7月27日④ 夕日に夏風に、笹舟に
青い空の1番上にある太陽を囲むように雲が出来てる空を撮るワンシーンを重ねてタイトルコールが流れた。
この映画、タイトル名の『景色』という名の通り、ある一人の写真家の視点で色々な景色を撮る。それだけだった。けれど紀土くんの目は輝いていた。
公園で遊んでる子供の日陰。噴水の近くのベンチに置いてある子供向けのフィギュア。太陽と重なるサッカーボール。笹船作って太陽の光に反射した川に浮かべる。そんな『自由』に彼は惹かれたのだろう。
伏線も、裏切りも、予想外のことも、驚きもワクワクもない。ただ私自身もこの映画に『憧れた』。
「自由に生きたい。誰にも邪魔されない人生を今からでも。」
紀土くんの言葉に少し驚いて、私は少し腑抜けたことを言った。
「私は、君の人生を見たい。ダメ?」
「僕の自由を邪魔しなきゃいい。ただ…君と起こる『予想外』なら楽しめる気がする。」
これが私が見たもう一つの顔の『好奇心』だった。
今までにの紀土くんは私と遊んでくれるロボットみたいに見えた。
2週間ぐらいは私がやりたいものを紀土くんが付き合ってあげてる。それのループするだけだった。
そして今、彼が『予想外』を求めることが新鮮で嬉しかったし、私はその目で引き付けられた。彼の『好奇心』に。
「旅…ねぇ…」
映画の内容を見た上で紀土元就は何を感じたのか。普通の人間である俺にはわからなかった。ただ思ったこと。『自由』や『気ままに生きる』とはこうゆうことなのかとは思った。
もしかしてそれに憧れを持っていたのか?
「この映画でなにかわかった?」
燈が俺に少しめんどくさいそうに質問してきた。態度から見て多分つまんなかったのだろう。
「いや…俺もそこまでわからなかった。」
あれ?というかなんで俺はすぐに『自由』と脳内に出てきた?この映画を見た人間はそうなるのか…?いや燈の反応を見る感じ多分その考えは否定される…。
「紀土元就は…自由…になりたかったのか?」
「そーなんじゃないかな?確か母親のヒスや友達のいじめに耐えれなかったんでしょ?」
燈は当たり前のようにその事を言った。ただ改めてそうだと思った。それが自殺の原因だったからだ。
「何かを諦めたんじゃないかな?」
燈はなにか閃いた様に拳を手のひらで叩いて俺の方を見てきた。そして俺も一つの仮説にたどり着いた。
「紀土元就ってもしかして大人になることを諦めたんじゃないか?」
「だとしても、それは親や虐めで自殺する理由はないよ。」
俺は燈の言葉で止まってしまった。燈が言ったことは『単純すぎる』。そう言いたいのだろう。
けど何を思ったのか?自由を求めた少年は親のヒスや虐めで自殺する。ありきたりな小説でしかならない展開だ。そんなことを考えてると電話がなった。
「もしもし?灯利です。後で住所送るけどそこに行ってみた方がいいかもしれないです。紀土くんの事を知れるかもしれません。」
俺の質問を待たずにプツッと電話が切れ、携帯を改めてみるとメールが来ていた。
「ここって住宅街?しかも一軒家の…」
メールからマップで検索を掛けた場所は俺らが住んでる『西区』とは逆の『東区』だった。その答えを目の当たりにした時、少しだけ違和感を感じたが…それはまたあってから灯利さんから聞いてみよう。
「もしかして…紀土くんの住んでいた家?」
少し息を飲んだ。遺書に書かれてる『死因』の一つだぞ。重度のヒステリックを持っている紀土元就の母親がいるかもしれない家に行く。それが気が重かった。
「ていうか…何で私たちに頼むのよ!灯利さんがそれやればいいでしょ!」
ごもっともの意見だ。ただそれは少し厳しいかもしれない。
「まぁ…とりあえず明日部活何時から?」
「え…8時から11時までだったはず。」
急に現実味のあることを言われたのだろう。少しキョトンとした顔で俺の事を見てきた。
「ありがと。」
夏はまだ始まったばかり、そう感じてしまう夕方の熱さを忘れる夏風が網戸から流れ続けていた。




