第84話 魔女、呪いを丸める
貴族街の教会へ戻るとそこにはまた人が運び込まれていた。
「アルバスさんお待たせしました」
「エリー殿、すまないが頼めるかな」
早速ポーションを取り出し、寝かされている人たちに飲ませていく。そして黒い煙も回収する。これで回収した呪い三本になった。私の予想だともうあと二、三人って所かな。それも今は騎士団が総出で探しているようだからそのうち見つかるでしょ。
一時間ほど掛けて治療を済ませ、追加で運ばれてきた人の治療も終わらせる。気がつけば日が暮れていた。肝心の呪いだけどすべて集めきったと思う。確証はないけど集めきれているはずだ。
「エリーさんお疲れ様です。こちらをどうぞ」
ティッシモがいつの間にかいたようで、冷えた果実水を渡してくれる。
「ありがとう、いただくよ」
一気飲みして一息つく。そういえば昼から何も食べていないから余計に胃にしみるね。
「ティッシモありがと」
「いえいえ、これくらいしか出来ませんので」
「あはははは、本当にそうだね」
「いやそこは、そんなこと無いと言ってほしかったのですが」
「ソンナコトナイヨ」
「はぁ、もう良いです」
なんかため息をつかれた。まあいいや、それより犯人探しだね。このまま放おって置くのも気持ち悪いし、ちゃっちゃと捕まえに行きますかね。治療が済んだ人たちの看病をしている神官に空いている部屋を貸してもらう。
ティッシモと共に部屋に入ると収納ポシェットから一つの鍋と四本のフラスコを取り出す。最終的にフラスコは四本集まったことになる。フラスコの中身を全部鍋に入れると、黒い液体だったものが煙へと姿を変え始める。
その黒い煙を魔法で結界を張って、散らないように閉じ込める。すべての黒い液体が煙となり濃厚な呪いが結界内に充満する。それをゆっくりと圧縮していく。ぎゅっぎゅっと圧縮していく。圧縮された呪いは最終的に親指サイズの丸い玉に変わった。
「それが呪い玉と言うやつですか」
「そうだよ。扱いを間違えたらこの王都くらいなら一発で吹っ飛んじゃうかもね」
「エリーさん、何ていうものを作っているんですか」
「必要だから作ったんだよ。使い終わったら処分するから大丈夫大丈夫。それよりも今回の犯人の居場所はわかったから、アルバスさんに報告しちゃいますか」
「もうわかったのですか?」
「うん、圧縮しながらチョチョイと調べたよ」
「またこの人は非常識な……」
呪い玉を慎重に封呪の施されている布に包み込みポシェットに放り込む。ふぅ、これで一安心かな。部屋を出てアルバスを探していると一人の騎士と話しているのを見つけることが出来た。
「アルバスさん今大丈夫ですか?」
騎士との話が終わったアルバスに話しかける。
「エリー殿助かりました。ありがとうございます」
「気にしないでいいよ。たまたま私がここにいて、そしてたまたま治す事ができた。ただそれだけのことだよ」
「いやはや、エリー殿がいなければこの王都はどうなっていたことか」
「んーどうだろうね。この呪いの感じだとある程度広がった時点でひとりひとりの呪いの濃度が薄まって、自然と消えたかも知れないけどね」
「仮にそうだとしても、そうなる前に死人は出たのではないかな」
「まあそうだね。元々弱っていた人や幼い子どもなんかは危なかったかもね。ただこの呪いの特性上子どもに伝染ることはなかったと思うけど」
「何はともあれ、エリー殿がいてくれて幸運だったといったところですな」
本当にね。私がタイミングよく王都に戻ってきていて、アデリシアのところに行ってアンリの呪いを解いた。たまたまこの呪いに効果のあるポーションを持っていた。
そしてチェインカースの対処ができる私という存在が、王族と繋がりを持っていたおかげで、迅速に騎士団を動かす結果になった。これらは本当に偶然なのかなと疑ってしまう。
「まあ、幸運かどうかは置いておいて、今回のコレの犯人のところ行こうと思うんだけど、アルバスさんも来てもらえますか」
「なんですと、犯人の所在がおわかりに?」
「呪いを解析してね。だけどその場所って貴族街にあるっぽいから勝手に突入する訳にはいかないでしょ?」
「そういうことでしたらご一緒させていただきます。騎士も何人か同行させましょう」
「それじゃあ早速行きましょうか。そこまで遠くないから歩いていくけど大丈夫?」
「何おっしゃいます、そこまで耄碌してはおりませんよ」
「なら外で待ってるから、準備ができたら向かいましょうか」
「手隙の者に声を掛けてすぐに合流いたします」
ティッシモと一緒に教会の外に出ると、警備のためか騎士が入り口に立っていた。空を見上げるともう日も暮れて満天の星が目に飛び込んでくる。
改めて星空を見たのは久しぶりな気がするけど、やっぱり地球とは星図とかは違うみたいだ。暫く待つとアルバスが十名の騎士を連れ立って出てくる。
「エリー殿お待たせしました。こちらの準備は済みました」
「そう、それじゃあ向かいましょうか」
私を先頭にして目的地へ向かって歩いていく。十分ほど歩いた所で目的地にたどり着いた。そこは外から見た限りでは、誰も住んでいないように見えるほど荒れ果てた庭のある屋敷だった。





