表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/241

152話

「あーさっぱりさっぱり」

「お疲れ様です」

「おう。姫ちゃんは?」

「寝てます。泣きつかれたようで」

「そうかい」


サーベスをモルトン王国付近にまで戻しつつ、シャワーでさっぱり。

部屋に戻ると、アルが待っていた。

姫ちゃんは俺との会話の後に寝てしまったらしく、まだ起きてないそうだ。


「それにしても。まさか海魔の正体が普通に俺と同じサイズだとは」

「あら。本体を見つけて倒したんですね」

「知ってたのかよ」

「当然。リア達とどういう倒し方をするか話もしましたし」

「エンターテインメントか何かか?」


アル達の予想では、大火力で海魔の体を消し飛ばす方法だったそうだ。

俺の今までの戦い方的に、そう言うことも出来るだろうと。

後リアは気が付いてる『グランデス』を使うとも思われていたらしい。


「使わねぇよ」

「そんなにすごいのですか?」

「すごいってかヤバイだな。制御出来るのは最初の方だけだし、その後はもう駄目だ」

「ダメだと言うと・・・」

「あー・・・そうだな。軽く指で弾く程度の気分でも山が吹き飛ぶ感じ?」

「そう言う方面ですか・・・」


あと吹き飛ばした山も影響が残るから暫く立ち入れなくなるっていうおまけつき。

だから絶対に使いませんん。使いませんとも。


「あ、そういや一つ気になったんだが」

「はい?」

「いや。海魔を倒したのはいいけど、それはあの国の連中は分かるのか?」

「分かると思いますよ」

「ほう」

「契約を行ったのなら、それを示す何かがあるはずですから」

「それに変化があればってことか」


そう言う物は大抵王様が持っている物の何かだったりするらしい。

宝玉だったり、短剣だったり。時には契約書みたいな形で紙の場合もあるんだとか。

契約の魔法自体は精霊関係で一応学んだが、そういえば実物を見たことは無いな。


「普通見せないですから、仕方ないですね」

「そうなのか?」

「その物自体に不備があったら魔法が消えちゃうかもしれないので」

「あ、そら見ないわな」


要するに、効果がある状態の物を見るには自分で契約をするしかないというわけだ。

うーん。簡単なのでもいいから誰かとしてみようかな。


あ、そうだ。今度コーリィが来るんだからその時でいいか。

ちょっと期間は空いてしまうが、錬金術師のあれこれを学ぶのにも役に立つかもしれないし。


「ところでコウ。あなた、私との約束は覚えていますね?」

「げっ。今言うのか?」

「はい。今回も大分体に負担を掛けているようですし」

「分かるもんか?」

「勿論。かなり大きな衝撃を無理矢理受け止めてますね?」


そこまで分かるのかこいつは。

『アトミックサブマリン』の爆風を食らった時のだろう。

海魔に確実に直撃させる事を考えたら、どうしてもあの距離で撃たないといけなかった。

だからその分食らう衝撃は俺に来る。

それをブースターやら姿勢制御やらで何とかしたから・・・そのせいで負担が掛かった。

普通の人間なら、あっという間に意識を失って流されるか挽肉になるかだろうな。


そしてもちろん、アルとの約束も覚えてる。

んで、答えもちゃんと出してる。


「そのことなんだが・・・」

「・・・なるほど。それが答えですか」

「悪いな。どうにもやっぱり、良くないわって思ったんだわ。それが仕方ないことでも」

「・・・はぁ。やっぱりランナーというのは頑固なんですね」

「俺はレギアスの奴よりはマシだぞ」

「どっちもどっちです」

















モルトン王国王城。

普段は静かな時が流れているはずのこの時間。

だが今は、誰もが慌ただしく動き回っていた。


