新たな日常
ゴズさんの魔道飛空艇作成を手伝い始めた俺は、忙しい毎日を過ごしていた。
あの日ゴズさんの魔道具工房を出た俺は宿に戻り、女将さんに連泊は今日で終わりということを伝えた。女将さんにはわざわざ毎日おんなじ部屋を用意してもらっていたので、ちゃんと挨拶をした。
「あんたがいなくなると少し寂しくなるねぇ」
「ほんとお世話になりました」
「この街にはいるんだろ? だったらたまにでいいからご飯を食べに来てくれりゃいいよ」
「はい! 食べに来ますね」
翌日の朝、俺は女将さんたちに見送られながら宿を出発した。
新しく泊まる社宅の場所は昨日ゴズさんにあらかじめ聞いていたため、迷わずたどり着くことができた。アパートの前にはゴズさんが立っていて、俺の泊まる部屋に案内してくれた。
「レインおはよう。ついてきな。今日からお前が泊まる部屋に案内してやる」
社宅のアパートは3階建てで、とても綺麗に使われていた。
「お前さんの部屋はここだ」
俺が案内されたのは3階の角部屋だった。
「いいんですか? こんなよさそうな部屋をもらっちゃって」
「いいんだよ。俺の工房で働いている奴はおっさんばっかだから、わざわざ上の階に泊まりたがる奴なんていねえんだ」
角部屋のため中は広く、窓も二面についていた。3階なのもあって見晴らしはとてもよかった。
「それとレインは大丈夫だと思うが、下に住んでるやつに迷惑かけるなよ」
「はい。わかりました。気を付けます」
「それで今日はどうすんだ? 冒険者のほうに行くか?」
「いえ今日は魔道具工房のほうに行きたいと思ってます。なるべく早く自分で魔道具を作れるようになりたいので」
「そういえば魔道具作りを教えてほしいと言っていたが、そんなに作りたいものがあるのか?」
「はい。とても」
そう、俺はとにかく早くお風呂とトイレを作りたい。
荷物を部屋に置いたあと、俺とゴズさんは工房に来ていた。工房には朝早くにもかかわらず、職人たちが魔道具作りを行っていた。
「こんなに早くからやってるんですね」
「うちはほかの工房と違い週ごとの最低数が決められていて、あとは歩合制なんだよ。だから働いた分だけもらえる給料が増えるってことだ。逆に言えば一定数納めればあとは自由だから、俺みたいに自分の好きな研究をする奴もいれば別のところで働いている奴もいるぞ」
俺はそんな職人たちに軽く挨拶をしてから奥の部屋へと行き、魔道具作りを学び始めた。
「魔道具とは主に二種類ある。付与術を使った魔道具と、魔道回路を使った魔道具だ。この二つの違いは、発動に使用者もしくは作成者の魔力を使うか、魔石を使うかだ」
付与術で作られた魔道具は主に携帯用のものが多いらしい。例えば物の持ち運びに便利なマジックバッグなどは、主に付与術で作られた魔道具らしい。
魔道回路を使った魔道具は設置型のものが多く、街の街灯に使われている魔道ランプはそれで作られたものだそうだ。
「次に魔道具作成にはいろいろなスキルが必要だ。そのスキルは作りたいものによって変わってくる。しかし俺たちが今から作る魔道飛空艇は、魔道具作成の集大成みたいなものだ。よって生産職のスキルのほとんどが必要になる」
それからゴズさんは生産職スキルについていろいろと教えてくれた。
生産職スキルは次のようなものがあるらしい。
・鍛冶
・木工
・裁縫
・陶芸
・細工
・錬金術
・付与術
ほかにもあるらしいが、メジャーなものはこれぐらいだという。この中で魔道具作成に必要なものはすべてらしい。
この工房で量産されているランプの魔道具は、作る部分が分担されているため木工のスキルがあればこの工房での仕事はできるらしい。
この工房で作られている部分は魔道具の発動に必要な魔道回路の部分だそうで、外側の金具などは鍛冶屋から買っているらしい。
しかしオリジナルの魔道具を作る場合、そんなことはできない。すべて自分の手で作らなければならないからだ。よってすべての生産職スキルが必要になる。
「その中でもお前さんには最初に木工スキルから習得してもらう。魔道回路の作成には、魔力の通りがよく頑丈で加工しやすいトレント材が主に使われるからだ」
トレント材というのはトレントという木の魔物からとれる素材らしい。それに魔道飛空艇の模型の骨組みにも木が使われているため、その骨組みの作成が俺の最初の仕事になった。
その日俺はひたすら木材を加工し続けた。俺のスキルではそのまま骨組みにできるほど上手に加工できないため、木材をある一定の大きさにする作業をしていた。
ゴズさんはというと、俺が整えた木材を次々に骨組みへと加工していた。
作業が終わった後、俺はゴズさんと一緒に酒場に来ていた。
「それにしてもゴズさんの作業スピード、すごく早いですね」
「まぁ人生の半分以上魔道具を作ってりゃ、あれぐらいできるようにはなるぞ。それよりもお前さんのスキル習得の速さのほうが異常だったぞ」
今日の作業中にも驚かれたのだが、どうやら俺は少々特殊らしく、こんなに早くスキルを覚えられることはないようだ。
気になってインターネットで調べると、異世界からの転移者はスキルの習得が早いらしい。
「本当だったらあと3日くらいは木工スキルを覚えてもらうために木材の加工をやってもらおうと思ってたんだが、次からは別のものに取り掛かるぞ」
「次はなんのスキルを身に着けるんですか?」
「そりゃあ次回のお楽しみだ」
そのあとは軽く雑談をしながら夕食を食べ、自分の部屋へ帰った。
ゴズさんからはお酒を勧められたが、二日酔いは勘弁なので遠慮しておいた。
この作品の続きが気になる、面白いと思った方はぜひ下の☆をクリックして応援していただけると嬉しいです!!!




