5話 楓花ちゃん到来!(後編)
だんだん、ギャグっぽくなってまいりました!
「太一、あなたには持続力がないのよ!そして、硬さもたりない!」
急にテンションがあがり、熱弁しだした楓花。
「えっ、何の話かな?もしかして、ちん・・・」
太一の頭上には、大量のはてなが浮かんだ。まさに何言っているんだ、こいつ状態である。
「それ以上言っちゃダメ!R-15なのよ!も、もちろん、能力の話よ。私は、風の能力者育成のプロなのよ!私には、わかるわ。あんたが、ダメダメな能力者ってことくらい」
「確かに、持続力はないよね。風を吹かせられるのは、5分だけだし。でも、硬さっていうのはわからないな」
「硬さっていうのは、あんたの精神力の安定性ね。能力を行使するにおいて、精神力が最も重要になってくるわ」
「ふむふむ、なるほど」
「太一、自分でも能力を強化できるのかって、不安になっていたりするんじゃないの?」
「そうだね、これから能力が絶対必要になってくると思うんだ。九曾高校は能力者エリートが集う学校だし。どうすれば強くなれるのかなって思うときはあるよね」
「そんなあなたの悩みを私が解消して差し上げるわ!」
「能力訓練内容の作成、手取り足取り腰取りの充実サポート、もちろん24時間体制よ。
なんと今なら、楓花ちゃんお手製の風椿もつけちゃう!風椿っていうのは、妖剣よ。あるとないとじゃ、これからの能力ライフは、全然違うわ」
「でも、お高いんでしょう?」
太一は、大げさなアクションで質問をする。
まるで外国の通販番組の司会者ばりである。
「大体ね、ひと月のお値段がね・・・こんなものでどうかしら?安いと思うけど」
計算機で、数字をだし太一に見せる。
「お、安い・・・のか?まぁ、払えないわけではないけど・・・」
悩む太一。十分くらい悩み続ける太一に、楓花は耐えかねた。割とせっかちな妖精だ。
「もうしょうがないわね、特典でこれもつけちゃうわね、特殊能力付属キャンペーン。こんなにお得なことなかなかないわよ」
「商売上手だね!よし、買っちゃおう!」
「そうこなくっちゃね!」
楓花は、ガッツポーズをした。
「あ、名刺渡すのを忘れていたわね。はい、これね」
名刺には、株式会社フェアリーサポート 営業部 楓花と記載されていた。
「いやぁ、本当に助かったわ。今月、契約取れなかったら、マジ首になるとこだったのよ。この契約書にサインしてね♪判子がないだろうから、拇印でいいわよ。はい、ボールペン」
楓花は、嬉しそうに契約書を差し出す。
「わかった。今書くから、ちょっと待ってね」
太一は、書類を記入し始めた。
「特殊能力付属キャンペーンなのだけど、好きな能力を一つ追加できるシステムになっているの。
でもね、好きな能力を選べる、指名システムを使用すると、めちゃくちゃ値段がアップしちゃうのよね。全く、阿漕な商売だわ、自分でいうのもなんだけど。太一の予算だと、指名料を加算するわけにはいかないわね。その場合、ランダム選択になってしまうの。ランダム選択だと、無料で一つ能力を付加させることできるわけね。どうする、太一?」
「うーん、これ以上値段をあげると、さすがに生活に響くし、姉貴に申し訳ないからやめとくよ」
「わかったわ。現実世界に戻ってから、ランダムで能力が決まるから、その時にまた話すわ」
「わかった。ところで、結局、俺を救った理由ってなんだったの?」
「今話したのが全部よ。顧客に死なれちゃ困るからね!」
「あ、そうですか」
太一は、なんともいえない気分になった。
「じゃ、そろそろ現実世界に戻りましょうか。太一の関係者が心配しているわよ。風椿は、太一の枕元に置いておくから、ちゃんと家に持って帰りなさいよ」
太一の視界をだんだん光が埋め尽くしてゆく。
