2話 新しい友達
読みやすく改行するのが難しい・・・。
太一は、夕日を背に歩いていた。その姿は、哀愁漂い、今にも倒れてしまいそうであった。
学園から逃げるように走り、無我夢中で走っていたら、近くの土手に着いていた。
土手の下には広場があり、幾人かの人が遊んでいる。
(さやか姉が、あんないけ好かないイケメンに取られてしまった・・・)
会長は、イケメンだったのだ。物腰が紳士的で、頭がとても良さそうであった。
銀色のサラサラの髪に、中性的な顔つき。体格は大きいほうではないが、なかなか筋肉質な体であったであろう。
それに対し、太一はイケメンではない。フツメンというやつだ。
別段モテる顔ではない、どこにでもいそうな顔だ。
(いや、ネガティブに考えるな。まだ、付き合っているかどうかはわからないのだから。でも、どう見ても関係が悪いようにはみえなかったな)
土手の散歩道の真ん中で一喜一憂している太一の姿は、通行人からみたらただの変な人であろう。
どんどん不安が募ってゆく太一は、唐突に川のある方面に向いて、叫んだ。
「さやか姉の馬鹿あああああああああ。どんな気持ちで、俺ががんばってきたとおもうんだああああああああああ」
その声は、響き渡った。土手の下で遊んでいる人たちが、こっちを向くほどであった。
少しだけすっきりした。
不安な状態が好きではない太一は、叫ぶことで不安を吹き飛ばしていた。
(あんな会長なんかに負けるわけにはいかない、さやか姉といちゃいちゃするのはこの俺なのだ!ま、さやか姉って呼ぶだけでまさかあんなに怖い顔されるとは思わなかったけどね・・・)
そんなことを考えていると、太一の前に野球のボールが足元に飛んできた。
それを追いかけて、一人の少年が太一のところまでやってきた。
見た目は、小学生くらいであろうか。
なかなかかわいらしい顔つきをしている。
「あの、お兄さん。そのボールとってくれませんか?」
「これのことかな?ほら、ボールだよ」
男の子に向かって、ボールを投げた。そのボールは太一の思った以上に飛距離が伸び、
ボールは少年の先にいる男性のところまで飛んで行った。
「あちゃー、力入れすぎたかな」
「いえ、ありがとうございます。兄ちゃん、ちゃんととってよ」
少年は、兄のほうへ向いてそう言った。兄は、太一に向かって爽やかな笑顔で言った。
「ボール、ありがとうございます。せっかくなので、一緒にキャッチボールやりませんか?」
いきなりの勧誘に、太一は少し戸惑った。
初対面でキャッチボールを誘われるなんて初めてだ。
そんな気分ではなかったので、断ることにした。
「いえ、せっかくですけど、ちょっと気分が乗らないので」
「えっ、キャッチボールできないの? キャッチボールできないのは、小学生までだよねー」
「ピッチャーびびってる! へいへいへい!」
少年の兄が、いかにも人を馬鹿にしたような顔で言ってくる。
太一は、煽り耐性のないガキであった。
「んだとぉ!? キャッチボールくらいできるわ!」
「もう!兄ちゃん、なに初対面の人に喧嘩売っているの!」
「兄ちゃんは、この人とキャッチボールしたくてたまらないのだ!」
そして、太一がグローブをつけて、二人のキャッチボールが始まった。太一から投げ始める。
「なかなかいい球投げるじゃないか、ほら」
兄らしき人が、そう言って放り投げる
「君もなかなかいい球だとおもうよ。君、名前はなんていうの?俺は、風上太一」
「石田タカシだ。今年の四月から高校に入学することになっている」
「へぇ、同い年か。俺も今年九曾高校に入学することになったんだよ」
「九曾高校だと・・・? 自分もさ。太一とは、春から同級生ということになるな」
「そうだね、同じクラスになったらよろしくね」
「こちらこそよろしく。で、そこのくそ生意気そうな子供は、俺の弟、石田けいすけ」
「ふつつかな兄ちゃんですが、よろしくお願いします。」
丁寧にお辞儀をして、けいすけは言った。どうやら弟のほうは、礼儀がとてもよさそうだった。
「ところで、太一は、九曾の入学試験で、どちらのほうが得点とれたのだ?」
「普通に、学力メインだよ。どうにも技能的な能力値はまだまだみたい」
「つまり、学力で基準点をオーバーしたってことか。この秀才め!」
「秀才なんかじゃないよ。できれば、技能的なほうを伸ばしていきたいんだよね」
「そうか。まぁ、訓練である程度は伸ばせるがな。ちなみに、自分は技能点のほうが上で、学力はギリギリラインだ」
「ちなみに、俺の能力は、風の能力だけど、ちょっとした風を吹かすことぐらいしかできないんだよね」
「なるほど。太一は、風が使えるのか。自分は、肉体的な能力だ。一部しか強化できないがな」
九曾高校の入学試験には、二つの審査基準があった。学力と能力である。
学力は一般的な五科目の試験で、能力はその個人の有する異能力の数値試験である。
人によって持っている能力は、様々である。
例えば、太一のように、自然を操るもの。
タカシのように、肉体的な能力を持つもの。心理的な能力などもある。
九曾高校は、学力、異能力においても、試験レベルが飛び出て難しい。
そのような生徒たちが、九曾高校に入学してくるのである。
「まぁ、九曾は進学校だけどさ、楽しい学校生活にしていこうよ」
太一は、そう言った。
「おう、よろしくな」
