7話 九曾の入学式
デデドン(絶望)
太一は、新しい制服に袖を通した。
真新しい制服は、茜色のブレザーであった。
今までの制服は、学ランタイプの制服だったので、ネクタイはなかった。
なので、ネクタイの着用に10分ほどあくせくした。
制服を着ると、まず楓花を起こした。
「楓花ちゃん、起きて。もうすぐ起きないと、会社に間に合わないよ」
クローゼットを開けると、そこには楓花がいた。
楓花は、専用の布団で眠っている。昨夜、とりあえずこしらえたベッドで寝てもらった。
「わかった~。あぁ、今日も仕事なのね。朝なんて来なければいいのにぃ」
「そんなこと言わないで。朝食作るから、着替えて降りてきて」
「はぁーい」
太一は、朝食を作る。
今日は、トースト、目玉焼き、サラダを作ることにした。
朝食の定番メニューで、手間があまりかからない。面倒なのは、サラダくらいだろうか。
まず、サラダから作り始めた。
「いたっ」
太一は、野菜を切るときに、誤って指を切ってしまった。指先から、真っ赤な血がとめどなくあふれ出した。
ちかくのティッシュを傷にあてがう。
「やば、血が止まる様子がないな」
止血するために、腕を心臓より上にあげた。
そうしていると、だんだん傷口が熱くなっていく。
血の流れる感覚が、よくわかる。
ドクドクと流れるように、少しずつ快感が体の中に押し寄せる。
「あはぁ・・・」
艶のある声が、キッチンに響く。
今までに感じたことのない快感が、体中に駆け巡る。
「なんだよ・・・。これ・・・」
キッチンでうずくまっていると、二階から楓花が降りてきた。
「ちょ、なにしているの。朝から色っぽい声だしちゃって。あ、もしかして、私の寝ている姿に、興奮しちゃったの・・・?」
気まずそうな楓花。
「ち、違うよ!野菜切っていたら、指切ったら、なんだか気持ちよくなっちゃって・・・。痛いはずなのに、なんで!」
悶えながら言う太一。
「あぁ。それは、太一がドMになっちゃったからでしょ。昨日、言ったじゃない?感覚が鋭くなっちゃうんだって」
「ここまで、ドMになっちゃうの?これ、日常生活に支障ありまくりだよ」
「んー。今まで感じたことない快感だから、きっとここまで感じちゃうのね。すぐ慣れるわよ、多分。人生、慣れ!これで、大体のことは解決できるわ」
「慣れるのかなぁ・・・」
時間が過ぎると、快感の波が収まった。
太一は、なんとか朝食を作り終え、蛍子を起こしに行った。
「楓花ちゃん、おはよう。昨日は眠れたかしら?」
居間に蛍子が現れ、楓花に挨拶する。
昨夜、蛍子と楓花は、初対面の挨拶を済ませていた。
「はい。太一がベッドつくってくれたので、よく眠れました」
礼儀正しく挨拶をする楓花。
「ほらほら、みんな席について。朝食にするよ」
太一は、二人に料理をくばる。
「いただきまーす」
朝食がはじまった。
「太一が、料理を作っているのね。割と様になっているわ」
楓花が、朝食をみてそう言った。
「太一くんの料理は、なかなか美味しいのよ。今日の晩御飯も楽しみにしているといいわ♪」
「昨夜は、出来合いのもので、悪かったよ・・・」
3人は、食事を終えると、出かける準備をした。
楓花と蛍子は、出勤時間がはやいため、太一よりも早く出かける。
太一は、二人を玄関で見送る。
「気を付けていってらっしゃい」
「太一君、何事も最初が肝心だからね。入学式がんばるのよ」
「何かあったら携帯に連絡頂戴ね。すぐ駆けつけるから」
蛍子と楓花は、出かけて行った。
現在時刻は、7時15分。
朝食の後片付けをして、太一も出かけることにした。
今日は、太一の進学する九曾高校の入学式である。
外は快晴、暖かい空気が世界を満たしている。
外を歩いているだけで、気分が高揚するような心地よい日であった。
太一は、駅まで徒歩で行き、電車に乗った。
電車に乗ると、九曾高校の入学式に向かうであろう新入生らしき人々が、ちらほら見受けられた。
電車に乗ること4駅で、九曾高校のある小宮駅に到着する。小宮駅は、県内でも一番大きい駅であり、巨大ターミナルでもある。複数の電車が走っており、朝の駅中は、サラリーマンや学生でごったかえしていた。
太一は、駅から九曾高校に向かった。
九曾高校の前には、九曾高校入学式の看板が飾ってあった。
校門に入ると、上級生らしき人が、受付をしていた。受付を済ませると、体育館に案内される。
指定されたパイプ席に、着席をした太一。
体育館の中を見渡すと、新入生が
どんどん埋まってゆく。
さすがは伝統校、入学式が始まると荘厳な雰囲気が醸し出された。
体育館の中央にある壇上には、様々な人が入れ替わった。
その人々は、長い話をしていく。
伝統を引き継げだの、社会を担っていくなど、どこかできいたことのあるような話ばかりであった。
何人入れ替わっただろうか。
若い男子生徒が、壇上の上に上がった。
「みなさん、入学おめでとうございます。生徒会長の唐沢 京といいます」
壇上の上で礼をした。太一は、一度会ったことを思い出した。
「皆様がご入学される我が母校、九曾高校は、伝統があり、優秀な人物だけしか入学することできません。その優秀な人物の中に、あなたたちは選ばれました」
「ですが、優秀な人物だとしても、努力を怠った時点で、ただの屑になってしまいます。常に、力を磨き続けることで、社会に通用する人間になることができるのです。正直に言いましょう、社会において一番通用するものは、力です。力を持つ者は、社会を動かすことができます。新入生の皆様に、社会の厳しさを学んでもらうための、最高のプログラムを組んでおりますので、ぜひ楽しみにしていてください」
