22話 再会と葛藤
ギルドからの緊急事態発令はその場に居合わせた全員に衝撃を与えた。レビウスの会見は今回の事件に対し、各国連賞金稼ぎと高ランク賞金稼ぎに向けた有志を募ったところで終えていた。
「こりゃ随分とエラいことになったもんやな。ギルドからの会見なんて初めてみたわ」
「そうですね……ってどちら様ですか!?」
いつの間にかレン達の中に紛れ、腕を組みながらまじまじと会見の様子を眺めている人物、レニの街で名刺を渡してきたナルの姿があった。
「ナル! いつの間にここに!」
「びっくりするじゃない、いきなり現れて自然と溶け込んでるんだから! もしかして、この人がレンが言ってた探してる人?」
ミィナを始め、レン達は唐突に現れたナルに対して驚いていた。
「ああ。このフレンドリー加減、間違いない」
「数日振りやな! わざわざエルムダールからセアラに来やったって事は何や? もしかしてウチに用か?」
「そうなんだが、まさかここに来たタイミングでこんな事になってたのは予想外だったわ」
「そりゃウチも同じや! まあええ、この大所帯で立ち話しもアレやろ? ウチんちで話さへんか? ここからそう遠くないし」
「いいのかい? 俺やこっちの二人は初対面だが」
ソルも大概、人あたりは良いが、今回はナルの方が一歩上手のようだ。
「レンとミレイの仲間なら初対面でも構へんよ。それにヘタな情報の流出はしたないしな」
※ ※ ※
レン達は人集りを離れ、セアラの陸部にあるナルの拠点へと案内してもらった。
「空いてるところに適当に座ってちょうだい。キキ、レン達に茶でも出したって」
ナルがそう言うと奥の部屋から、ナルと同じ亜人で、小さい女の子がトコトコと歩いてきた。
「はいです〜。あ、初めまして皆様、我ら紅影が一人、キキです〜お見知り置きを」
(か、かわいい)
「さて、本題に入ろうか。ウチに何か依頼でもあるんか?」
「それなんだけど……」
レンはエルムダールでソル達と話した内容を掻い摘んで説明する。自身らのホームベースを築く為に出来るだけお金を稼ぎたいということを。
「なるほどな! 利回りの良い依頼か。そんなんあったらウチらが承りたいわ!」
「そりゃそうでしょうね……」
「でもな、案はあるで。このナル様をなめんなや」
「おお、流石だぜ!」
「どんなのがあるんだ?」
「簡単や、互いにメリットある言うたら"共闘"が一番やろうな」
「共闘か、レニの時以来だな」
「というか……共闘って一体何と戦うつもりなの?」
ミィナは嫌な予感がしていた。力を合わせないといけない依頼、その過半数は魔界樹のように強力な魔物やブラックリストの確保が主であるからだ。
「何って……そりゃあ、ヤバそうなブラックリストが逃げ出したらしいしな」
「やっぱり……脱獄した奴らを捕まえるってこと!? そんなの私達に出来るの!?」
「正直オススメは出来んがな。今回脱獄した奴らは相当危険なブラックリストみたいだぞ」
「ちなみにどれくらいヤバいんですか?」
「これ、最新の依頼書。特別緊急手配の依頼書や」
——『特急手配』
通常のブラックリストよりも危険視される依頼である。その対象には"異名"がつけられることもあり、対処にギルド公認の高ランクハンターや高ランクパーティに白羽の矢が立つことが多い。
「これって……随分有名なヤツらが逃げ出しましたね」
カイルは依頼書に記載された内容を読む。そこに書かれている手配書には脱獄した人物についての追記があった。
「脱獄したのは『"首刈り"、"死霊"、"災厄"』以上3名。それぞれ異名を持つブラックリストですね」
「ふむ、ネーミングからしてロクなのがいなさそうだな」
ミレイは表情を曇らせる。察するに今のパーティーのランクや各個人のステータスでは太刀打ち出来ない相手なのが見てとれた。
「でもな、仮に共闘しないにしてもウチは1人とっ捕まえに行かないかんヤツがおるんや」
「えっ……? いくらナルでも危険なんじゃ……レニのブラックリストみたいに手の内がある程度分かるならまだしも」
「単純に戦うだけやない。情報収集もウチの武器や。タイマンで足りない分はそこで補うわ。それに、今すぐ戦うワケじゃないんやし」
(ミレイ、コイツらの戦い方とか能力とか分かったりする?)
(残念だが、脱獄事態が予想外だ。何よりウィスタリアは大元を除き、あらゆるプログラムが自動生成されている。このブラックリストもウィスタリアが生み出したオリジナルボスに該当する。そうなると判断のしようがない)
(そうか……そうなるとかなり危険だよな)
「あれ、どうしたの? ソル?」
「この『"首狩り"ってヤツ何処かで……ぐっ!?」
ソルがいつになく真剣な面持ちで依頼書を覗いていた時だった。何かに気がついた瞬間、ソルの全身にノイズが走った——




