27話 全員集合
キキはソルの頭に手を添えている。一見何も起こっていない様に見える。キキ曰くこれでいいらしい。
「こんなんで本当に分かるのか……?」
ソルを始め、レン達は半信半疑だった。しかし、それも束の間。キキの目つきが先ほどまでとうって変わり、鋭くも力強い眼差しへと変わっていた。
「ソルさん、相手の特徴を思い付くだけ思い浮かべて下さい。見た目、名前、仕草、癖、話し方、なんでもです」
「わかった」
ソルは眼を瞑り、あの日見た記憶を掘り起こす。初めて見た時の印象、ライザにとどめを刺した瞬間の醜悪な表情、そして今際の際に伝えられた"フィガロ"という名。
「さて、あっちはあっちで任せるとして、キキのサーチとバフについて説明しとくな。いざって時にルールが解ってないんじゃ困るしな」
レン達はナルからキキの能力について説明を受ける。
サーチについては『キキが認識出来る程度の人物像のイメージが必要』、『サーチ出来るのは一人ずつのみ、別の対象をサーチする場合、それ以前のサーチは解除される』、『対象と認識出来る範囲で近づくか、もしくは数日経過で解除される』の3点。
バフについては『身体能力の強化』、『効果時間は3分』、『連続で使用も出来るが反動が大きい』、『キキが連続でバフを出来るのは2回まで』の4点だった。
「どっちも便利な能力だけど、使い所が狭まるリスクもあるんだな」
「せやな。特にバフは使うタイミングを間違えたら、肝心なところでキキが動けんようになる」
「なら、最初から全力で突っ込むんじゃなくて、決めるタイミングを見極める必要があるな」
バフは便利だが使い所を間違えると、身体が耐えきれず自滅するリスクもあるということらしい。
「あとサーチに関しては相手の場所が分かっても、他の奴の場所までは分からん。他のブラックリスト達と一緒におったら面倒やな」
「でも充分だと思います。最短でブラックリストを見つけることが出来るんですから」
「そうね、今有利なのはこっちなんだし、サッサと決着つけちゃいたいわね。後は、どうやって戦うかよね……」
カイルとミィナはサーチの力で戦局を優位に運び早期決着を望んでいた。強敵と長期戦になれば不利になるのは2人とも知っている。
「まあ、それはソルとキキのやり取りが終わってからやな。まだしばらく時間かかるだろうし。ウチらはその間やる事あんねんな」
「やる事?」
※ ※ ※
一時間後、そこには大量の荷物を抱えるレンとカイルの姿があった。
「よし、次行くで!」
「えっ!? まだ買うものあるんですか!?」
「当然や! これからちょいとした遠征と大一番の戦いが控えてるかもしれへんのに準備無しで行くつもりか?」
(確かにボス戦前に装備や持ち物を整えたい気持ちは分かるが……実際こんな感じなんだな)
「治療薬や装備品も物によってはエルムダールに売っている物よりも良い品があるしな。ヒーラーがいない以上、必要な買い物だろう」
ミレイもしれっと必要そうなアイテムを購入してはレンの荷物に上乗せしていっている。
「まあな、ミスの許されない中で回復なしのボス戦ほどヒリつくものはそうそうないと思うわ」
ゲームでは持てる道具をカンストまで持ち切るレンもミレイの考えに賛同する。
「よっしゃ! これで物資は大体揃ったな! あとはウチのヤボ用で終わりや!」
「ヤボ用?」
「ああ、もう1人遠征に連れてく奴を引っ張り出してくるわ! レンとミレイにはレニの街で会った時に言うたろ? ウチにはビビりがあと2人おんねんて。1人はキキだからまぁしゃあないとして、もう1人のビビりを連れて来たる。先に拠点へ戻っとき」
そう言うとナルは颯爽とその場を走り去っていった。
「……一旦戻るか」
※ ※ ※
レン達が戻るとキキはお茶を啜って寛いでいた。どうやら、サーチが完了したらしい。
「ずいぶん和んでるけど、終わったのか?」
「そうみたいだぜ」
サーチを終えて外で剣の素振りをしてたソルも戻ってきた。
「ご安心を。分かりましたよ! ブラックリストの1人、フィガロの居場所が!」
「本当か!? じゃあ、あとはカチコミに行くだけだな!」
「ちょっと! ちゃんと作戦を決めてからにしなさい!」
その時、拠点の入り口の扉が開く。そこに立っていたのは見知らぬ獣人だった。ナルの様に人よりの獣人ではなく、狼よりの獣人で背も高く身体もがっしりしていた。どう見ても荒そうな人狼だった。
「お前ら、一体誰だ?」
拠点にいるレン達を睨みつける。
(こいつは……人狼!?)
「エラそうに啖呵切るな!」
「痛でっ!!」
人狼の影から、ど突いたらしいナルがひょっこり現れた。
「あれ? もしかしてじゃあこの人がさっき言ってた……」
「紅影のビビり担当『オウガ』っちゅうねん」
「ビビり担当は余計じゃ!!」
「言うてそこん2人のおかげでレニのブラックリスト捕まえられたんやぞ?」
「……マジか?」
オウガの顔が青ざめる。自身が危険だと判断して避けた依頼を、目の前のレン達がこなしたという事実に気づいたからだ。
「しかもそん時パーティランク『1』や言うし」
「……ウソだろ?」
オウガは更に青ざめる。自身はランク『1』でも突破出来る依頼から身を引いたのだと。
「まぁええ、オウガのリアクション見せるために連れてきたんじゃあらへん。次の依頼を攻略する為の頭数として連れてきたんやから」
「全く……どんな依頼受けたら療養直後のオレを連れてこうなんてなるんだ」
オウガの反応から察するに、まだ依頼の内容やレン達についての説明がされていない気がした。
「ん……? もしかして依頼の内容話してないのか?」
「ああ、道中話すからええわ」
「作戦は……?」
「それも道中で決めようや」
「そ、そっか……」
「なんだぁ? 何か隠してんのか……?」
何も知らないオウガ。頭数に入れられた事に不服に感じているのであった。
——まさか、自分がこれから挑む相手が、ブラックリストの中でも特に危険な存在だとは知らずに。




