13話 合宿編6 (終わり)
やっと、自分の書きたいことがわかってきました。
太一は、山を下っていた、一人分の荷物を抱えて。
現在時刻は、PM6:00。
日没までに、集合場所に帰らなければならなかった。
先ほどの戦いで、太一もかなり疲弊していた。
でも、それ以上に傷を負ったクレアを、あそこに置いていくわけにいかなかったのだ。
「山の下りは、上りよりきついな・・・」
急勾配になった山道を下るのは、足にかなり負担がかかった。
「でも、早く加藤さんを医者に診せなきゃいけないな」
クレアを背負い直す。
太一は、気合いを入れた。
何が何でも、時間に間に合わせなければいけない。
それが、一緒に戦ってくれた加藤クレアに対する誠意だと感じていた。
山を下り続ける。
すると、後ろに背負っていたクレアが、もぞもぞしている。
「ん?あれ?ここは、どこ?」
「よかったぁ・・・。加藤さん、意識が戻ったんだね」
「あれ?私、なんで風上におんぶされているの!?あ、痛ぁああああ」
クレアは、体に痛みを感じた。
「加藤さん、むやみに体を動かしちゃだめだ。ひどい怪我なんだから」
「怪我・・・?あ、思い出した。私、あいつに負けちゃったんだ・・・。ちょっと・・・いや、かなり悔しいかな」
クレアの瞳から、涙が零れた。
「私さ、結構自信あったんだよ?武道と能力にはさ・・・。男にでも、勝てると思ってた。でも、逆にボコボコにされちゃったね」
鼻をすする音、声を抑えるような息遣い。
太一は、クレアが泣いていることに気づいていた。
「何を言ってるの?加藤さんは、強いよ。
肉弾戦だって、能力の威力だって、俺なんかより俄然強い。たまたま、相性が悪かっただけだって」
「風上って、優しいんだね」
いつもの強気なクレアは、今ここにはいなかった。
「そんなことないよ」
太一は、照れていた。弱気なクレアを、かわいいと感じてしまっていた。
「あ、大事なこと忘れてた。私たちの班は、C地点制圧できたの!?」
太一は後ろを向いて、親指を立てた。
「もちろんさ。加藤さんの仇を取っておいたよ」
「さすが風上!やってくれるわね、このこのー!」
クレアは、太一の頭を軽く叩いた。
「ギリギリだったけどね。でも、これで、3班の技能試験合格だよ!」
「あー、なんだか、元気でてきた。負けちゃったけど、風上が勝ってくれたおかげで、本当に嬉しい。ありがとうね、風上」
クレアは、満面の笑顔をした。
これだけで、太一の疲れは吹っ飛んだのであった。
山道を下りきると、太一とクレアは、集合場所にたどり着いた。
空を見上げると、ギリギリ日は沈んでいないようだ。
その姿をみた、クラスメイトたち、および浅田香奈と鶴仙人が、寄ってきた。
「3班が帰ってきたわ。C地点を制圧できたの!?」
浅田香奈が二人に問い詰める。太一は、答えた。
「3班、任務クリアです」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」
クラスメイトたちが、雄叫びをあげた。
全員喜んでいる。
その場はまるで、祭りの会場のように、にぎやかだった。。
「えっ、もしかして、F組、試験クリアですか?」
「そうよ!3班と5班の二つの班が、制圧成功できたの。従って、技能試験は合格とします!」
「よくがんばったのぅ。今の若者も、まだまだ捨てたもんじゃないかもしれんな」
浅田香奈と鶴仙人が、拍手しながら、褒めてくれた。
「やったね、加藤さん」
「うん!」
二人で頷きあう。太一とクレアの元へ、クラスメイト達がやってくる。
「よくやったてくれたね。風上君。君たちと5班のおかげで、罰ゲームは避けられたよ!」
「加藤さん、大丈夫!?ひどい怪我だよ・・・」
クレアと太一に、代わる代わる声をかけてくるクラスメイト。
そこには、マイケルのたち、5班の姿もあった。
「風上、君たちのおかげでなんとかFクラスの試験はクリアできたようだ。だが、5班のほうが、迅速に制圧できたことはいうまでもない。やはり、この私、マイケル小西が属する5班のほうが上であることが証明されたってことだ。フハハハハ」
自信満々に高笑いをするマイケル。
「そうだね、5班のほうが優秀だよ」
「認めたか、風上。私のほうが、実力が上っていうことは、血筋の時点で明らかだったがな」
「でも、マイケル君。これから先、君たちより絶対強くなって見せるよ。風上太一の名前を覚えておいて、損はないとおもうよ」
「言ったな?その言葉、忘れるなよ」
「あぁ。強くなってみせるよ」
こうして、F組の技能試験は終了した。
落とし穴に落ちた、タカシと聖生静も救出された。
太一は、クレアを救護室に運び、タカシと静と合流した。
「太一、よく頑張ってくれた。俺らは、戦いに参加できなくて、本当に申し訳ない」
「すみません、風上さん」
二人は、頭を下げた。
「そんなにかしこまらないでよ。タカシと聖生さんのおかげで、あそこまでたどり着くことができたんだからさ。みんなの勝利さ!」
太一は、できるだけ明るく言った。
