~幼馴染side①~
私は白石碧。一週間前に死んだ黒川蓮の幼馴染。
蓮は私を助けるためにトラックに轢かれて死んでしまった。最後に見た彼の表情は一生忘れないだろう。
今日はそんな彼のお葬式の日だった。
私と蓮は幼馴染だった。いや幼馴染というより血はつながっていないが兄妹に近かった。
私たち二人は施設で育った。
私は小学校二年生の時両親が車の事故で亡くなり施設に入ることになった。後部座席に乗っていた私は奇跡的にも生き残ることができた。トラックと衝突した車の前方部分は元の形がわからないほどぐちゃぐちゃになっていて前の座席に座っていた両親は病院に運ばれることもなくその場で死んでいた。
当時両親が死んだときに私のことをどうするのかという親族同士の話し合いの結果私は施設に送られることになった。あの時のことは今でも覚えているが泣いている私の前で大人たちがこちらを無視して話し合いをしていた。
今になって思えばあり得ない話だ。泣いている子供を無視してその親の財産をどう分けるのか話していたのだから。
その時の私は幼いながらにわかっていた。もうここには私の見方はいないのだと。
施設に入れられた後も私は人を信用できなかった。周りの子が遊びにさそってくれても私は断り続けた。そして一カ月がたったころには誰も私に話しかけに来なくなった蓮を除いて。蓮は私よりも先に施設で暮らしていた。
蓮は私が無視をし続けても毎日根気強く話しかけてきた。結果負けたのは私だった。次第に蓮としゃべるようになり友達になった。
蓮のおかげで友達もできた。遊びに誘ってきてくれた子達とも仲直りをし次第に人を信用できるようになった。
最初のうちは同年代の子供たちとしかうまくしゃべることはできなかった。大人と会話するとどうしても両親の葬式のことを思い出してしまい言葉が出てこなかった。
そんなときはいつもそばにいた蓮が助けてくれた。そんな甲斐あって中学生になるころには何の支障もなく生活することができるようになった。
高校生になると私と蓮は施設を出て一緒に暮らし始めた。なぜ施設を出たかというとそういう決まりだからだ。
大体施設を出る子供たちは就職するのだが私と蓮は進学した。幸い二人とも頭がよく奨学金制度を利用することができたからだ。
それでも一人暮らしとなるとお金がかかるため二人で暮らすことに決めた。
裕福な生活はできなかったけれどとても幸せだった。私は心のどこかでこのまま一生一緒に暮らしていくんだろうなと思っていた。
なんとなくで結婚して子供を産み幸せな家庭を築くそんな夢を描いていた。
しかし現実はそういうわけにはいかなかった。
あの日私たちは珍しくバイトの休日が重なり二人で一緒に出掛けていた。買い物をし昼食を食べその帰り道だった。
「今日は楽しかったね。せっかくの休日だったのに買い物付き合ってくれてありがとう」
「いいんだよ。俺もちょっと出掛けたい気分だったし」
そんな話をしながら横断歩道を渡っているとき道の奥のほうからトラックが猛スピードで迫ってきていた。
「おい碧逃げるぞここは危ない」
トラックに気が付いた蓮は私の手を引っ張り歩道に行こうとしていた。
しかし私は動けなかった。トラックに気が付いた時私の頭の中には両親が死んだときの記憶が流れていた。これが走馬灯なのかとか考えていると急に勢いよく体を押された。
その衝撃とともに私の意識は現実に戻ってきた。しかし次の瞬間目に入ってきたものは。蓮がトラックに轢かれる瞬間だった。
車に轢かれる直前蓮はこちらを見て優しい顔で笑っていた。
私は一瞬何が起きたのか理解できなかった。私はすぐに動けなかった。
すぐに周りにいた人たちが警察や救急を呼び対応をしてくれたが、蓮は救急隊が現場に着いた時にはこと切れておりその場で死亡が確認された。
私は警察に保護された。警察では事件の詳細を聞かれた。その時私はこう答えた。
「私が悪いんです。私が蓮を殺したんです。私のせいで蓮は死んだんです」
事情を全部話しても警察の人はそんなことはないと。悪いのはあなたではなく轢いたひとだと。
いっそお前が悪いと言ってくれたほうが楽になれたのかもしれない。
事情聴取が終わった後は警察の人に送ってもらい家に帰った。
私が自分の足で逃げれていたらあんなことにはならなかったかもしれない。そんなことを考えない夜はなかった。
そして今私は蓮のお葬式に来ている。参列者は施設の先生と学校で蓮と仲良くしていた友達が数人だけのとてもシンプルな直葬だ。
葬式が終わってからというもの私の心はぽっかり穴が開いたようになっていた。学校で友達と話していてもどこか心ここにあらずという状態だった。
事件のあと刑事裁判が行われて慰謝料が払われることになった。私と蓮は結婚していたわけではないためそのお金は国に帰るはずだったのだが蓮が私を生命保険の受取人にしていたためお金はすべて私のところに来たのだ。
なんで蓮が生命保険なんかに加入していたのかというと、建築関係のところでバイトをしていたからだ。建築バイト中の事故で死んだときに私が生活で困らないようにするためにわざわざ加入をしていたらしい。
私は大金を手に入れたがこのお金をどうしても使う気にはなれなかった。
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