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20話 一之瀬恋璃、まさかの引退1

すみません、遅れてしまいました。

申し訳ないです。

話は変わりますが、波打ち際のむろみさんが

面白いです!!


 Aクラスとの戦いが終わってから、二か月ほど経とうとしていた。

丁度、6月の半ばである。

そんなある日、太一の中、いや、全国の男子諸君の中で、衝撃な出来事が起きていた。

太一は、今朝のニュース番組を見ていた。学校へ行く前に必ずみているニュース番組、SIPである。昨晩も楓花の訓練のせいで、疲れが朝まで残っていた。

眠気眼でテレビを見ていると、突如、大きなテロップと共に、キャスターの驚いた声がテレビから聞こえてくる。

そこには、

『アイドル、一之瀬恋璃、まさかの引退!!』

これを見た瞬間に、太一は食べかけの食パンを口からこぼした。あまりの驚きに、声を上げる。

「えええええええええええええ。マジですかああああああああああ」

急に椅子から立ち上がる太一。

「何大声だしているのよ!?しかも、パンをこぼしてー!パンのカスが、テーブルの下に落ちてるうううう」

テーブルの下に潜り、パンカスを拾う楓花。

「あ、ごめん。ちょっとショックで、パンの食べかけを落としちゃった。でも、まさか恋璃ちゃんが、引退するなんて・・・」

肩を落とし、俯く太一。

「太一君、一之瀬恋璃のこと好きだったもんねー」

「蛍子さん、一之瀬恋璃って誰ですか?」

楓花は、姉の蛍子に尋ねる。

「一之瀬恋璃っていうのは、太一君がデビューよりファンだったアイドルのことよ」

「へぇ。そうなんですか。一之瀬恋璃ってアイドルが引退するから、太一は落ち込んでいるわけね」

太一は、恋璃のことについて、捲りたてるようにしゃべりだす。

「恋璃ちゃんは、すごいアイドルだったんだよ。デビュー曲の『奏でる、君との出会い』で、いきなりオリコン1位になって、そこから出るシングル、アルバムは、全て1位以下になることはなかった。4枚アルバムを出しているけれど、個人的に最高のアルバムは、2ndの『君が叶えたい私の嫌いな夢』だね。1曲目から13曲目までの流れが秀逸だったよ。

シングルに負けないアルバム曲たち。アイドル要素を忘れずに、かつマンネリしないようにアクセントを取り込んだ流れ。何といっても、13曲目に置いた表題曲の『君が叶えたい私の嫌いな夢だよ』が最高だよね。普通のアイドルって、シングル以外大した曲がなかったりするけど、この曲は、シングルカットされてもおかしくないレベルの曲だった。オーケストラで盛大さを出し、想いを綴るように歌を歌う恋璃ちゃんに、ファンは心を打たれないことがあるだろうか?いや、ない。もちろん、ライブだって最高だよね。伝説のライブは、12月の日比谷野外音楽堂で行われたライブで・・・」