太一は、現実世界に戻るのだと感じた。
目覚めるとそこには、真っ白い天井がみえた。
ベッドに横たわっており、体を起こし、周りを見渡す。
そこは、やはり病室のようだった。日の光が、微かに部屋の中に差し込んでいる。
すると、ドアのノックが鳴った。
「失礼しまーす。あ、風見さん。意識がお戻りになられたんですね!」
そこには、看護師らしき人がいた。
「今、ドクターを呼んできますね」
ナースは、ドクターを呼びに走った。ほどなくして、ドクターがやってきて、太一を診察した。
ドクターによると、太一の回復力は異常に早く、ほぼ完治しているそうであった。病院から連絡がいき、蛍子が太一の元に駆け付けた。
「太一くうううううん、意識が戻ったのね。本当に、心配したんだからああああ」
今にも泣きそうな蛍子が、太一に抱き着く。昨夜、病院に蛍子が駆け付けた時は、太一は意識を失っていたのだ。
「心配かけて、ごめん。まさかここまで重症になっているとは、思わなかったよ」
太一は、頭を掻いた。
「まさか、チンピラと喧嘩をするなんて、太一君が不良になっちゃったのかと思ったわ。どうゆう事情なのか、しっかり話して頂戴。事と次第によっては、怒るわよ?」
太一は、経緯を話し始めた。あいたま新都心駅に行っていたこと。後輩の深見優子にあっていたこと。深見優子が、絡まれていたこと、などを話した。
「なんだ、女の子を守るために戦ったのね。それなら、おおい結構よ。太一君、がんばったわね。えらい、えらい」
頭をなでる蛍子。今日は、邪険に扱う気力がなかった。
「でも、太一君、なぜかもう傷が完治しちゃったのね。すごい完治力に、お姉ちゃんドキドキよ。研究者としての血が騒ぎそうよ」
なぜか興奮している蛍子。体をくねらせている蛍子は、とても気持ち悪かった。
「まぁ、なぜか治っているよ。今日、一日検査したら、退院できるみたいだ」
「そう、それはよかったわ。そうそう、昨晩、その深見優子ちゃんって娘から家に電話があって、病院の場所を教えてあげたから、多分、お見舞いにやってくると思うわよ」
「うん、わかった。そろそろ、姉貴は、仕事だろう?もう結構いい時間だよ」
時計の針は、6時45分を指していた。
出勤時間にはまだ早いが、通勤時間を考えると、いい時間であった。
「そうね。朝一に会議があるから、その準備もあるから、もうでかけなくちゃかな。太一君、いくら完治しているからといって、今日一日くらい安静にしているのよ」
「わかったよ。気を付けていってらっしゃい」
太一は、蛍子を見送った。
太一は、なんだかんだで嬉しかった。
自分が怪我をしたときに、心配してくれる家族がいることに。
太一は、暇をしていた、病院で過ごすことの退屈さに。傷も完治しているせいか、体がだるいこともなく、眠くもなかった。八時の朝食まで、テレビをみていた。
「うわぁ、さすがMIKOの料理だ。オリーブオイルかけすぎだよね。でも、イケメンがやると様になるのは、なんでだろう?」
情報番組SIPのMIKO’Sキッチンであった。
イケメン俳優MIKOが料理をする番組かつ、オリーブオイルの、オリーブオイルによる、オリーブオイルのための番組である。
MIKOが使う必殺技、追いオリーブがさく裂し、美味しそうな料理が出来上がるのである。
「カロリーやばそうだ。これ、食べれるのかな?」
そうこうしているうちに、朝食がでてきた。
朝食は、アジの開きに、卵焼き、おしんこ、納豆、味噌汁、白米であった。
アジの開きは、多分国産だろう。
オランダ産だと、脂が乗りすぎて、病人にはあまりよろしくないが、国産だと、脂の量が多すぎないので、食べやすい。
太一は、病院食にあまり期待していなかったが、でてきたものは、なかなか美味しかった。
