147話
「まぁだから、アルが助けてくれるだけでもすごいんだよ」
「迷惑な話や」
「ですが、どうしてアルディーン様は我々を助けてくれるのでしょうか・・・」
「あー」
俺だから・・・だろうな。
俺がそもそもこの世界の人間ではないから、この世界で行われたありとあらゆることに関係が無い。
まぁ第三者による介入って点では同じだから自重しろとは言われるんだがな。
ああ、それとアルが個人的には良く思っていないってこともあるか。
しかしこれは言うつもりが無い。
「まぁあいつらだからな。気まぐれなんだよ」
「そういうものなん?」
「割とな」
そもそも人外の中でもトップクラスの連中は、基本的に人間と関わらない。これは知ってのとおりだ。
直接会えるのはその国の王族などの本当に限られた人物のみ。
それもその国にいる人外連中のみだ。外の存在なんてそもそも話を聞くことすら稀だ。
だからコーリィ達は、アル達の性格を知らない。
精々が封国にまつわることで伝わっている内容が精々だろう。
「んで。そこはいいとして、魔法の解除ってどうやるんだ?」
「こちらをお使いください」
渡されたのは宝石だ。
これを扉の前で砕けば魔法が解除され、生贄娘は外に出れるというわけだ。
「作り方は今度あんたの所に行った時教えたるわ」
「ほぉ。教えてくれるのか」
「まぁな。報酬替わりみたいなもんや」
「・・・報酬ねぇ。俺一回も要求したことないぞ」
「勝手に取ってく気なんやろ?この城から」
わぁおバレテーラ。
実の所、幽閉場所を探すだけなら城全体を調べる必要は全く無い。
ある程度場所が絞り込めているから、そこだけを調べてばそれで終わる話だ。
だが調べたのは、ちゃんと城の構造を把握しておきたかったから。
それも道のりじゃなくて部屋・・・何かが仕舞われている部屋をだ。
調べた結果、目星を付けた部屋は二つ。
その二つとも魔法が掛かっている扉らしきものが存在している。
更にその中にも、魔法の反応が複数あった。つまり、中にちゃんと価値のある物があるということだ。
コーリィには城を全部調べてると言ったが、そこから推測されたか。
恐らく報酬を外部から勝手に得ると言う発想はアカリのからランナーの事を聞いたのだろう。
「つまりは取ってほしくないと」
「ルイーズ様に余計な罪被せる気かいあんたは」
「ああそれがあったか」
「今更そのような事は気にしませんよ」
「うちが気にするんですよ・・・」
そういえばそれがあったか。
儀式の重要人物を攫う時点で死罪物だろうが、確かに無駄に罪を増やすのはあれだな。
その代わりに、コーリィが錬金術師のあれこれを色々教えてくれるというわけか。
んー・・・だけど興味はあるんだよな。
何せこのモルトン王国は、海運業で成り立っている国だ。
つまりは様々な国から、色々な品が集まるということ。その中には、俺に役に立ちそうな物も多いだろう。
曰く付きの物とか・・・とっても興味がある。
だから出来るなら中身をごっそり頂きたいんだけど・・・
「・・・あ、そうか。そうすればいいのか」
「え、何する気なん?」
「確認何だけど、その生贄娘に掛かってる魔法は本人に掛かってるのか、それとも建物とか部屋に掛かってるのかどっちだ?」
「はぁ?いや掛かっとるんわ建物やけど」
「魔法陣か?」
「せやな。塔全体に刻まれとるんよ。範囲も広いからめっちゃ効果は強いで」
「へぇ・・・」
それに建物自体の強度を高める魔法も掛かっているらしい。
生半可な攻撃では傷すらつかない。
最低限城壁を砕ける攻撃が必要なんだとか。
「なるほどねぇ・・・あんがとさん。これ返すわ。いやぁ火力控えめで来ちゃったなぁ」
「え?」
「ちょ!」
後ろで何やら喋っているようだが、一切無視する。