「あーあーあー。もうわかったから、どれだけすごいか、わかったから!」

太一の熱烈な演説を遮る楓花。

「えーっ、まだまだ語りたいことがあるのにぃ!」

「はいはい、夜になったら聞いてあげるから、時計を見なさいよ。もうかなりいい時間よ」

時計を見ると、7時だった。普段は、もっと遅くに出掛けるが、今日は日直だった。

「あ、これはやばい。じゃ、今日は俺が先に行くから、姉貴と楓花ちゃん、戸締りよろしくね」

「いってらっしゃい。車に気をつけるのよ」

太一は、学校へ出かけ、たどり着くと既に日直の相方、加藤クレアがいた。

「おはよう、太一。ねね、テレビみた?」

「おはよう、クレア。みたよ、一之瀬恋璃の引退でしょ?」

「そうそう。いきなりでびっくりしちゃうわ。国民的アイドルだったから、男子は落ち込んでいるよね、多分」

「そうだろうね、俺も例外ではないけれど」

「やっぱり、太一もショックなのね」

「うん、デビューからファンだったからね」

「ま、その話は後にでもして、今は日直の仕事をしちゃいましょうよ。私は、花瓶の水を代えてくるから」

「だね。じゃ、俺は黒板のチョークを追加するよ」

2人で日直の仕事をこなしていると、ぞろぞろと登校するクラスメイトの姿があった。

だが、どうにも様子がおかしい。

異変を感じたのは、ある男子が教室に入った瞬間だった。

足をふらつかせながら教室に入ってくる男子。

机に着いたと思ったら、すごい勢いで机に突っ伏した。

その音は教室に響き渡り、太一の耳に入った。

何事かと思い、太一はその生徒の近くに行く。

「どうしたの!?渡良瀬川君」

「あぁ、太一か。一之瀬恋璃ちゃんが引退だってよ・・・。太一もファンだったし、知っているだろう?俺は、この話を聴いてから生きる気力がもうでてこない」

うめき声にも聞こえる渡良瀬川の声。

「もちろん知っているよ。俺も悲しい。だけどさ、恋璃ちゃんが決めたことだから、仕方ないって思うようにしたよ。そうじゃないと、悲しすぎる」

「だからってよぉ!引退ライブすらしないんだぞ!!恋璃ちゃんは、ファンのことを一番だと言っていたのに、引退を悲しんで、そして、恋璃ちゃんの門出を祝う機会を俺らに与えてくれないんだぜ。これは、ファンに対する冒涜だ!」

「いや、違うよ!恋璃ちゃんは、いつだってファンのことを一番に考えてくれていたよ!渡良瀬川君は、忘れたのかい!?あの伝説のライブ、日比谷野外音楽堂のことを」

「あぁ、忘れるわけがないじゃないか。恋璃ちゃんは、その日高熱をだしていた。でも、せっかく来てくれたファンのために、最悪のコンディションの中、全曲歌い切ったんだ。そして、最後の曲を歌い切った後、倒れちゃったんだよな。あの時、俺は会場にたんだよ。それ見た瞬間思ったね、恋璃ちゃんに一生ついてゆくと・・・」

「俺もそのライブのDVDは何回もみたよ。普通だったら、倒れたところとかカットされそうだけど、そのシーンはカットされなかった。あとから聞いた話だけど、事務所が、恋璃ちゃんの頑張った姿をファンに包み隠さずみせたかったらしいね。その事務所側の心意気は、評価できるよ」

「そうだな、恋璃ちゃんがファンを裏切るわけがない。よし、もう一回、恋璃ちゃんの引退会見をみようか」

「それいいね、みんなでみよう」

渡良瀬川の周りに集まるFクラスの恋璃のファン。

「全く、アイドルオタが多いんだから、うちのクラスの男子は・・・。キモッ」

「うんうん、ほんとキモイよね」

そんな女子の会話が聞こえてくるが、恋璃ファンの耳には、全く届かなかった。


渡良瀬川が、スマホのスイッチを押す。すると、ディスプレイには、一之瀬恋璃の記者会見が流れ始める。フラッシュがたかれる中、一之瀬恋璃が、中央にある椅子に座った。

「皆様、今日は私のために集まってくださり、ありがとうございます。このたび、一之瀬恋璃は、引退することになりました!これまで、アイドル活動をしてこれたのは、ファンの皆様のおかげです。短い間でしたが、ありがとうございました」

頭を深々と下げる恋璃。フラッシュが一層たかれた。フラッシュの勢いが収まり、一人の記者が挙手した。

「すみません、質問よろしいでしょうか」

「はい、どうぞ」

恋璃のマネージャーらしき人が、答える。

「ええと、多分、ファンの方が一番気になっていると思うんですけど、具体的な引退日と理由を教えていただければと」

「はい。引退日は、6月17日っていうか、今日ですね。理由は、実家の仕事を手伝わなければならなくなったんです」

「なるほど。随分、急な話なのですね。引退ライブなどは、されないのですか?」

「それはですね・・・。言いにくい話なんですが、スケジュールが合わないのでできません。これから、色々と忙しくなるんです。大きな案件があるので」

「わかりました。ありがとうございました。最後に、恋璃さん。ファンの方に一言挨拶をおねがいします」

「はい。ファンのみんな、いきなりの発表で驚かせてしまってごめんね。ここまで、アイドル活動を続けてこれたのは、みんなのおかげで。本当に感謝してるよ。そして、いきなりアイドルとしての道を歩むことを辞めることを許してほしいの。私は、アイドルを続けたいのだけれど、どうしてもしなければならないことが見つかってしまった。私にしかできないことだから・・・。また、ファンのみんなにいつか会えることを祈って、この引退会見を終了するよー。じゃ、会えるその日まで、バイバイ」