絶対、タカシと静は、負い目を感じていると思ったからだ。
「おまえってやつは・・・本当にいいやつだな」
「風上さん、ありがとうございます」
二日目の試験が終り、夜を迎えた。
太一は、布団に入り、みんなが寝静まるのを待ってから、こっそりとバックを開けた。
そこには、昨日と同じ、楓花がバックの中でうずくまっていた。
「楓花ちゃん、ご飯持ってきたよ」
「おそいわよ~。お腹空きすぎて、頭がおかしくなっちゃうかとおもったぁ・・・」
「ごめんね。今日は、みんな部屋にいてさ。ほら、ご飯たべて」
太一は、タッパを差し出した。
「ほんともう・・・。まぁ、いいわ。いただきまーす!」
楓花がごはんを食べている間、今日あった出来事を話した。
太一が、一番聞きたかったこと、それは、千堂を倒すことができるほどの能力を、なぜ使えたのかであった。
「それはね、太一の潜在能力が、目覚めたからよ」
ご飯をもぐもぐしながら、喋る楓花。行儀が悪かった。
「潜在能力?」
「うん。今の状況で、能力を使っても、多分、十分くらいの長さしか使えないと思うの。けどね、太一の感覚が鋭くなる能力・・・通称ドM能力は、太一の潜在能力を引き出すのよ。感覚っていうものは、器用に制御できる人と、できない人がいるわけよ。だから、制御できるように、訓練したりするのだけど・・・。太一が運よく引き当てた、ドM能力は体や精神にダメージを受けるたび、どんどん感覚が鋭くなって、制御がうまくなるの。太一の潜在能力を引き出す、トリガーになってくれるわけね。前にいったじゃない、感度があがれば、能力のレベルアップは目の前よって」
「なるほど。だから、普段じゃ使えない能力が、使えたんだね」
「そうゆうこと。とにかく、技能試験クリアできて、よかったわね!ま、この楓花ちゃんと契約しているのだから、これくらい合格してもらわないと、困っちゃうんだけどね!」
「ほんと、楓花ちゃんのおかげだよ。ありがとうね」
「うんうん。私に、感謝しなさい!」
胸を張る楓花。
「いいこ、いいこ」
楓花の頭を撫でる太一。
「子供扱いしないでよー!もう、私は立派な社会人なのよ!」
「はい、はい」
「ほんとにもう!まぁ、今だけは、許してあげる」
なんだかんだで、楓花も嬉しそうだった。
そうして、夜は更け、朝を迎える。
今日は、合宿最終日。
といっても、朝食を食べ、バスで学校に帰るだけとなっていた。
バスに乗る前に、鶴仙人の挨拶があった。
「二泊三日間、よく耐えきった。九曾高校F組の名前をわしは、忘れることはないじゃろう。これから、もっと強い奴らと戦うかもしれん。常に、己を磨きつつ、それにそなえるのじゃ。わしは、本当に名残惜しい。ぴちぴちの女子とたちと、もっとキャッキャウフフなことがしたかったのじゃ。本当に、名残惜しいのぅ。まぁ、気を付けて、帰るのじゃよ」
鶴仙人は、本当に名残惜しそうだった。
相変わらずのエロさに、女子たちは呆れていた。
鶴仙人の話が終わり、太一はバスに乗り込んだ。
帰りもクレアと同じ席だった。
「加藤さん、昨日の怪我は大丈夫?」
「静に補助の能力で傷を消してもらったし、医者にも見てもらったから大丈夫よ。それより・・・」
クレアは下をみながら、太一と話している。
「ん?どうしたの、元気ないね。やっぱり、怪我がひどいんじゃないの!?」
「いや、ええとね、風上にお願いがあるんだけどいいかな?」
「いいよ。お願いって何?」
「んと、あぁ、ええとね、うーん、ぬぬぬ・・・。やっぱりいい!」
顔を真っ赤にして、窓側を向いてしまうクレア。
「えー!加藤さん、気になって眠れなくなっちゃうよ。教えてよ!」
「風上って、デリカシーないわね。いいって言ったら、いいの!」
「ごめんね、もう聞かないよ・・・」
太一は、落ち込んだふりをした。それを見たクレアは、慌てた。
「こっちこそごめん!ちゃんと、話すから落ち込まないで!」
「で、お願いってなに?」
ケロッとしている太一。
「割と策士ね、風上。ええとね、風上のこと・・・名前で呼ばせてほしいの!」
「あぁ、そんなことか」
「そんなことって何よ。これ言うのだって、大変なんだから」
「ごめん、ごめん。もちろん、好きに呼んでくれて構わないよ。俺も、加藤さんのこと、名前で呼んでいいかな?」
「クレアって呼んでくれて構わないわよ。あと、太一のアドレス、欲しいんだけど」
「いいよ。携帯だしてくれる?」
太一は、携帯を操作し、アドレスを交換した。
「よし、これでオーケー」
「ありがとう、太一。何かあったら、メールするね」
「うん、いいよ。俺も何かあったら、連絡する」
太一は、この合宿に来てよかったと、本当に思った。
友達もできたし、たった三日間で、クラスの絆は縮まった。
普通に生活をしていたら、こんなことはなかっただろう。
たくさんの出来事があったが、太一は無事に帰宅することができた。
そして、これから九曾高校での学校生活がはじまるのであった。
一人でも読んでくれる人がいるなら、がんばって書き続けます!




