21話 ブラックリスト
翌朝、今日はゆっくり休む予定となっているが、次の依頼を受注しておく為にレン達はギルドへと赴いていた。
「ミレイ、そういえば昨日の夜何処に出かけてたの?」
昨夜、ミレイがこっそり部屋を抜け出していた事をミィナは気づいていた。
「おや、気づかれていたか」
「職業柄、何事においても動きには敏感なのよ。あ、もしかして愛しの彼の元かしら?」
ミィナはニヤニヤしながら、敢えてレンの名前を出さずにミレイをからかった。
「誰の話しをしてるんだい?」
「あら? 違うの?」
「ちょっと愚痴に付き合ってもらっただけさ」
「ふーん」
(その割には随分、夢見心地の良さそうな寝顔だったけど……)
ギルドへ着くと、昨日よりも人の数が増えており、依頼の数も増えていた。国家直属のギルドという事もあり、人も依頼も分刻みで集まってくる。
「さて、次はどんな依頼にするか!」
「今度はもう少し簡単なのにしましょう。ね? ね?」
「そうね、何にするにしても隅から隅まで穴が空くまで確認してから決めるわよ」
「みんな相当根に持ってるな……」
「おや……?」
ミレイは他の依頼書と風貌の違う物を見つけ手に取った。内容は、採集は単純労働と比較して危険性の高い、賞金首の確保だった。
「こちらの依頼は『賞金首』の確保になります」
あまり、人の集まらない依頼だった為か、ギルドの受け付けのレスポンスもかなり早い。
「こんな依頼、前回無かったな」
「はい、こちらは昨日の夜に緊急手配されたものになりまして……」
「緊急手配ねぇ……」
ミレイは依頼書の内容をまじまじと見始める。
「ちょ、まさか受けるの!?」
「まあまあ、内容くらいは見てもいいんじゃ……」
「それで、どんなヤツが手配されているんだ?」
ソルは賞金首の詳細をギルドの受け付けに聞いた。
「現状わかっている情報では、対象は一人なんですが非常に危険な武器を所有しており、確保が難航していると伺っています」
「危険な武器?」
「なんでも、触れただけで相手を動けなくしてしまう武器を持ってるとか……」
「動けなくなる? 触れただけで? なんじゃそりゃ!!」
(ウィスタリアの武器にそんなのあったか? 聞いた感じ凍らせるとかじゃなさそうだし、素早さを下げる類いのものでもないし……)
「なるほど、レン」
ミレイは依頼書に記された「触れただけで相手を動けなくする」という一文を見つめ、僅かに眉を寄せた。
「ミレイ、これって……」
「そうだな、ウィスタリアには時間停止系のアイテムや武器は無い。まぁバグの一つと考えていいだろう。攻撃と称してデータの処理をオーバーロードさせてフリーズさせているのかもしれん」
「えっ!? そんなのアリかよ!?」
レンの頭に、ウィスタリアへ来た当初の出来事がフラッシュバックする。異常バグに気付かないNPCへの違和感、無限回廊バグを処理出来ないNPCがどんな風になるのかを。
「問題はそこだけじゃない。仮にバグアイテムを使用してたとしてたら、使用者NPCに影響が出るはずだ」
「確かに、考えてみればそうだよな」
「つまり今回のケースだと、①バグアイテムとバグに耐性のあるNPC、②NPC自体がバグとして存在している、③バグアイテムがNPCに寄生している、恐らくどれかに分類されるだろう」
「どれもタチが悪そうだな」
「でも逆に考えればどの場合でもレンがデバッグしてしまえば無力化出来る可能性が高い。謂わば先手必勝だ」
「そんな簡単に行くものかな……」
「なに、私もサポートに回る。何かあれば私が何とでもしてやるさ」
ミレイは持っている依頼書をソル達に掲げる。
「みんな、この依頼を受けてもいいかい?」
「ちょっとミレイ! 昨日の今日よ!? もうちょっと優しいやつ選ぼうよ!」
「ミレイさん、落ち着きましょう!?」
ミィナとカイルは必死にミレイを止めにかかる。NPC達からしてみれば、未知の存在であり緊急手配されるほど危険なものは敬遠したい様子だった。
「まあまあお前ら、そう急ぐなって。ミレイ、お前さんが勝算の無いことはする様には見えないが、何か考えがあるのか?」
「よくぞ聞いてくれた。この依頼だが一見すると危険なものかもしれないが、内容を聞くかぎり、以前話した例の催眠術が絡んでいるとみた。つまり特攻出来る術を持つ私達が断然有利なのさ」
ミレイは無限回廊バグのデバッグをした時にNPC達に伝えた内容を引き合いに出す。
「そういうこと? 前回みたいに無茶な依頼にならないならいいけど……」
「安心してくれ、今回の依頼は私とレンに任せて、みんなは大船に乗った気で待ってて欲しい」
「そうだな、今回は俺ら二人で……ん? 二人? 俺とミレイだけ?」
「そ、私とレンだけ。前回はソル達に戦闘をほとんど任せていたしな」
(ソル達抜きで大丈夫かな……?)
一抹の不安を抱えながらレンは次なる戦いとなるであろう依頼書を眺めた。




