25話 その剣の名は
レンとミレイはナルと共戦し、バグ剣のデバッグとブラックリストの捕縛に成功する。捕まえたブラックリストは無事にレニの街のギルド支部へ引き渡された。
「終わったな、一時はヒヤッとしたけど全員無事で良かったよ」
「デバッグさえ済めばあとは大したことないしな」
「ほんと、二人に協力して良かったわ。ウチとしては儲けもんや」
「儲けものも何も、ナルがいなかったら割とヤバかったぜ? 最初の不意打ちに気付けなかったし、アイツの剣を無力化する時も動けなかったしな。普通に助かったよ」
「そうか、ほんならコレやるわ」
レンはナルから小さい紙切れの様なものを渡された。
「この紙は……?」
「ギルドカードだと配れんし、いちいち見るのも手間だしな。じゃっ改めて名乗り直すわ。ウチは『紅影』ってパーティーのリーダーやっとる『ナル・アカツキ』や。今後ともご贔屓に」
(なるほど、名刺みたいなものか)
ナルが渡してきた名刺には自身の名前や所属パーティーに加えてランクが記載されていた。
「ん? パーティーランク「3」!? マジか、よく俺たちと協力しようと思ったな」
「どういうことや? こんな依頼やるんやからそれなりに腕に自信あったんちがうか?」
「いやー……それが実は」
レンは昨日までの出来事を簡単にナルに説明する。
「なんや、あんたらまだ「1」やったんか!? オマケに他の仲間は療養中て、よくこんな依頼こなしたな! むしろようやったわ!」
「そういや、パーティーって言っていたがナル以外のやつは来ていないのか?」
「ああ、あと二人おんねんけどな、1人はともかくもう1人は訳分からんブラックリストに日和って付いて来んかったんよ。ドアホめ! レンやミレイの方がよほどやりよるわ! あんたらがフリーやったらとっくに勧誘しとるて」
レン達はナルの様子を見て苦笑いした。
「そういや、レンの剣は今までに見た事無い剣やな。あの悪モンの剣にも順応したしエラい代物なんか?」
「確かに、今のウィスタリアではエラい代物になるかもしれねぇわ」
「そうなんか! 今まで色んな武器屋や雑貨屋見てきたが初めてみたわ。なんていう剣なんや?」
「なんていう剣……そういや特に名前決めてなかったな……」
「——『アロンダイト』」
「ミレイ?」
「前々から名前をどうするか考えていてな。思いついたのが『アロンダイト』だ。いつまでも修正パッチと呼び続けるのもサマにならないだろう?」
レンは手にした剣へ視線を落とした。これまで名前すらなかった、自分だけの剣。
「……アロンダイト、か」
その名を口にすると、不思議と剣が少しだけ身近なものに感じられた。
「へぇ、アロンダイトなぁ、聞かん名前やが随分大それた響きや。何処で入手したん!?」
「あぁ、えっと……知り合いの鍛冶士に頼んでな、特注で造ってもらったんだ」
「なるほど、そりゃ他の店にないワケや。非売品やもんなぁ。縁があったらその鍛冶士いつかウチにも紹介しとくれや」
「ああ、考えておくよ」
一頻りの会話を終えたところでレン達の元へニ輌の馬車がやってきた。一輌はレン達、もう一輌はナルの分だ。
「ほう、あんたらのシマはエルムダールか?」
「ああ、パーティーのメンバーが待ってる」
「ほな一旦ここでお別れや。ウチらもエルムダールに行く機会はあるし、また会ったら宜しゅうな」
「おう、またな」
日も沈み始めた時間帯、帰り道の馬車の中でレンはミレイに問いかける。
「そういえばミレイ、何で俺の剣の名前『アロンダイト』になったんだ? 響きは良い名前だし悪くはないと思うが」
「『アロンダイト』。これは諸説あるが、決して刃こぼれしないという逸話がある剣らしくてね。諦めの悪いレンにピッタリの名前だと思って」
「俺の心構えを刃と例えたか……でも言われてみれば確かにしっくりくるよ。ありがとうな」
しばらく馬車に揺られ、レンとミレイはエルムダールへ戻ってきた。二人はパーティーメンバーが待つ宿屋へと向かった。
「レン! ミレイ! 戻ってきたか! 無事そうで良かったぜ! 怪我とかはねぇか?」
ソルが駆け寄って二人の状態を確認する。
「ああ、うまく事が進んでほぼ無傷で帰ってこれたよ」
「ということはブラックリストは……!?」
「今頃は檻の中で悔し泣きしてるかもな」
「すごい、ホントに倒しちゃったんだ! さすが名コンビ!」
「その表現だと芸人みたいだな」
「ダッハッハ! とにかく、良くやってくれたぜ!」
「今回二人がブラックリストの依頼を達成してくれたおかげで条件が揃ったんですよ!」
「条件?」
「ああ、なんとこれで俺達のパーティーランクが「2」になるぜ!」
ソルの言葉にレンとミレイは笑みをこぼす。バーレル鉱山に行くにはまだ先は長いが着実にその一歩を踏み出していた。




