18話 神の雷
めったにひけません。
夕焼けの河原に八人の九曾の生徒たちが集まっていた。
AクラスとFクラスの生徒である。
「さぁ、戦いを始めましょう。沈みかけの夕日が背景なんて、風流で結構ね」
夕焼けを一瞥して、目を細める井九佐 美咲。
「こんな場所で戦って、周りの人たちに迷惑がかかるじゃない。しかも、校外での戦闘は禁止のはずだけど」
「そうね、校外での戦闘は、他の市民を巻き込む可能性があるから禁止されているわね。でも、大丈夫よ、明日葉。世の中には、便利なものがあるのよ」
Aクラスの生徒たちが、河原の四隅に四角い結晶のような物を置く。
すると、辺りの景色から人々及び建物が消えて、夕焼けだけが見える。
「これって、よくいう結界ってものよ。これで、心置きなく戦えるわね。あなたたちの要望で、今回は二組のタッグ戦よ。ま、私は、聖生静と戦えれば何だっていいのだけれど」
太一たちは、静だけを戦わせるのは気が進まなかった。
ならば、援護できるタッグ戦ならまだ安心だと考えたのだ。
「ルールを確認しとくよ。武器ありのフリーマッチで、戦闘不能になったほうが負け。2チーム対2チームのタッグ戦で、2試合行われる。1勝につき1ポイントで、2ポイント獲得したほうが勝利。引き分けになった場合は、代表チーム同士の再試合でいいよね?」
「いいわよ、明日葉。日が暮れてしまうわ。始めましょう」
第一試合目
明日葉ゆかり・風上太一
VS
福二卓郎・金子智樹
試合前に、太一の頭の中に声が響く。
(太一、ちゃんと戦いの準備はできた。今回は、初めて風椿を使うのだから、しっかりしてよね!)
この声は、楓花だった。
(楓花ちゃんて、こんな頭の中で会話なんてできる厨二キャラだったの!?)
(厨二キャラって・・・。今、私は風椿に宿っているのよ。だから、直接話すことはできないわ)
(あ、そういえば、風椿って、楓花ちゃんが宿らないと機能しないんだっけ?)
(そうよ。私がいないと、この刀はただのおんぼろなんだから)
(うん、がんばるよ。楓花ちゃんの特訓をここで活かしてみせる)
(がんばるのよ。私も精一杯がんばるから)
「ほら、風上君。相手が待っているよ。クラスの名誉のためにも、私たちが頑張ろう」
頭の中で会話していた太一に、明日葉ゆかりが話しかける。どうやら、呆けているように見えたらしい。
「そうだね。やってやろうよ!」
Aクラス側では、井九佐と他2人が話し合っている。
「福二君、金子君。容赦してなくていいから、潰してしまっていいわ」
「井九佐の嬢さんのために、会長のために負けるわけにはいかないっすねぇ。おい、金子。本気だしちゃっていいっすからね」
「ウゥ・・・わかった」
明日葉と太一は、福二と金子に対峙した。
福二は、やせ細った体つきで、短い髪を全て立たせている。
顔は、まるでキツネのように細い輪郭をし、目は吊り上がっている。
それに対して、金子は、かなりの巨体で、2mくらいの身長があるだろうか。
熊のような見た目で、でかい剣を持ち、仁王立ちしている。
太一は、持ってきた刀を抜いた。
これは、楓花から特典で貰った風椿だ。
この刀の長さは、1m40㎝くらいだろうか。
鞘は黒く光、高級そうな雰囲気がする刀だった。
太一は、以前からこの刀は、どんな刃をしているのか気になっていた。
だが、刀を引き抜こうとするたびに、楓花は言った。
「私が宿るまで、この刀を抜いちゃだめ」
と一言だけ言われていた。なので、この刀が振れる日がやっと来たのである。
「よし、いくぞ!」
太一は、刀を一気に引き抜いた。
妙に軽い、太一の最初の感想だった。
あまりにも軽いので、刃先をみた。そこには、刃がなかった。
厳密に言うと、刃はあるのだが、あまりにも短かった。
「ええええ!?なんで刃がないの!?」
太一は、思わず声に出してしまった。
「風上君、その刀で戦うの・・・?」
「どうしようもない刀持ってきちゃって。Aクラスも舐められたもんっすねぇ」
「あいつ、しょぼい」
仲間からも、敵からも批判を受ける太一。急いで、頭の中の楓花に話をかける。
(楓花ちゃん!どうゆうこと!?刃がない刀なんて、ただのおもちゃだよ!)