慌てふためいていると言ってもいい。

何せ国一番と呼ばれた騎士である騎士団長が無残に殺されていたのだから。

最も、王やその周囲の人間は儀式の生贄である姫がいた塔が木っ端微塵に吹き飛んだ方が焦っているが。


「んなわけで、多分ルイーズ様にこれ以上疑いが来ることは無いと思います」

「そう。ありがとうねコーリィ」

「いいんですこれくらい・・・肝心なことは何も出来へんかったんですから」

「そんなことは無いわ。あの子のために、今まで色々動いてくれたんですから」

「そうは言いましてもねぇ・・・国がこれじゃあって感じですわ」

「確かにそうね・・・」


かつて海魔との間に交わされた契約。

20年に1度。選ばれた才能のある人間を生贄に捧げることで海の安寧を得る。

これがあったからこそ、モルトン王国は海の国として大国と言っても差し支えない国力を得ることが出来たのだ。


だが、その儀式の為の生贄が攫われた。正確にはまだ攫われたというのは判明してないが。

代わりになる人間がいない以上、これは国の滅びを意味する。

契約を遵守しないと、海魔に国を滅ぼされる。

それがモルトン王国で、事情を知る者たちの常識だった。


人々が慌てふためくのも無理はない。


「まぁあいつが上手いことしてくれれば、心配もいらんのですけど」

「・・・ねぇ。コーリィ。本当に彼は」

「勝てる・・・とは言い切れないです。うちもコウの力を知ってるわけではないですから」


全てはアカリから聞いた、ランナーの中での上位クラスの実力を聞いただけなのだ。

コウがその上位クラスにいることは、会話から伺えた自信の程で判断出来た。

しかしそれが実際に海魔に通用するかは分からない。

何せコーリィは海魔を見たことが無いし、コウの戦う姿も見てないからだ。


これでは断言はできない。

それに歴史の中では、海魔に挑んで負けた勇者の伝説がある。

自分よりはるかに強いはずの勇者という存在が負けたという事実は、さらにコウの勝利を遠のかせるとも思っている。


だがコーリィには一つ、気になる点があった。

騎士団長のことだ。彼の死体は頭だけが残っていた。

残りの体はどこにいった?

兵が隅々まで探しても、腕の一本も見つからないのだ。

そして戦闘の跡もほとんど残っていない。あるのは騎士団長の剣技の跡と思われるものだけ。

それ以外に何もないのだ。それはつまり・・・


「コウが騎士団長を一瞬で、それも一方的に倒したことになるんです」

「・・・出来るの?そんなことが」

「分かりません。でも、アカリなら遠距離なら出来るて言うてました」

「・・・最低でも、あの子と同じくらい強いのね」

「みたいではあるんです・・・けど」

「けど?」

「・・・」


コーリィは錬金術師としては、世界全体で見ても上位に入る腕を持つ。

しかし、それでも『紅月』を完璧に修復することは出来なかった。

だがコウは出来た。つまりこの時点で、コウの持つ技術はコーリィを超えていることになる。

最低でもストレングスギアの領域においてはの話だが。


だがそれでも・・・修復出来るのだ。それも何でもないように。

つまり、コウの持つ機体はそれ以上の物である可能性が高いのだ。

それが使われればどうなるか。


答えは、すぐに分かった。


「今、よろしいでしょうか」

「入って」

「失礼いたします」


コーリィとルイーズのいる部屋に入ってきたのは執事だった。

刻まれた皺が、彼の経験を示しているかのようだ。

普段は柔和な表情の彼が、今日は不思議な顔をしている。

深刻なのだが、喜んでいいか分からない様な変わった表情なのだ。


「何かあったの?」

「はい。姫様の事なのですが・・・」

「見つかったの!?」

「・・・それが、何も見つからないのです」

「そんな・・・」

(・・・演技ほんまにうまいわ)