画面の中には、さみしそうな顔をして手を振る恋璃。

そして、引退会見は終わった。

見終わった男子たちの中で討論が行われる。

「恋璃ちゃん・・・。きっと、新しいやりたいことがみつかったんだろう。それなら、しょうがないよな」

「でも、さすがに引退日が近すぎるでしょう!?しかも、引退ライブもない。これは、絶対に許されないよ」

「お前は、ファンを装ったアンチだろ!恋璃ちゃんのことを考えたなら、心置きなく新しいやりたいことができるように騒がず見送るだけだ」

「馬鹿いってるんじゃねぇよ。俺は、恋璃ちゃんのファンだからこそ、しっかり引退ライブをしてけじめを着けて欲しかっただけだぞ。お前みたいなイエスマンがいるから、日本はよくならないんだ」

「んだとぉ!?もういっぺんいってみろ!」

「やるか、ゴルァ!」

「喧嘩はやめろ。ファン同士の喧嘩を、恋璃ちゃんが一番嫌っていたはずだ」

「まぁな。でも、なぜだ!我々の愛した一之瀬恋璃ちゃんはなぜ引退した!?」

「アイドルだからさ!」

止まらない論争。クラス内は、大騒ぎだった。

太一は、時間をみると、授業がもうすぐ始まる時間だった。

すると、後ろの教室の扉があいた。そこにいたのは、石田タカシだった。

だが、彼の様子もおかしい。

暗いオーラをだし、とぼとぼ歩いてくる。

「おはよう、タカシ。どうしたの?元気ないみたいだけど。やっぱり、一之瀬恋璃ちゃんのことで落ち込んでいるの?」

「いや、一之瀬恋璃のことじゃない。少し放っておいてくれ。今は、少し頭の中がこんがらがっている」

「うん、ごめん」

そのまま席に着くタカシを一瞥し、太一も席に着いた。

いつも元気のあるタカシが、あそこまで暗いと心配になった。

そうこうしているうちに、担任の浅田香奈が教室にはいってきた。

「HRを始めるわよ。みんな、席に着いて。みなさん、おはようございます。今日も張り切っていきましょう」

いつもと同じ挨拶だったので、いつも通りに授業が始まると思っていた。だが、今日はいつもと違うようだ。

「今日は、二つのお知らせがあります。良いお知らせと悪いお知らせ、どちらを先に聞きたいですか?」

一人の生徒が挙手をした。明日葉ゆかりだ。

「先生、悪い知らせを先に話してください。後味が悪いまま授業を進められても、内容が入ってきません」

浅田香奈は、真剣な口調で話しだす。

「そうね、悪いほうから話します。昨日、九曾の一年生の女子生徒が、あいたま新都心付近で暴行に合いました。時間は、PM7:00くらいみたいですね。重症ではありませんが、今、病院で検査しています。なぜ襲われたかは、わかりませんが、みなさんも十分に注意してください。登下校の際は、2人以上で帰ること」

クラス内がどよめき、ざわざわしている。

それもそうだ。能力レベルの高い学生が、暴行を受けたのだ。

恐怖を感じてもおかしくはなかった。

「以上ですね。次は、良い方を話します。ええとですね、Fクラスに新しい仲間が転入してきます!今、そこまで来ているんですよ。では、入ってきてください」

ガラガラと教室のドアが開く音がする。

すると、そこには、小柄な少女が立っていた。

顔は、俯いているのであまり確認できない。

黒縁のメガネをかけ、ハンチング帽を深くまで被り、髪の毛は、全て帽子の中に入っている。

黒いカーデガンを羽織、下にワイシャツとリボンを着用し、スカートは九曾で配布されたスカートだ。ゆっくりと教壇の前にたった。

「この娘が、新しいみんなの仲間になる、九条蓮華さんです。自己紹介、お願いね」

「はい・・・。私は、九条蓮華です。よろしく」

小さい声で、ぺこりと挨拶をする。

「みなさん、仲良くしてあげてくださいね。席は、ええと、あそこね」

後ろの窓際に、一つ空いている席があった。

そこへ、九条はゆっくりと歩いてゆく。

太一が感じた彼女の第一印象は、暗い子だなと感じた。

声のトーンは、低く、明るさのようなものは少しも感じられない。

髪の毛を全て隠しているので、余計に負のオーラが増していた。

どうやら、他の生徒もそう感じているようだった。

彼女への反応は、あまり芳しくなく思える。

「一時限目の授業は、能力学の授業です。池田先生が来るので、準備をしていてくださいね」

教室を出て行く浅田香奈。

太一は、このとき瞼がやけに重く感じた。

昨日の疲れと一之瀬恋璃の引退のショックが相まって、激しい眠りを催す。

(やばい。滅茶苦茶眠いぞ・・・。授業始まるっていうのに・・・)

そう思いながらも、意識を保つことは難しかった。


叶え!私たちの夢!!

まきちゃんセンターの6thシングルは、どんなものになるんでしょうね

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