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彼女にはデバッグが必要です  作者: 輝夜
1章 ウィスタリア攻略

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38話 繧イ繝シム繧ェ繝シバー

 バーレル鉱山中層部後半、正規の道を外れて二人が向かった先は鉱山にはあるはずの無い機械仕掛けの扉、管理室への入り口。


「ここが管理室か。ゲームでも思ったが、相変わらず違和感バリバリの扉だよな。どうやっても入れないのは当時は謎だったわ」

「入れてたまるものか。管理室だぞ? セキュリティも強力にしてあるし、ここからは街と同様に魔物の出現率もゼロにしてある。バグが何処まで影響しているかは不明だが……」


 ミレイは扉の横にあるテンキーでパスコードとなる数字を打ち込んでいく。


「随分長いパスコードだが、これってもしかして……」

「レンならわかるだろう? 私の部屋のパスコードと同じだ。まったく人の部屋のパスコードを覚えてるとは……スケベ」

「スケベだったおかげでここにログイン出来たけどな」


 パスコードを打ち込むと重厚な音と共にロックが解除される。二人は開いた扉の先へと進んでいく。


「なんだここ……工場というか、研究所というか、さっきまでの場所と全然違うな」


 扉の先はここまでの殺風景な道のりと違い、綺麗に整備されていた。辺りは明るく、その眩しさに暗がりにいたレン達は目を細めた。


「ここ、本当に魔物いないんだな」

「そりゃあ、管理室への道だしね」


 何処に通じているかよく分からない道を歩く。時折りレンは辺りを見渡すが、鉱山内とは思えないほど広く、機械の駆動音のようなものが不気味に響いていた。


「また、扉?」

「ここが管理室の入り口だ」


 しばらく歩いた先にまた扉があった。ミレイが扉を開けるとそこはまた雰囲気の違う場所であった。


「ここが、管理室?」


 部屋の中はかなり広く明るい。辺りには大きなモニターが数点、大きなパソコンの様なものが部屋の奥の中央に鎮座、その他よく分からない機器が並んでいた。


「管理室だよ。基本的にはモニターとメインコンピュータしかないけどな」


 ミレイは一目散に中央のコンピューターに向かって歩き出す。


「何とか無事に辿り着いたな。後はメインコンピュータから管理者権限を元に戻してログアウトするだけだ」

「ようやく帰れるのか」

「帰ったらそうだね、一旦休息を取ろうか」


 2人は、ようやく肩の力を抜いた。長くはない旅路だったが、蜃気楼の森、魔界樹、ブラックリスト戦、そしてバーレル鉱山の道中、ログインしてからここに至るまで何度もピンチになったが、遂に目的地へ辿り着いた。


 ミレイはパスコードを入力する。慣れた手つきで十数桁あるパスコードを打ち込んでいく。


「んっ? どうしたミレイ?」


 パスコードを入力していたミレイは画面を見つめたまま硬直していた。気になったレンもメインコンピュータの画面を覗いて見る。


『————"passcode error"————』


「エラー? ミレイ、気ぃ抜くの早いって」

「あ、あぁ、すまない。もう一度」


『————"passcode error"————』


「……えっ? ミレイ?」

「いや、そんなはず……」


『————"passcode error"————』

 


『————"passcode error"————』

 


『————"passcode error"————』

 


『————"passcode error"————』

 


『————"passcode error"————』


 何度もミレイはパスコードの入力を試みるも表示される画面は変わらない。


『不正な入力を検知しました』

『不正な入力を検知しました』

『————"passcode error"————』

『不正な入力を検知しました』

『————"passcode error"————』

『不正な入力を検知しました』

『————"passcode error"————』


 何度やっても画面の表示は変わらない。

 

 ビーッ! ビーッ!

 パスコードエラーを繰り返したことによる、セキュリティの関係か、管理室内に警告のサイレン音が響いた。

 

「どういうことだ……? パスコード間違えたまま覚えちゃってるとか?」

「バカなっ! そんなハズない、私は間違いなくパスコードを入れている! 何故だっ!?」

「まさか……バグ?」

「いや違う、これはバグじゃない。この世界に私のセキュリティを全て突破してパスコードを変更した奴がいるんだ……」

「えっ……そんなこと出来るやつって……」

「——ナーシャ! 何処かで見ているのだろう!? 出てこい! これ以上ウィスタリアを蹂躙するのは許さない!」


 その時、サイレン音が止まるとともにメインコンピュータに砂嵐が混ざり始め、部屋の明かりが幾つか消灯する。それと同時に強烈なノイズが二人を襲った。


「な、何だ……このノイズ!? 今までで1番、いやそれどころじゃねぇ……比にならねぇ」

「これは——!?」


 ミレイが画面を凝視する。すると——


『——"passcode error"——』


『——"繧イ scode error"——』


『——"繧イ sco繧ェ繝シor"——』



——ザザザザザ



『——"繧イ繝シム繧ェ繝シバー"——』



「これは、文字……化け?」

「この文字、まさか!?」

「この文字化けの意味分かるのか? なんて書いてあるんだ!?」


 予期せぬ異常事態。レンは文字化けの意味をミレイに問うと、ミレイは青ざめた顔をして答えた。


「……『ゲームオーバー』だ」

「はっ? 何だよ、それ——」


「ふ、ふフ、アはははは」


 その時、レンは微かに笑い声の様なものを耳にした。二人しかいないはずの空間で、この窮地を見て笑っている何(・)か(・)がいる。


「壁から……声? ミレイ、他にも部屋があるのか?」

「いや、部屋は管理室のここだけだ! こんな地下深くに、他には何もない!」

「じゃあ……この声は一体……?」


「アは……ははハ! ハハはハ!」


 笑い声は、確実に近づいていた。


「マジで何だ……!? この気味悪ぃ声!」

「悪ふざけはもうやめろナーシャ。降参だ。管理室のパスコードを突破してメインコンピュータのパスコードまで変更したのは見事だ。もう、私の負けでいい」


 ミレイは降参を告げる。すると、管理室の入り口から黒い人型の影の様なものが現れる。ノイズの集合体、もしくはバグの塊ともいえる姿をしていた。


「初めマし、て、ワたシ、はナーシャ。ふふ、ハハハハ!」

「お前がナーシャなのか? 始めて会ったが随分と趣味が悪そうじゃねえか!」


 レンは相手がバグだと認知するとアロンダイトを構えた。しかし、ミレイの様子がおかしい。


「違う……」

「ミレイ?」

 

「お前……誰だ……!?」


 ミレイは震えながらノイズの集合体に指を差した。


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