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158話

「うーん・・・」

「・・・たのしいの?」

「いや楽しみたくて触ってるわけじゃないんですけど・・・」


ライチにちゃんと許可をもらって、羽根を触らしてもらう。

分かってはいたが、やはり普通の翼じゃない。

一枚一枚の羽根が生えているわけじゃないんだ。魔力でこの形になっている感じ。

だけどちゃんと羽根は抜けるのだ。これがおかしい。


「どうなってんの?」

「これもぼくだよ?」

「んー・・・」


抜けた羽根もライチ・・・つまり、ライチの魔力だと。

まぁ言わんとすることはわかる。魔力が本体から離れても、その魔力の支配主は本人のままだ。

人間だって体の外に出した魔力を操れるんだから、これは当然のことだな。


だが精霊的にはそういうことではないだろう。

それはちょっと分からんな。


「ピンと来ないなぁ」

「つまり・・・こうだ!!」

「お?・・・おおお!?!?」


触っていたライチが消えて、抜けた羽根の方にライチが出てきた。

瞬間移動にも見えたが違う。

抜けた羽根からライチが出てきたって感じか?

いやそれも違う・・・


「・・・こっちもライチだから。自分がそこにいるのと同じってことか?」

「そだよー!」

「・・・何と」


衝撃の能力だ。ライチにそんな力があるとは。


だがこれは、精霊からしたらあまり珍しい能力ではないらしい。

そもそも、本来なら精霊の体は老廃物が出てくることは無い。トイレに行かないアイドルみたいなもんだ。

だからライチも本来ならば、羽根が抜けることはないのだ。実際これは羽根と言う一部分ではなく、翼と言う大きな部類で一枚だから。

だが実際は抜ける。何なら今掌に一枚ある。

じゃあこれはなんだ。これはライチだ。


精霊の体を構成するのは、魔素という魔力の元となる物だ。

ライチの体も当然魔素で出来てる。

ではこの体は、痛みを感じるのだろうか。答えは半分感じるといったところ。

魔力を通した攻撃でないと痛みは感じない。


じゃあ自分の意思で、体の一部を切り分けた場合はどうなるか。

そもそもそんなこと出来るのかということだが、ライチ曰く出来るそうだ。


「かぜのせいれいならできるよん♪」

「ほほう。ダリアとかは?」

「おねえちゃんたちはむり!」


そこは人間が混じっている亜種だからだろうな。


風の精霊は、風そのものともいっていい。

だからこそ、彼らは自分の体への固執が他の精霊と比べても薄い。

精霊いう生命体として最低限の物はあるが、それ以上は絶対にない。

だから精霊の中で一番形状の変化が起きやすいのは風の精霊なんだとか。


そしてそんな彼らの性格上、体の一部を切り離すことはさほど難しくないそうだ。

これがののかやましろだろ無理なのだろう。


だからライチは、自分から抜けた羽根のある場所に現れることが出来る。

今なら俺の掌の上だな。


「そいうこと」

「お前が時々変な所から顔出すのって、もしかしてそういうことか?」

「うん!でもぼくははねのあるばしょじゃないとだめなんだー」

「ん?他の風の精霊はそうじゃないのか?」

「つよーいひとはほんとうにかぜみたいにふわっとでてくるよ?」


なるほどそういうことね。

もっと格の上の精霊だったら、風の如くどこにでも現れるのだろう。

てことは、ライチもそのうちそんな感じになると。


「今出来ないのはなんでだ?」

「ぱわーぶそく」


魔力が足りないってことらしい。

正確には、自分の魔力を感じ取る力が不足しているんだとか何とか。


どれだけ自分の羽根がばら撒かれていても、それがどこにあるのか分からないと意味がない。

ライチは大体50メートルくらいの範囲でしか自分の羽根を感知出来ない。

だからその範囲までしか移動が出来ないと。


「割と衝撃の事実だったな」

「・・・たしかにはじめてやったかも?」

「目の前では初めてだな」


さっきも言ったが、今までも変な所からポンっと出てくることはあった。

それがライチが鳥の形状だから、自由に飛んでいるんだろうなーとか思ってたけど。

実際に目の前でこういう移動をされるのは初めてだな。


「なるほどなるほど・・・いや流石に『エアロード』には活かせないけど」

「だめ?」

「ダメってか流石に理論がぶっ飛びすぎててどうしようもない感じ」


いくらなんでもこんな摩訶不思議パワーはストレングスギアで再現出来ないわな・・・今はだけど。













ライチの翼の触診も終えて、数枚写真も撮ったらおやつ(ご褒美)を上げて解放。

そのまま上に持って行ったから、皆で食べるのかな。


「それにしても、まぁ大体普通の翼扱いでいいっぽいな」

『形状こそ魔力構築なので一体型でしたが、羽根があるようなので問題はありません』

「まぁ結局俺が一枚一枚描くのは変わらないんだけどな」