だが、話しかけても楓花は、返事をしなかった。太一が慌てているうちに、試合の笛がなった。
「風上君、もう時間がはじまったから、戦いに集中して」
「うん・・・」
明日葉は、ナイフのようなものを8本、腰に巻いているバックから取だした。
片手に4本、4本を一辺に持ち、腕を交互に振りかぶり投げた。
ナイフは、福二と金子に飛んでゆく。
が、福二と金子は、いとも簡単に避ける。
福二は、周りに張られた電流に当たり焼け焦げ、金子は大剣で薙ぎ落す。
「ま、こんなのじゃ掠りすらしませんかね」
投げたナイフの行き先を見届け、ごちる明日葉。
「飛び道具使うのね、明日葉は。井九佐嬢さんの恨みは、おいらが晴らさせてもらう」
福二は、腕を前にだした、そこから、電流の波が放出され、明日葉を襲う。飛ぶ矢よりも速い電流を横に跳び回避しようとするが、電流の速さのほうが上回っていた。
「ちょ、ぎゃあああああ」
「明日葉さん!!」
「仲間の安否を気にしている場合じゃないっすよ」
太一は、前に振り向いた。目の前には、一気に詰め寄る金子の姿があった。斜めから振り下ろされる大剣を、間一髪で回避した。
「あぶな・・・」
態勢を立て直した。意識を集中に、無数の風の刃を出現させる。なおも追撃をしてくる金子と福二に風の刃が襲いかかる。
「あいつ、風使いか。くそっ、数が多すぎる」
「うがあああ」
奴らが攻撃を苦戦している間に、明日葉に近寄る。
「明日葉さん、立てる!?」
片腕を抑えながら、よろよろと立ち上がる明日葉。周りの地面は焼け焦げ、煙を上げている。
「だ、大丈夫よ。いきなりの電撃で、ちょっとびっくりしちゃっただけ」
「あまり無理しないでね」
「何言ってるの。一撃さえ当たれば、私の勝ち。私は、あの短髪キツネ目野郎をやらせてもらうよ。心底ムカついたし」
「じゃ、俺はあのデカ物を倒す」
太一は、剣を見た。なぜか先ほどより、剣のリーチが長くなっていた。不思議に思ったが、これくらいの長さなら、戦えると思った。
「やっかいな攻撃してきやがって。次は、こんなもん効かないっすよ」
「うっがああ」
太一と明日葉は、走り出した。
明日葉は福二に接近する。
それを迎え撃つように、電流を帯びたパチンコ玉のような物体が何個も飛んでくる。
「何度もあんたの攻撃にあたってやりますかっての」
バックから護符を取出し、自分の周りに防御壁をだす。
電流の玉を見事全弾弾き返した。
「やるじゃん・・・!」
「私は、飛び道具だけじゃない!!」
明日葉は、先ほどより長いナイフを取出し、一気に間合いを詰め、五月雨のような突きを繰り出す。
流れるような連撃に、先ほどとは打って変わって守りに徹す福二。
体を引き、しゃがみ、電撃の壁で、防ぎかわしてゆく。
「嬢ちゃんのナイフ捌き、常人のそれじゃないっすね」
「褒めてくれてありがとう。でも、こんなもんじゃ終わらないよ」
片方の手に、もう一本のナイフを取出し、さらに連撃を繰り返す。
「どう、これで防ぎ切るのは無理じゃない?」
福二の身体に傷がついてゆく。
電流の壁が邪魔し、ダメージを軽減させているが、何本もの切れ目が無数についてゆく。
血は少しだが、飛び散る。
「これ以上は、じり貧っすね。なら、これならどうっすか」
明日葉の頭上に真っ黒い雲が覆う。
それは、普段頭上にある雲のような色暗さではなく、漆黒と呼ぶべき雲が出来上がり、一本の図太い雷が落ちた。
「なっ・・・!?」
明日葉は瞬時に防御壁を貼るが、それを破り、明日葉と福二を巻き込んだ。
地面を揺らすほどの大きな爆音が響き、衝撃は、数十メートルの範囲にまで及んだ。
太一と金子にも、衝撃波が襲う。
「明日葉さん!!」
太一は、耐えながら、名前を叫んだ。砂煙が舞、明日葉と福二の姿が確認できなかった。
先ほど明日葉と福二が戦っていた場所から、声があがる。
「あはは、俺の勝ちっすね」
砂煙が引いてゆく。
そこには、倒れた明日葉と立ち上がろうとする福二がいた。
「まぁ、俺の神の雷を使わせたのは、Fクラスの割にはがんばったほうっすかね」
立ち上がろうとした瞬間に、福二の膝が崩れ、地面に倒れる。
「あれ?なんで?足が動かないっすよ。嬢ちゃんの攻撃なんて、大して受けてないし、俺が神の雷の衝撃で動けなくなるわけがない」
「あぁー、あんたの雷、すごい威力ね。もう体が動かないわよ」
倒れた明日葉から声だけが響く。
「おい、明日葉あああ。なんでこの俺が、動けないか聞いてるんすよおおおおお」
怒り喚く福二。
「あんた、私が何か能力を使った記憶ある?」
「あ?」
「私の能力は、体内で毒を生成することができる能力よ。それを、私のナイフに塗りたくって、戦っただけ」
この時、福二の身体には神経性の毒が既に体内を駆け巡っていた。即効性のある毒を使用していたため、福二の身体は動けなくなった。
「ま、お互い動けないからドローってところね。Aクラスの能力者に、まともに戦ったら勝てる気しないもの」
「くっ・・・」
何をしても動かない体に、福二は諦めた。
「さすがだよ!明日葉さん!」
「風上君、あなたの戦いがあるのだから、がんばってね」
「わかった」
太一は、金子と向かい合い、走り始めた。
モチベーション維持が難しいなぁ




