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3話 後輩

舞台は埼玉です!

太一は、朝食をつくっていた。

今日の献立は、目玉焼き、お味噌汁、白いごはんに、お漬物というシンプルな朝食であった。

朝食の匂いに誘われ、蛍子が二階から降りてきた。

「おはよう、太一君」

蛍子は、眠そうな目を擦りながら、席に着く。焦点が定まっておらず、髪の毛は寝癖でボサボサになっていた。

「朝食の前に顔洗って、着替えてきなよ」

「はぁ~い」

洗面所に向かう蛍子。蛍子は、朝が苦手である。

いや、FPSにはまり始めてから、特に朝がだめになった。

FPSとは、一人称視点の銃で敵を倒すゲームである。目を覚ました蛍子が、食卓へ戻ってきた。先ほどは違い、蛍子の目は冴えていた。


「やっと目が覚めたわ。お、今日の朝ごはんは、目玉焼きなのね♪」

そういいながら、席に着いた。

「姉貴、目玉焼き好きだからさ。ほら、ケチャップとマヨネーズ」

「うんうん、これこれ。」

円を描くように、マヨネーズとケチャップをかけてゆく。

「あぁ、この淡いピンク色が綺麗なのよねぇ」

「姉貴、目玉焼きとオーロラソースって合うの?」

「なかなか美味しいのよ、食べてみる?」

蛍子は、目玉焼きを差し出した。ピンク色に犯された黄色い目玉は、見た目の良い物ではない。

「いや、遠慮しておくよ」

「あら、そうなの。じゃ、食べちゃおうっと」

食事を二人で取り終えると、蛍子はでかける準備をした。今日は平日で、出勤だからだ。

「太一君はいいなぁ。もう春休みでしょ?」

玄関で、靴を履きながら、太一にそう言った。

「うん、さすがにテンションあがってきたよ!」

「私もお仕事休みたいなぁ」

「ちゃんと仕事行きなさい。ほらほら。」

蛍子の背中を押す太一。

「もちろん、行くわよ。ハメを外さないようにね」


蛍子は、仕事にでかけた。

太一は、せっかくの休みなので、家事全般をすることにした。

まず、溜まった洗濯物をかけ、掃除機をかけた。

両親は不在だが、たまに掃除をしないとほこりが溜まってしまうのだ。

そして、トイレ掃除をし、お風呂場の掃除をする。

タイルにカビが少し生えてきていたのは、ずっと気になっていた。

この機会に、掃除してしまおう。太一は、念入りにタイルのカビを落とした。

なんやかんやで時間は経ち、掃除をすべて終えると、気付いたら正午になっていた。

「よし!掃除全部終えたー!」

家の中は、ぴかぴかになっていた。蛍子が帰ってきたら、きっと驚くだろう。

太一は、午後から何をしようか考えていた。

「うーん、本でも読むか、それとも、恋璃ちゃんのライブDVDでもみようかな。うーん、時間があると迷うな」

計画を立てている太一の耳に、着信メロディが響く。

この着信メロディは、一之瀬恋璃のデビュー曲である。太一は、携帯をみると意外な人物からメールが届いていた。


From 深見 優子

先輩、お久しぶりです。元気にしていますか?突然ですが、進路のことで、先輩に相談があります。もし、よろしければ、お話を聴いていただけませんでしょうか?返事待っています。


深見優子は、中学の後輩だ。

太一が、所属していた緑化委員会で、一緒に活動をしていた後輩である。

「ええと、今日の午後でいいなら、空いているけど、どうかな?と・・・」

太一は、返事を送信した。ほどなくして、深見優子から返信が届いた。

午後2時に、あいたま新都心駅で待ち合わせることになった。


低崎線に乗り、太一は、1時50分に、新都心駅に着いた。

駅前には、サラリーマンらしき背広を着た人たちが、ごったがえしていた。

新都心駅は、多くの会社が集まるビジネス街としてもしられていた。改札口前の横で待っていると、深見優子がやってきた。

「すみません、お待たせしました。先輩、こんにちは」

にこりとしながら、優子は太一に言った。

「久しぶりだね、深見さ・・・ん?」

太一は目を疑った。一瞬、誰だかわからなかったのだ。

太一の認識だと、深見優子は、言い方は悪いが、地味な女の子だった。

でも、どうやらこれからは、認識を変えなければならなくなったようだ。

ゆるふわな髪型で、セミロング。服は、シックな色合いでまとまっていた。淡いピンクのカーデガンに、中は、白いブラウス。パステルカラーのプリーツスカートで、とても似合っていた。

(なんて女子力の高さなんだ・・・!こいつできる・・・!)