二人は、お互いに微笑んだ。
小一時間ほど、太一とタカシはキャッチボールをしていた。太一は、楽しかった。
久しぶりに、キャッチボールをしたというのもあったが、なにより新しい高校生活を一緒に過ごす友人ができたからである。
少し変わった奴ではあったが、気兼ねなく話せそうであった。
後から聞いた話だが、タカシがいきなりキャッチボールに誘った理由は、土手で叫んでいる変な男に興味を持ったからだそうだ。
太一は、石田兄弟と別れ、家に向かい帰りはじめた。
九曾高校から、太一の家は駅から3駅ほど離れていた。九曾高校のある小宮から、低崎線にのり、馬ヶ谷方面へ3駅である。
太一は、地元の駅、桶谷に着いた。駅前は、そこそこに発展していたが、少し歩くと田舎である。
太一は、田舎道を歩くのが好きだった。空は広いし、人は少ないし、何よりも風を感じられるのが好きだった。
春からは、朝、バスに乗っていき、帰りは、運動を兼ねて歩くようにする予定である。
20分ほど歩いて、風上家にたどり着いた。ちょっとオシャレな一軒家である。煉瓦色の塗装がされていて、田舎の景観に合わないのが難ではあるが。太一は、玄関のドアをあける。
「ただいま~」
「やっと帰ってきたわね、おかえりなさい。もうすぐ晩御飯できるから、着替えてきたら?」
「そうさせてもらうよ」
太一は、二階の自室に向かった。
部屋の中は、男子高校生の割には小奇麗になっている。
太一は、部屋に入り、普段着に着替える。
着替えている太一の背後には、一枚のポスターが貼ってあった。
アイドル、一之瀬恋璃のポスターである。
ここにアイドルのポスターを貼っておくことで、着替えている途中を彼女に見られているような、ドキドキ感を味わえるというお得な特典があるのだ。
(あぁ、なんてかわいいのだろう。恋璃ちゃん・・・)
恍惚とした表情で、ポスターをみる。太一は、一之瀬恋璃のファンである。
太一は、着替えて一階に下りると、いい匂いがしてきた。
ダイニングに入ると、たくさんの料理が机の上にところ狭しと並んでいた。
「相変わらず、姉貴の料理は旨そうだね」
「太一のために、腕によりをかけて作ったのよ!さぁ、さぁ、食べて」
太一と蛍子は、席に着き、食事を食べ始めた。太一は、まずオレンジ色のソースがかかったローストチキンを食べた。
味もいい、香りもいい、見た目もいい。だが、しかし。一つだけ、問題があった。
(姉貴の料理は、いつも食感だけおかしいんだよなぁ・・・)
蛍子の作った料理は、肉はしゃりしゃりの食感になり、魚はぐにゅぐにゅ、野菜は、ゴリゴリと変な食感になるのだ。
(これがなければ超旨いのに、食感のせいで、平均以下だよ)
「太一君、美味しい?」
満面の笑みを浮かべ、尋ねる蛍子。
「姉貴の料理が不味いわけないでしょ。美味しいよ、どれも」
「お姉ちゃん、がんばったかいがあったわ」
今にも踊りだしそうな蛍子であった。いつも言おう、言おうと、毎回思うのだが、
蛍子の喜ぶさまをみていると、どうしても切り出せない太一であった。
食事が終わり、太一と蛍子の二人は、お茶を飲みながら話をした。その内容は、幼馴染の水澤さやかの話であった。
「そう、そんなことがあったの。あのさやかちゃんが、そんなに冷たい態度をとったね」
「昔は、遊んだり、勉強したりしたのに・・・。さすがに、ショックだよ」
昼間のことを思い出して、陰鬱な気分になった。
「たぶん、さやかちゃんにも事情があるのよ。だって、いきなり誰にも告げずにこの町から去ったのよ。だったら、太一君は、幼馴染なのだから、信じてあげなくちゃだめよ」
「うん、そうだね。俺は、さや姉のことを信じるよ」
「そうそう、それでこそ私の弟よ」
そう言いながら、太一の頭をなでなでする蛍子。
「やめろよ、もう高校生にもなったんだからさ」
「え~。いいじゃない、何歳になっても、かわいい私の弟なんだからぁ。えい!抱きついちゃえ」
「おいおい、勘弁してよね・・・」
といいつつも、なんだかんだで嬉しかったりする太一であった。
その後、蛍子は、風呂に入り、先に部屋に戻った。一方、太一は、明日の朝食と弁当の下準備をしていた。明日、姉ははやめに仕事にでかけるそうだ。なので、弁当の準備をしておけば、明日楽なのである。家事全般は、基本的に、太一がしている。研究職の姉は家に帰ってこないこともある。必然的に、太一が引き受けることになった。
太一は、風呂から出て、姉の部屋の前を通る。太一の部屋に行くには、姉の部屋の前を通らなければならない。
部屋のドアが少しだけ開いており、姉が一人でべちゃくちゃ喋っている声が聞こえてくる。
「あー、マジ今のないわよ。判定おかしくない?絶対判定おかしいって。これじゃ私のほうが糞エイムみたいじゃない!」
(あ~、またやってる。もうちょっと小さい声でプレイしてよ)
姉が一人でFPSというゲームをしているのである。一年ほど前から、姉が某FPSのネットゲームにはまり、ゲームをしている間は、性格が普段の何倍も悪くなっている。
それも、電話しながらプレイしているのか、部屋の前を通るたびに、文句ばかり聞こえてくるのである。
太一は、姉の部屋をスルーして、布団に入った。明日から春休みの太一は、うきうきしながら床についたのであった。
能力ものなのに、バトルがでるのはまだ先です。
申し訳ないです(涙)




