表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/241

153話

「んなわけで攫って来たわ」

「本当に何してるんですか!?」


サーベスでアトラスまで戻って来て、始めに行ったのは生贄娘の母親であるルイーズの誘拐だった。

これには訳が・・・いや大した理由ではないな。

単純に、海魔を倒す前に聞けたあの言葉を思い出しただけだ。


「母親と一緒に暮らしたいって言ってただろ?」

「いや言ってましたけど・・・こんな直ぐにします?」

「ん?お前がやる気だったのか?」

「・・・まぁ時間が経ったらあの国に手を出そうかとは思ってましたね」

「そりゃまたなんでだ?」


アルはそういうのに興味は無いと思ったんだが。


「いえ。単純に封国の為にはあそこと繋がりを作った方が良いと思ったので」

「あ、そういうこと」


今まではバイオティラノという災害を封印しているという結果から、割と各国から補助みたいなものがあった。

それが無くなるわけだから、足りなくなる部分は他で補わないといけない。

その補う先として、モルトン王国に目を付けたわけだ。

俺が海魔を倒すと、その分海運業に支障をきたす。

生じる損失を、アルならある程度は補えるだろう。完全に出来たとしても、ワザとしなさそうだが。


「搾り取る感じか・・・」

「コウ。私の事どう思ってるんです?」

「やる時はやる女だと思ってる」

「・・・おかしいですね。褒められてる気がしないんですけど」


褒めてるんだけどな。これが。


「ところで、あの生贄娘はまだ起きないのか?」

「その前に、こちらの方の紹介出来ますか?」

「あ」


忘れてたわ。


ルイーズを攫う時、色々説明しないで無理やり攫ってきた。

方法はすっごく簡単。城の一部を丸っと切り取っただけだ。

部屋ごと抉ったって言った方が良いかもしれん。もちろん安全は確保してやったから問題ない。

まぁ気絶しちゃったけど。


「起こすか。もしもしー」

「・・・うっ・・・ここは・・・」

「おっすおっす」

「・・・コ、コウ・・・さん?」

「ウィッス」

「私はどうして・・・」

「俺が攫いました」

「・・・え?」

「混乱してますね」

「まぁしゃーなし」


いきなり部屋が壊れて、目覚めたら知らない天井で、さっき出会ったばかりのやつ。

更に言うなら自分の娘を攫った・・・もとい助けてくれた人がいるという状況。

むしろ混乱しない奴の方が可笑しいだろ。


「元凶が言うと色々感じる物がありますね・・・」

「え、えっと。ではここにはあの子も・・・?」

「ああ、いますよ。アル」

「はい。ご案内しますね」

「お、お願いします・・・」


若干まだ現実を受け止めきれてないようだが、それでも生贄娘の事を聞いてくる。

うーん。この人本当にすごい人だな。

元々義理の娘・・・それでもここまで彼女の事を思えるのは強い人間である証拠だ。

それに生贄娘の方も、母親の事であんなに感情を乱した。

強い絆で結ばれているのだろう。


「・・・攫ってよかったかな?」

『現状では80点かと』

「厳しいね。満点じゃない理由は?」

『出会って初めて満点です』

「ほっほー。随分と分かるようになって来たなお前。やっぱり変化アリか」

『判断不能』

「そんなもんだ。自分の事なんてな」

「こちらです。少々・・・疲れていたようなので、ここで眠っています」

「ここに・・・カーナ!!」

「・・・え?お母さん?」


生贄娘・・・カーナは既に起きていた。

そして勢いよく入ってきた母親に目を大きく開いて驚いている。


ルイーズはそのまま勢いよくカーナを抱きしめた。


「カーナ・・・カーナ!!」

「お、お母さん・・・どうしてここに・・・?」

「コウさんが・・・あの方があなたを助けてくれたのよ」

「で、でも私がいないと国が」

「もう大丈夫なの。全部終わったのよ」





「・・・コウ」

「んー?」

「私たちは」

「分かってるよ。こっからは二人の時間だ」


幸いと言っていいのか、サーベスにある部屋はすべて防音が完璧だ。

どれだけ大きな声を出しても、外に聞こえることは無い。

だから、母親の胸で泣く少女の声が、俺達に聞こえることは無かった。