「先輩、どうしたのですか?」

上目使いで、太一の顔を覗き込んできた。その仕草に、太一はドキッとした。

「はっ!いや、どうもしないよ。深見さんが、可愛かっただけだよ」

「えっ、かわいいですか?ありがとうございます・・・」

彼女は恥ずかしそうに、俯いた。


(あああ、何口走っているんだ、俺)


太一は、テンパっていた。

「立ち話もなんだから、ミタバで話そうか」

「そうですね、先輩いきましょう」

二人で、近くのミターバックスにはいった。

駅の隣には、トクーンという商業施設がある。

トクーンは、映画館、食事処、ブティック、喫茶店など様々なお店が展開している。

デートスポットには、うってつけの場所だ。

その中に、ミターバックスという喫茶店があるのだ。通称、ミタバ。

二人は、店に入ると注文をした。

太一は、ブラックコーヒーで、優子は、春の新作フラペチーノを頼んだ。

「先輩、ブラック飲めるなんて、大人ですねー」

「ミタバの豆は、ブラックで一番味がわかるからね。ハハッ。新作のフラペチーノは、桜味だっけ?」

太一は、普段砂糖を入れないと、コーヒーは飲まない。

見栄をはってしまう年頃であった。

「そうです。新作出るたびに、チェックしているんです。今回のフラペチーノは、どんな味がするんだろう。楽しみです♪」

二人は、飲み物を持ち、席に着いた。


「で、先輩お話なのですけど。まず、先輩、九曾高校入学おめでとうございます」

優子は、太一の目を見つめながらそう言った。

「ありがとう、深見さん。ほんとギリギリで入学できたって感じだけどね」

「いえ、本当にすごいです。だって、あの九曾高校への入学ですよ?うちの中学からは、先輩ともう一人しか入学できてないんですから」

「俺も最初は入る気なかったんだけどね。ちょっといろいろと事情があって」

「前に、会いたい人がいるって仰ってましたよね。その人に会うためなんじゃないですか?」

「うん、そうだよ。幼馴染が九曾高校にいてね。同じ小学校だったのだけど、急に俺の目の前から消えたんだ。だから、一つ文句でも言ってやろうかと思って」

太一は、場を暗くしないように、茶化した。

「幼馴染さんと会えてよかったですね。その幼馴染さんは、男性ですか?女性ですか?」

「女性だよ。合格会場で、一度会ったのだけど、冷たくあしらわれちゃった」

「それは、先輩がかわいそうです。せっかく幼馴染さんと会えたのに・・・。私がそんなことされたら、泣いちゃいます」

今にも泣きそうな顔をしている優子。

「そ、そんな顔しないで。深見さんは、やさしいね。それに、あまり気にしてないよ。割とメンタルは強いほうなんだよ」

「大丈夫ならいいんですけれど・・・」

優子は、手元のフラペチーノを飲んだ。

「あ、美味しい。やっぱりミタバのフラペチーノは世界一です♪ここのしか飲んだことないですけど」

「それはよかった。ずっと思っていたんだけど、今日の深見さんのコーディネートとてもいいよ。とても似合っているよ!」

「あ、ありがとうございます。友達のなっちゃんが、選んでくれたんです。男の人と会うなら、こ、これくらいのオシャレくらいしないとダメだって言ってくれて。で、でも、べ、別にあんたのために、着てきたわけじゃないんだからね!」

あわあわして、早口になっている優子。

「ちょっと、落ち着いて。なんかキャラが変わっているよ」

「あ、ごめんなさい。先輩がいきなりそんなこというからですよ!もう・・・」

「ごめん、ごめん」

「もういいです。で、話が変わるんですけど、私も九曾高校を受験しようか迷っているんです」

「え、そうなの?どうして九曾に?」

「ええと、ですね、私も九曾に入って、能力の勉強がしたいなって」

「それはいいね!深見さんは、何の能力が使えるの?」

「ええと、それがその・・・私何も使えないんです・・・」

「えっ、九曾は、何かしら能力が使えないと入学できないよ?」

「わかってはいるんですけれど、まだ諦めたくないんです」

「なるほど。そうだね、まだ能力が目覚めてないだけかもしれないよね」


 能力は、その人の才能によって開花するか、しないかが決まってしまう。完全なる先天的なものとされている。その人の才能が開花するのは、人によって年齢が違うが、基本的に10代に目覚めるとされている。


「今回、先輩をお呼び出ししたのは、このことを相談したいなって思いまして」

「もしよければ、俺が暇なときでも、勉強とか、能力とか教えてあげたいって考えているんだけど、どうかな?」

「えっ、いいんですか?」

驚く優子。

「もちろん。だって、かわいい後輩のためだからね。ひと肌脱ごうじゃないの」

「ありがとうございます。嬉しいな♪」

 二人は、お会計を済まし、ミタバをでた。

「今日は、ありがとうございました。これから、毎日勉強がんばらなくちゃ!がんばるぞー」

優子は、はしゃいでいた。小さいガッツポーズをし、気合いを入れる優子。太一は、その姿をみて、応援してあげたいと強く感じた。

「いえいえ。しっかり勉強がんばるんだよ」

「はい!じゃ、今日は帰りますね」

「深見さんの家は、あいたま新都心駅の近くだよね。家まで送ってくよ。最近、物騒だからさ」

「大丈夫ですよ、もう子供じゃないんですから。では、また連絡しますね。さようなら先輩」


そう言って、優子は太一と別れた。彼女を一人で帰らせてよかったのだろうか。

太一の胸の中に、不安がよぎる。

あいたま新都心の治安は、ここ近年悪化していた。

駅周辺でも、事件がたびたび起き、新聞に載ることもあった。

「まぁ、深見さんも子供じゃないし、大丈夫だよね」

優子が去った方角をみた。彼女が先ほどまでいた場所は、人の群れでかき消されていた。

頭の中では改札口に入るつもりであった。

だが、足は反対方向へ向いていた。

神経質な性格は、変わらないな。太一は、そう思ったのであった。



新都心駅にあるのは、ス〇バじゃなく、〇トールでした。

しかも、今年の春の新作は、桜スイーツではなく、オレンジという・・・。

下調べしたとき、ちゃんと名前みればよかったです泣

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