朝食が終わると、面会時間がはじまった。面会時間がはじまって、5分もたたないうちに、太一の部屋の扉がノックされた。
「風見さーん、面会のお客様がいらっしゃっています。開けてよろしいですか?」
「はい、どうぞ」
看護師さんが扉を開けると、そこには、深見優子が申し訳そうに立っていた。
「お、おはようございます。風上先輩、お体は大丈夫でしょうか?」
「おはよう。体のほうは、大丈夫だよ。中にはいってきたらどう?」
病室の中へ入る優子。
「風上さん、かわいい彼女がお見舞いに来てくれるなんてうらやましいですね!では、ごゆっくり」
看護師さんは、扉をしめて去って行った。
「えっ・・・」
「ふぅ・・・」
二人の間に、微妙な空気が流れた。優子は、恥ずかしそうに俯いていた。
「あのう、昨日は助けてくださいまして、ありがとうございました。それと、私だけ逃げてしまって、ごめんなさい。先輩が、病院に運ばれたってきいたとき、心臓が止まるかと思いました」
「心配させてしまって、ごめんね。さすがに、三人相手だと勝てるわけがなかったね。かっこつけすぎちゃったかな!アハハ」
おどけていう太一。
「先輩、今日は真剣な話なんです。茶化さないでください」
涙目になる優子。優子は、本当に心配だったのだ。
「うん、悪かった。あんまりいい癖じゃないね。直すように気を付けるよ」
素直に謝罪した。
「でも、本当に命に別状がなくてよかったです」
「体は頑丈だからね。深見さん、女の子一人で、夜道を帰っちゃだめだよ。あいたま市付近は、最近治安が悪くなっているんだからさ」
「はい、ごめんなさい。あの工事現場を横切ると、家まで近くなるんです。最近まで、へんに悪い人たちなんていなかったんですけど・・・」
「まぁ、みつけられてよかったよ」
太一と優子の間に、少しの沈黙が訪れた。
その沈黙は、居心地の悪いものではなかったが、お互いに微妙な空気になっていた。沈黙を破ったのは、優子だった。
「あの先輩。もしかしたら、お腹すいているかと思いまして、ご飯作ってきたんです」
「お、何をつくってきてくれたのかな?」
「えっとですねー!えへへ、オリーブオイルのおかゆです!」
「えっ!?オリーブオイルのおかゆ!?」
「私もMIKOみたいに、オリーブオイルを駆使して、美味しいものを作ってみようかと思いまして。あ、安心してください。消化がいいように、流動食にしましたから」
優子は、タッパを取り出すと、緑色に染まったおかゆが詰まっていた。
少し赤い物が散りばめられている。
赤いパプリカのようだ。茶碗に移し、太一に差し出した。
「先輩、どうぞ召し上がってください」
「お、おう」
満面の笑顔の優子の食事を、太一は無碍に断ることはできなかった。
(かわいい後輩が作ってくれた食事だ。全部完食するぞ!)
気合いを入れ、蓮華でおかゆをすくい、口に入れた。
何とも言えない風味が、鼻腔をくすぐる。
舌の上には、とろっとしたオリーオイルが滴り、喉に通そうとすると、オリーブオイルが絡みついてきた。
まさに、口の中が、オーバー ザ レインボウしていた。
あまりの不味さに、太一は意識が朦朧としてきた。
(だめだ、ここで気を失うわけにはいかないんだ!まだやれる!)
何がやれるのかわからないが、太一はついにベッドに倒れた。
「きゃー、先輩どうしたんですか!?」
二日連続で、気を失うことはそうそうないだろう。
貴重な経験をするはめになった太一。
意識を失いかけた瞬間、太一は天井に手を伸ばした。
「太陽をつかんでしまった・・・」
そう言い残し、太一は完全に意識を失ったのであった。
秘技!追いオリーブ!
いつかマスターしたいものです。