「はぁ。それでも私はこの先の事で頭が痛いですけど」

「何かあんのか?」

「自分の体の事、分かってるんです?」

「あー・・・まぁそれに関してはどうにかする当てはあるんだわ」

「え?」

「レギアスだよ。あいつ、方法は見つけたけど自分じゃどうしようもないって言ったんだろ?」


だからと言って、俺がどうにか出来ないわけではない。

それに今の状況だからこそ、どうにかできる可能性があるかもしれない。


「だから、ゲル商会の事が終わったらレギアスの使ってた物でも探そうと思ってな」

「レギアスのですか・・・それに、ゲル商会とは?」

「ん?知らないのか?」


いや。まぁ無理もないか。

アルはつい最近まで封印されていたのだ。それに事情が事情だけに、封国の連中が知っているとも思えない。


なので一からゲル商会の事を説明した。

俺がこの世界に来てすぐに出会った人さらいの集団であること。

それが二度に渡ってエルフの村を襲撃しに来たこともすべて。


すると、予想だにしない反応が返ってきた。


「・・・へぇ。なるほどなるほど」

「ア、アル?」

『魔力濃度急上昇。周囲がアル様の魔力で満ちています』

「いやそれは俺も分かるけど・・・」

「そうですかそうですか・・・彼らの主張も分かりますが、そういう分かりやすいのを放置ですか・・・フフフフフ」

「やべぇってこれキレてる。ブチギレだって」

『サーベスの魔力センサーの上限突破。損傷阻止のため機能停止』

「アルさーん!!お願いだからちょっと落ち着いてくれますかー!!!」


俺のサーベスを壊すのは止めろぉぉぉぉぉぉ!!!!















「こちらにいたのですね・・・どうかしたのですか?」

「ああいや・・・ちょいとな」

「フフフフフ」


何とか魔力の放出は止めてもらったがテンションは戻らなかった。

多分今度ダイジュナが出会ったらあいつ死ぬ。


「とりあえず今は戻れ」

「あう・・・おや?もうよろしいのですか?」

「え、ええ。これからいくらでも時間は作れますので」

「あ、あの!」

「はい?」

「おう?」

「こ、この度は助けていただき、誠にありがとうございました!!」


俺とここで・・・食堂で会った時とは全然違うな。

今は緊張で顔がガッチガチだ。まぁ泣いてたのか目は赤いだ。


ルイーズからすべて聞いたのだろう。

自分が死ぬ必要がなくなったことも。これからは彼女の望んだ生活を送れるということも。


「私を助けていただき・・・誠に、まことに・・・ありがとうございます!!」

「・・・俺とここでさっき話したことは、覚えてるか?」

「え?・・・お、覚えています」

「じゃあこれからは、母親と暮らして、アカリ達と一緒に楽しく生きろ。

 俺はそれで十分だよ」

「あら。柄じゃないこと言うんですね」

「やかましいぞアル」


俺お前の時だって封国の連中に何か大きな物を強請ったことは無いんだぞ。

何故か大量に、それもかなり良い物を貰ってしまったが。


まぁ確かに?俺の事を知っている人間なら同じこと言うかもしれないけど。

アカリとか絶対それでからかってくるな・・・ああ想像しただけでうぜぇ。


「ところで、私までここにいるということは」

「ああ。こいつの願い通りにしただけだぞ。まぁサービスってことにしといてくれ」

「そこはもう少し素直になってもいいんじゃないですかね」

「お前ほんと俺に遠慮が無くなってきたな」

「そ、それでコウ様。こちらのお方はまさか・・・」

「あ、そういえば紹介してなかったな。自分でするか?」

「そうですね。水の精霊。今は封国で過ごしておりますアルディーンと申します。

 今回は海魔討伐の為に、彼に協力させていただきました」

「ほ、本当にアルディーン様なのですね」

「あ、あの厄災を封印したという精霊様・・・」

「まぁ今は厄災もコウが倒してしまったので、半ばニートなのですが」

「ニートって知ってんのかお前!?」

「え?まぁそうですね。色々知ってるんですよこれでも」


アルの前の契約者は一体全体何を教え込んだのかと。

よろしければ評価やブクマ登録お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