28話 出陣
翌早朝、レン達及びナル一味はキキが告げた場所へ向かって馬車を進めていた。目的地は"ザラム"という街だった。キキが言うには首狩り——フィガロの足取りがそのザラムという街を最後に進んでいないらしい。
「いやぁ、奮発して大きめの馬車を用意して良かったな! これだけ人数乗ってるのに全然狭く感じんわ!」
「よくこんなデカい馬車用意できたな」
「知り合いのツテでな、世話んなってるからって安価で貸してくれてな」
こういった所もナルの人あたりの良さから得られる一面だろう。
ナルは馬車から外の景色を眺め、機嫌良く自身の尾を振っていた。その姿を見ていたオウガが痺れを切らしている。
「寛ぐのもいいが、いい加減教えてもらおうか?」
「そうやな、作戦を決めないかん」
「いや、その前に依頼内容すら知らないのだが?」
「言っても平気か? また日和ったりせんか?」
しぶしぶナルに引っ張り出されたオウガ。以前の依頼で逃げ腰になっている所をナルに煽られていた。
「そもそも、この大人数で挑む依頼に良い予感はしてねぇよ! 一体どんな依頼持ってきたんだ?」
「そうか、寝てたからまだ何も知らんのか。ほれ」
ナルはオウガにブラックリストの名が連なった依頼の手配書を見せた。
「……んっ、特級手配書!?」
手配書を見た瞬間オウガの表情が真顔で凍りつく。多少の難しい依頼は覚悟していた様だが、手配書の紙切れ一枚に覚悟は崩れていった。
「そりゃあ、あの首狩りと死霊と災厄が対象だからな。特級にもなるわな」
「ちょ……嘘だろ!? 待て待て!! 人数がいればどうにかなるもんじゃないって!!」
「だから作戦立てるんだろうよ」
「作戦でどうにかなるのかよ!?」
「お前、また逃げるのか? しかもブラックリストの内、1人はあの首狩りなんだぞ?」
ナルの猫目が鋭くなる。いつものおちゃらけた様子はなく、本気で戦う気だ。
「うっ……」
「やるってならここが一世一代のチャンスだ」
腰が引けていたオウガもナルの一喝により、冷静さを取り戻す。
「対策考えようや! なんか意見あるやつおるか?」
「そうだな……まず首狩りが一人でいるとは考えない方が良いだろうな。逃げたブラックリスト3人、それに脱獄を手引きした奴、最低でも4人はいると見るべきだろう」
「ギリギリまで近づいて遠方から1人になるタイミングを見計らうとか?」
「それか、今こっちは8人いるんだし数で押し切れないですかね?」
「そりゃ私たちが相応の手練れならそれでもいいかもしれないけど……」
レン達は各々の意見を出す。
「場所がわかるなら、いっそ最初からキキのバフを盛って背後から一撃決着狙いってのはどうだ」
「腹を括った割には考え方が悪のそれです〜」
オウガの発想は大雑把でなるべく敵との戦闘を避けたいという気持ちに溢れていた。キキは和やかな表情を浮かべながら冷ややかにオウガへ指摘する。
「最悪正面突破も視野に入れるしかねぇか……」
ソルの案は作戦というより、もはや成り行き任せの最終手段だった。
「それ作戦も何もないやないか!」
作戦とは言うものの、有効な案は簡単には出てこない。ソルに至ってはもはや頭を使う事から匙を投げたような状態だ。
「ミレイ、何か良い方法あるかな?」
御意見番ミレイの出番だ。レンを始め、周りは彼女の快刀乱麻な意見を期待する。
「そうだな、相手の数や力量が未知。身体能力向上のバフは普通に考えたら近接戦闘に慣れているソルやカイル、それにナルが対象になる。加えてこの人数、サーチの特性を加味すると……」
「加味すると……?」
一同は間を溜めるミレイをじっと見つめる。
「実は背後から一撃プランというのは、割とメインプランとしては案外悪くないぞ」
「う、嘘でしょ……!?」
「ほう、気が合うな小娘よ」
ミィナだけでなく、その場の誰もがオウガの提案とミレイの肯定に不安を隠し切れていない様子だった。
「そもそも相手の頭数や力量が分からない以上、問題の解きようがないだろう。仮に数を4、相手の力量は全員私たちより強いとする。故になるべく敵との接触は短時間に、そしてこちらの手の内を明かさない。ここまではナルも言っていたことだ」
「あ、ああ」
「ここからだ、バフを戦闘直前にかけておく。そこから数分しか時間はないが一瞬でいい、バフを使用しないメンバーで奴らの視線を逸らしてくれ。そこで決める。敵が複数いる場合はここしか削るチャンスはない。以上だ」
「決めるつったってどうやって? それに……誰にバフをかけるのよ?」
「あぁ——私にだよ」
「えっ?」
(さすが、パーティランク1でブラックリストに挑むだけある。この小娘、見かけによらず相当な手練れだな……)
確かに快刀乱麻を断つ解答となった。ミレイの素性を全く知らないキキやオウガは、頭の中で更に話しが絡れて言葉を失っていた。オウガに関してはレン達の詳細を知らない分、ズレていた。