羽根を描くのに、全てを同じ形状で・・・ってわけにはいかない。

生物に寄らせるのなら、その羽根が生えている場所次第でちょっとずつ変えていかないとだめだ。

先の方とか根本とかで色々な。

そういう細かい部分も描きこむことで、実際に制作した時の出来が変わるのだ。


「てか、このままライチの翼を使ってもいい気がするな」

『最低限兵器としての部位が必要になりますので、全ては推奨出来ません』

「まぁそれもそうか」


流石に生物の翼そのものを武器にするのは難しいってな。

まぁそろそろ描くか。


まずこの武器は、翼の形状をした無線兵器・・・ビット兵器であるということ。

本体から切り離した後は設定した攻撃方法で攻撃を行う。

搭載されているのはビーム射撃かビーム刃を構築しての突撃の二つ。


「・・・今回はバランスよくそろえた方が良いか」

『でしたら枚数を増やすのが賢明かと』

「60から増やすとなると・・・」


40:40が良いか?めっちゃ大きな翼になるな。

だが分離できるっていうのがあるから、これが重しにはならない。


「まぁ全部収めた時の嵩張り方は問題になりそうか」


そこは工夫するところだろう。

そうだな・・・大きな羽根の中に、いくつか収納しておくか?

それなら表に出てくるデカい羽根を気にするだけでいい。

問題は元の武器からはちょっと遠のくことか。それにライチの翼の形からも遠のく。


「・・・いや、ライチの翼に似せた物はそれはそれで作って、

 ビットを収納するデカいのもあればいいのか」

『メインの翼とサブの翼の差が問題になります』

「形が違うから飛ぶ時に問題か。いやでも切り離して運用する前提なら行けないか?」


例えば、飛んで戦うだけならメインのライチ似の翼だけでも十分。

そこから更に加速するって時にだけサブのデカいのと合体するとか。

それなら通常と高速飛行でモードを切り替えれば、翼の差もあまり問題ではなくなるな。


「よし。一回それで試してみようか」

『了解しました。シミュレーター上での実験を開始します』

「映像は見せてくれよ」


画面が映ると、『エアロード』が飛んでいる。

するとすぐに飛行ユニットが新しく描きだした物に変わる。

こうして見ると、結局翼がデカくなるから小型化出来てないな。まぁ改造何てそんなものだ。

考えているうちに最初の予定は消えてなくなる。予定は未定ってな。


暫く新ユニットの動きを観察する。

すると、一つの問題が分かった。


「・・・やっぱりデカいな」

『小回りが利かない為、最大速度では勝っていますが機動力の面ではほぼ同一です』

「加速が微妙に落ちてる分はマイナスだな」


やっぱり他のビット兵器を収納するとデカくなりすぎるか。

となるとやっぱり最初の予定であるライチの翼似の物だけにした方が良いか?


『一つご提案がございます』

「なんじゃい」

『ライチ様の翼の羽根のように、生やすのはいかがでしょうか』

「生やす?・・・なるほどそれは考えてなかったな」


戦場に持って行って運用する。それはストレングスギアの基本だ。

だが俺にはその基本が通用しないギアが存在する。

そう。『アビスキュイラス』だ。この機体は自身のナノマシンで武器を作ることが出来る。


「だけどナノマシンは『エアロード』には使えないな」


機体の種類が違うからだ。

『アビスキュイラス』はカオス。

『エアロード』はアウトサイダータイプだ。


そんなわけで、同じ方法でビットを生み出すことは出来ない。

だがしかしだがしかし。ちゃんと他の方法が存在する。

まぁ今までやったことは無いが。


「液体金属の形状記憶・・・精密部まで出来るか?」

『アタックビットでしたら可能ではあります』

「あー。射撃は無理か」


てかビームを発生させる部分を作れないんだな。

まぁこれはすっぱりと諦めていいかもしれん。アタック・・・突撃させるタイプだけでも作れるのはデカい。


「・・・って待て。これだと操作出来ねぇじゃん」


液体金属で物を構築した場合・・・普通の金属の塊が生まれるだけだ。

だからアタックビットと言っても、ただの金属の尖った物を相手にぶつけるだけになる。

それだと結局ビットじゃなくなってしまう。


だがちゃんとキクヒメは解決策も考えていた。


『ライチ様の憑依を用いれば、遠隔操作が可能です』

「あー」


そういや憑依すれば無機物でも受けるんだわな。

大元である『エアロード』に憑依させておけば、ライチが金属を操作することが出来る。

それならそれで問題は解決だわな。

なにせ戦闘中の無線兵器の動きは殆どオートでやってるのが普通だし。

ライチに任せられる分むしろいいかもな。タイミングと突撃方向を言えばライチがやってくれるだろう。


「じゃあその方向でもっかいチャレンジ」

『了解しました』

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