「最後に、九曾高校を動かしたいのであれば、力をつけて、この僕ら生徒会を潰してみてください。そのときに、私は生徒会長の座を明け渡します。以上です」
生徒会長の言葉が終わり、壇上を下りた。太一は、驚いた。いや、ここにいる新入生全員が驚いていた。
入学を祝う言葉にしては、かなり過激であった。周りがざわつき始める。そうしていると、壇上に男が一人上った。
「静粛に。私は、校長の九曾 善次郎だ。新入生たちよ、入学おめでとう。いきなりの生徒会長のご挨拶に、諸君らは驚いているだろう。独特の癖があって、やっかいな奴だが、学力、能力は、在校生の中では、NO1だ。我が校では、力を持つものが、学校を動かすことができる。新入生諸君には、ぜひ生徒会長の座を奪ってもらいたい。そうすれば、自分の思うように、学校を支配できるわけだ。今や、日本の犯罪発生率が上昇しているのは、周知の事実であろう。我々は、日本の犯罪を防ぐことができる人材を輩出したいと考えている。我が校は、PSCへの推薦校としても認定されている。推薦されたいならば、ぜひ力を誇示してほしい。今日から今まで以上にがんばってくれたまえ。以上だ」
校長の挨拶が終わった。
太一は、この学校のことをあまりに知らなかった。
幼馴染のさやかを追いかけるだけのために、入学した。
そんな学校が、まさかPSCの推薦校だったとは、さすがに思わなかったのだ。
PSCとは、特殊犯罪防止を得意とする民間の軍事会社である。
表上では、民間になっているが、裏では国と繋がっているらしい。
PSCは、普通に入社できるわけではない。特殊条件をクリアしないと入社できない。
その特殊条件の一つが、九曾高校からの推薦だったのだ。
この話を聴いて太一は、思った。
能力を強化していかなければならないな、と。
学力もそうだが、能力を強化していかないと授業や試験についていくことはできないだろう。
太一は、能力が九曾の平均レベルよりも低かった。
入学式が終わった。
次は、クラス分け発表だった。
太一は、ワクワクしていた。
九曾高校の最初の一年を過ごす仲間が発表されるからだ。
太一は、中庭に来た。
中庭の掲示板には、クラス発表の内容が書かれた紙が掲示されていた。
「えぇと、俺のクラスはどこかな・・・」
Aクラスをみた、ない。
Bクラスをみた、ない。
Cクラスをみた、ない。
Dクラスをみた、ない。
Eクラスをみた、ない。
Fクラスをみた・・・あった。
太一は、Fクラスに配属された。
Fクラスのある教室に向かった。
目の前まで来ると、実感が湧いてきた。
これから、九曾高校の一員になるという実感が。
太一は、扉を開けた。
目の前に広がるのは、クラスメイトたちの葬式会場が広がっていた。
あるものは、机に座り、涙を拭いている。
あるものは、棒立ちになり、上を見上げ呆けている。
太一は、目を疑った。
全員、落ち込んでいるのだ、このおめでたい日に。
太一は、部屋に入ると見知った顔を見つけた。
入学して知らない人が多い中、知っている人がいるのは、嬉しかった。
「もしかして、石田タカシ君?」
「おお。まさか、同じクラスになるとは、思わなかった。太一、久しぶりだ」
「うん、久しぶり。いきなりだけど、質問していいかな?」
「いいぞ。ただし、俺のプライベートに関する質問は制限させてもらうぞ」
「そんなのきかないよ・・・。どうして、Fクラスのみんなは、入学式の朝からこんなに暗いのかな?」
「太一よ。クラスメイト達が、葬式パーリー状態になるのも無理はない。これをみてみろ」
タカシは、一つのプリントを太一に渡した。こ
れは、どうやら、一人一枚机の上に置かれていたようだ。
Fクラスの諸君、入学おめでとう。君たちは、九曾高校の入試を本当にギリギリなラインでクリアできた屑どもである。Aクラスとは、比較にならないほどの馬鹿たちの集いだ。これからの暗い未来のために、ここで足踏みするだけか、少しの可能性を追って足掻くかは、君たち次第だ。まぁ、せっかく九曾高校に入ったのだから、がんばってくれたまえ。
以上
「これは・・・」
「な?落ち込むのも無理ないだろう?」
「この学校は、Fクラスの生徒に対する扱いが随分ひどいね」
「いきなりのこの仕打ちは、むかつくな。この学校の連中の常識を疑うよ」
「うん・・・」
葬式状態のクラスに、一人の教師が入ってきた。
「ほら、みんな席について」
生徒たちは、席に着く。
「皆さん、こんにちは!私は、今日からFクラスの担任になります、浅田香奈っていいます。よろしくね」
元気のよい挨拶が教室中に響く。暗く沈んだ空気を気にすることなく、話を進める。
「では、さっそくなんですが、明日からFクラスのみなさんは、合宿に行ってもらいます。みなさんの机の上に、しおりが置いてありますので、それをよく読んで、明日の集合時間に遅れないでくださいね。明日集合時間が、早いので、今日は解散です」
生徒たちはざわめき始めた。いきなりの話で、驚くのも無理はない。
「先生、なぜいきなり合宿があるんですか?普通はないですよ?」
一人の生徒が疑問を教師にぶつける。
「もちろん、あなたがたの根性を叩き直すためですよ♪」
平然とそんなことを言う。28歳独身の浅田香奈。
そんなこんなで、太一たちは、合宿に行くことになった。
今日は、面接行きました。
たぶん、落ちました。
\(^o^)/