まるで何も知らずに、娘におきた突然の悲劇を悲しんでいるかのような表情をするルイーズ。

それが演技であることは、コーリィは知っているのだが、それでも本気だと思ってしまう程だった。

娘の為に王家に取り入った女の本気を見て、コーリィはこっそりと感心した。


「でも、それだけやない感じですね?」

「はい。こういった状況でなければ、お二人には朗報なのですが・・・」

「何があったん?」

「・・・王の王冠が割れたのです」

「・・・ちゅーことは」

「はい。海との契約が失われたということです」

「あー・・・」


内心では、コーリィもルイーズガッツポーズをしたいくらいだ。

コウが海魔を倒したのだ。これを喜ばずして何を喜ぶというのか。

だが表に出すわけにはいかない。この執事はある程度事情を知っているとは言え、コウの事は知らないのだから。

自分達と繋がりがあると思われてはいけないと、必死に表情を隠す。

今の状況なら、俯いてても悲しみに打ちひしがれていると思われるだけだから好都合だった。


「わ、割れたんはいつぐらいなんです?」

「凡そ2時間前です。城内を検めていた所急に・・・」

「なるほど。騎士団長を殺した犯人は?」

「そちらは何も進展が・・・」

「そうですかい」


騎士団長が残した攻撃跡しかないのだから仕方ないとは思う。

そもそも怪しい人物を見た者がいないのだ。これでは容疑者を出すことも出来ない。


さらに国を揺るがす程の別の事件も起きたのだ。

もはや犯人探しなどしている暇はないだろう。


執事は用件を伝えると、他の仕事の為に戻っていった。

どうやら僅かに空いた時間で、コーリィ達に状況を伝えにきてくれたらしい。

あの執事は、この国の事情を知る者の中でも数少ない生贄の姫に同情していた人物だ。

だからだろう。今までもコーリィ達の行動を黙認することが多かった。

自分では何も出来ない代わりなのだろう。

複雑な表情をしていたのは、コーリィ達が救いたかった人物がいなくなったのと、苦しめていた元凶がいなくなったのが当時に起こったからだろう。


「まぁ伝えるわけにもいかんですし」

「そうね。悪いけど、あの人にはこのまま黙っていましょうね」

「そうですね・・・それじゃあ、うちはそろそろ下を手伝ってきます」

「お願いね」

「任せといてください」


コーリィは錬金術師として、城の中で起きた事件に関して手伝いに行くようだ。

彼女が優れた錬金術師であるというのは周知の事実。

なればこそ、彼女が行くことで出来ることもあるだろう。

例えば、残ってしまったコウの痕跡の抹消とか。


「まぁんなもん無いんやろうけど」


僅かな時間とは言え、自分でも調べているのだ。

完璧なまでに何もない状態で戦闘は終わっているようだった。

それにコウの見せた技術も考えれば、魔力すら見つからないだろう。


ぶらっと城内を巡りつつ、時には兵士や使用人に話を聞いて事件を調べる振りをする。

そして現場である宝物庫の前までたどり着くと、そこには多くの兵や文官。魔法使いがいた。


「おっす。状況どうなん?」

「お待ちしておりましたコーリィ様!」


コーリィに気が付いた魔法使いの一人が丁寧な対応をする。

それに若干むず痒くなりつつも、現在までで調べられたことを聞く。


「うーん。やっぱり何も残っとらんか」

「申し訳ございません・・・我々では戦闘があったことすら・・・!!」

「しゃーないわ。うちもちょっと見たけど全く分からんかったしなぁ」

「コーリィ様でもですか!?」

「おう。どうも犯人は相当やばい奴みたいやで・・・国に喧嘩を売れるくらいには」

「い、一体誰が・・・」

「さぁ。そこまでは分からんけど」


さて、何か一言言った方が良いかと思案したその瞬間。城が大きく揺れた。

まるで大地そのものが揺れているようだ。


「ッ!?何や!!」

「分かりません!ですが、上から衝撃が来たような・・・」

「は?・・・まさか!!」


急いで魔道具を使い、先ほどまで自分がいたルイーズの部屋を視る。

すると・・・


「ハ、ハハハハハ!!・・・うっそやろ」


魔道具が映した光景は想像を絶していた。

何せルイーズの部屋があった場所は・・・何かにえぐり取られたかのようになくなっていたのだから。


「や、やりすぎやろ・・・」

よろしければ評価やブクマ登録お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