157話
対ストレングスギア戦で大切なのは何か。
相手のストレングスギアの性能を推測することだ。
性能を想定して、近距離中距離遠距離でどの距離が一番得意な戦い方なのかも考える。
武装の特性は。機体の特殊能力は。稼働時間は。装甲の性能は。馬力は。最大速度は。
大体こんなところだろう。
だが実際、戦っている間にそこまでは考えていられない。
だから出来るだけ戦う前に考えるのが重要になる。
対人戦でも対NPC戦でも、ある程度前情報は手に入るものだ。
そこから推測して、自分の戦い方を考える。
それが出来ない場合?
・・・出来ない奴らはトッププレイヤーではない。
だから今回みたいな場合は、対ストレングスギア戦が予想出来るが一切、何も問題は無い。
「ロウポーンの性能は?」
『100%解析完了。一切の前情報無しでも勝利が可能です』
「だろうな」
推測とか前準備がーとか言った後にこれは酷いと思うが仕方ない。
そもそも相手機体との性能差がひどい。
俺が作った量産機である『ソキウス』と比べても低いくらいなのだ。
そんな機体で、俺と戦うのがまずおかしい。
だが一つだけ、一応懸念点はある。
それは相手の数。そして連携力だ。
「相手は恐らく、他のギアとの連携だけは俺より時間が長いはずだ。
ある程度対策は考えてるだろう」
『この世界の技術で可能な対策は問題外かと思われます』
「技術はな。だが魔法は別だ」
俺でもいくつか魔法を使用したストレングスギアの対策が考えられる。
この世界に生まれ、魔法に親しみ、年単位でストレングスギアを着込んでいる連中なら当然思いつくだろう。
俺のストレングスギアの使用時間はゲームのプレイ時間だ。
それはどれだけ見積もっても、ギリギリ一二年だろう。
大して相手は、厄災大戦と呼ばれた古の戦いから機体を盗んで使っている連中。
その時間の積み重ねは馬鹿に出来ない。
『ですが『アビスキュイラス』なら強行突破は可能です』
「ナノマシン用の対策があるとはまぁ俺も思ってないが・・・もっと単純にぶちのめす方向で行きたい」
『使用機体がお決まりなのですか』
「ああ。使うのは『エアロード』だ」
ただし、ただの『エアロード』ではない。
『ドルフィンレーン』が『オルカ・ラーゼン』になったように、改造しようと思うのだ。
レギアスの遺産が、悪人に盗まれ使われているということをリアに伝えた時のあいつの顔を思いだす。
本来なら根回しだけで終わるはずが、直接手を下す事まで決めたあの顔を。
かなり頭にきているようだ。まぁ無理もないが。
なので、それと併せることを考えている。
勿論ライチとの憑依は間違いなく利用する前提で、新たに機体を作り直す勢いで改造する。
あのリアとの共闘を考えるとなると、間違いなく今の『エアロード』では能力が足りない。
「だから対策するのは『飛行妨害』『遠距離攻撃減衰』『対空攻撃』の三つがメインだ」
『了解しました』
さて、早速改造に入る。
『エアロード』自体の特性は、飛行能力を持つ珍しいストレングスギアだ。
可能な限り重量を軽くするために、武装はエネルギー武器が中心。
背部の飛行ユニットは、作戦に応じて武装パックを変更出来る。
主には火力の高いミサイルを積んでいくことが多い。
キャノンやガトリングもあるにはあるが、機体の特性上、使用時に足が止まる物は使用頻度が低い。
そしてこの世界にきて、新たに手に入れた力としてはライチとの憑依だろう。
これにより機動力が大幅上昇。制御能力も上がっているので、より高いレベルの機体になっている。
ではどこを改造するか。
・・・いや、というか『エアロード』の改造は実はある部分しか出来ないのだ。
「背部の飛行ユニット・・・さてどこを弄るか」
そう。『エアロード』を『エアロード』足らしめているのはこの部分だ。
これが装着されている人型の部分は、正直ユニットを使う為に作った部分になっている。
だからまずはここを弄らないと、人型の方は触ることも出来ない。
大きな翼型のパーツに、大出力にも耐えうるスラスター。
この二つが大きく目立つ部分だろう。
性能を上げるのなら、やはり速度。そして旋回性能。
後は・・・小型化だろう。
「今の『エアロード』の弱点は、このユニットがデカいこと」
『小型化の場合。性能が落ちる可能性が高いです』
「だが小さくせんことには拡張性も確保出来んだろう」
機体を軽くしたという割に、この飛行ユニットは非常に重い。
人型の倍以上は軽くあるこれが、『エアロード』の拡張性を大きく制限している。
可能な限り人型の部分はシンプルにして使用できる武器は多めにしているが、はっきり言って足りていない。
機体の性能と言うのは、日進月歩で常に成長を続けている。
それに対応するのに必要なのは、やはり拡張性能だ。
つまり、特化した部分は特色として残しつつ、先を見据えた拡張性が絶対に必要なわけだ。
『エアロード』には後者が殆ど無い。今のままを保ってやるとしたら、手に持つ武器を新しく作る程度しかない。
「・・・まずはジェネレーターとのラインを見直すか」
『経路を出します』
「サンクス」
エアロードの飛行ユニット。
これを稼働させるためのエネルギーはジェネレーターからの直接供給。
ユニット内にラインが敷かれているタイプで、比較的ロスが少ない。
