらで売れたのか、何にお金を使おうか考えながら、グランツ商会に向かって部屋を出た。
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