だがどうしても嵩張るのだ。そのせいでユニットの巨大化している。ここは変えられるな。
「外部に回すとどうなる?」
『特殊パイプを用いれば、誤差単位でロスを抑えられます。
しかし被弾時のリスクが大幅上昇します』
「機体を覆うようにシールドを使用した場合は?」
『リスクは低くなりますが、その分機体の稼働時間に影響が出ます』
「・・・今『エアロード』って最大稼働時間どれくらいだったか」
『飛行時には30分。地上のみでの活動なら1時間20分です』
「なるほど。ライチ込みで1,5倍って考えていいな」
そう考えるとやはりライチの影響は大きいな。ここも何とかして効果を上げたいところだ。
「ふむ。まぁ稼働時間はどうにかなる当てがある。
ラインは特殊パイプで外部に。リスク管理はシールドで行こうか」
『了解いたしました』
現在の飛行ユニットを見つつ、新たに設計図を書き起こす。
パイプが露出する形になるから、まだほとんど書いてない段階にも関わらず武骨な印象が出てきている。
今までは可能な限りスマートにするのを心掛けていたからな。
それはゲーム内で使う機体だから、可能な限りカッコいい方が良いと思っていたから。
上位の性能は確保出来ていたから、特にそれで問題ないと思っていた。
だがこの世界に来て、少しずつ考えが変わりつつある。
昔の俺なら、今回の場合でも『エアロード』を改造したりはしないだろう。
一応今の段階でも十分だからな。手を加える意味が無いと判断すると思う。
それでも、今俺がこうして更なる高みを目指しているのは・・・まぁそういうことなのだろう。
やるなら徹底的に、守るなら完璧に。
焼き尽くすなら、灰すら残さず。それが大切な人を守ることに繋がる。
「翼の形状も変えるか。今のままだとライチとは合わない」
『理想は鳥の実際の翼そのものです』
「・・・まぁ無理だわな。いや形は出来るけどさ」
それをすると流石に俺では性能を確保出来ない。
それこそペットの権威みたいなやつの技術力が必要になる。
俺が可能な限り理想に近づけると考えるのなら・・・ここ自体を翼じゃなくて武装にしてしまう方が良いか。
「翼型の武器って何かあったか?」
『倉庫内にはございませんが、データ上に20件以上』
「見せてくれ」
上げられたリストには、いくつか見覚えのない物がある。
多分見ただけで大して注目しなかった奴だな。そもそも翼型の武器なんて作ろうと思ったの初めてだし。
「・・・近接系が多いか」
『近接、特殊、遠距離、補助の順です』
「何だよウイングブレードって・・・」
単純に翼の部分がブレードの役割を果たすってだけなんだがどう使うんだよこんなの。
近接戦闘機が手に持つ武器以外で攻撃って考えればワンチャンあるか?
・・・いやねぇよ。
とにかく、割と使えそうなのが少ないな。
それも飛行能力を落とさないってなるとかなり少なく・・・うん?
「これ、どんなのだっけ」
『飛行パーツがそれぞれ無線操作で遠隔攻撃を可能にするものです』
「・・・どっかでこんなのと戦ったっけか?」
『規模は遥に下ですが、一部エリアで出現する敵機体に搭載されている物です』
「全くさっぱり記憶には無いが・・・これ、ありかもな」
飛行能力自体は問題ない。それそのままだと落ちてしまうが、手を加えれば解決できる。
目を付けたのはそれだけではない。
この武器。使用している時としていない時で性能が変わるのだ。そこが面白い。
多くを遠隔武器として用いれば、その分飛行性能が落ちる。
逆に全てを飛行能力に回せば上昇する。これがなかなかに面白い。
「合体ありきの武器って言えばありきたりだが、俺は持ってなかったな」
『憑依を前提にしているのなら、形状が限られますが』
「ああ。だから一枚一枚作らないと駄目だろうな」
このメニューのままに武装を作ってしまうと、結局ライチを活かせない。
だから遠隔武装と翼を兼ねるパーツ部分は設計し直しだろう。
合計4枚の羽根が着脱可能だが、それでは鳥の翼にならない。
なので枚数を大幅に増やす。
最低限必要なの枚数は・・・
「・・・60枚くらい?」
『無線兵器の受信機が足りません』
「製造っすね。後浮遊パーツも足りない?」
『そちらは数がございます。ですが、使用すると在庫が切れます』
「じゃあそっちも作るか」
翼の部分はまた新設計だ。
そうだ。実際にライチを隣において考えてみるのがいいか。
ライチが憑依する前提なら、それが一番いいだろう。
「ライチをここに呼んでくれ」
『了解しました』
「よばれた?」
「ん?・・・いつから?」
「さっきから!」
「ほほーん?」
どうやら『エアロード』の付近にライチはいたらしい。
てか襲撃があった段階で、すぐに憑依して動かせるようにしてたんだとか。
そのおかげで活躍も出来たらしいし、いいことだな。
「ちょっとお前の羽根見せてもらってもいいか?」
「ん?いいけど?」
バサッと見せつけるように広げてくれた。非常に見やすい。
・・・めっちゃ綺麗だなこいつの羽根。
「触っても?」
「くすぐらないでね!」
「しねーっての」
てかくすぐったいのか・・・
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