本人に魔法が掛かっているタイプだと出来なかったが、まさか建物の方だとは。
何とも不用心なことだ。それに魔法陣タイプ。
これはもう・・・ぶっ壊せばいいだけだな。
その後で地下に潜り込んで宝物庫をごっそり頂いていく。
まぁ潜入(笑)になるが、優先すべきはそこじゃないからな。
しかし『無影』でそれを行うのは少々面倒くさい。
直接的な破壊力と言う点では、俺のストレングスギアの中では最低レベルだしな。
だがまぁ、手が無いわけではない。
俺のアンカーは、ちょっと変わった使い方も出来るのだ。
「ボルトアンカーだ。行けるな?」
『使用頻度の関係で、あまり整備されておりません』
「あー・・・まぁどうにかなるだろ」
アンカーの使い方の基本は、対象に打ち込んで引っ張ったり俺から取りついたりだ。
『ボルトアンカー』
これは相手にアンカーを引っ掛けることだけに集中したアンカーだ。
相手に巻き付けてアンカーを切り離して爆発する。
何で例えるのが良いか・・・あれだ、連鎖して爆発する地雷だわ。
「じゃ」
「待てい!!」
待ちません。
塔までジャンプで取りついて、即座にアンカーを塔に巻き付けていく。
勿論ステルスしてるから俺の姿は見えていない。そしてアンカーも見えていない。
グルグルに巻き付けていく中で、一部の壁が妙に硬いのが分かる。
恐らく強度を強化している魔法陣はそのあたりが中心部なのだろう。
そこだけまた別でアンカーを差し込んで念には念を入れていく。
『下に警備の人間が4名』
「無視」
残念だが爆破と共に消えてもらいましょう。
もちろんこのまま爆破はしない。
したら中の救出対象も巻き込みかねない。
なので・・・このタイミングで中に跳び込むのだ。
「入れそうなのは?」
『上部窓ガラスです』
「ではそこからエントリィィィィィ!!!」
また妙に硬い窓をぶち破り内部に侵入する。
中は広い一室で、ベッドなどの家具しか置かれていない。
総じて殺風景な部屋だが、一つだけ変わった物がある。
「アカリのやつ、ハンドガンここに置いてったのか」
『データ一致『紅月』の標準装備で間違いありません』
「やれやれ。何で置いてったんだか・・・」
「あ、あなたは・・・」
「ん?」
そういえば中に人いるのはあたりまえだったな。
始めにベッドを見た時は気が付かなかったが、そこに人が、恐らく救出対象がいた。
海を思わせる蒼い髪に、不気味な印象を与える赤い瞳。
妙に細い手足。これは発育の関係かな?こんなところに閉じ込められてたら、そら健康も損なうわ。
『三つの反応が上に上がってきています』
「おっと、自己紹介の時間も無いか。悪いね、ちょいと囲わせてもらうぞ」
返事を聞く暇もないな。
今回は『無影』で潜入作戦を行うつもりだった。
結局力技になったが、潜入に必要そうな物はいくつか持ってきている。
そのうちの一つ『電磁バリア』
これはひとたび発動すればありとあらゆる攻撃を無効化する優れもの。
しかし稼働時間に難あり。大体5秒ほどで消える。
だが5秒あれば十分なわけだ。
すぐに目の前の少女を『電磁バリア』で囲んで防御する。
今からやることに巻き込まれたら意味ないからな。
「では爆破しまーす」
『『ボルトアンカー』一斉起爆』
「いやマジで何する気やねんあいつ・・・」
コーリィは正直な所、コウの事を完全に信用しているわけではなかった。
これはアカリから聞いていた話が大きい。
自分の知り合いのランナーの中に、まっとうな理由で行動するのは少なかったと。
コウは比較的善良な方ではある。
だがしかし、自分の興味を優先するきらいがあった。
それを初見で見抜いたコーリィは、無茶をしてすべてを台無しにさせない為にリスクを承知でここまで来た。
いざという時の為の用意は散々してある。最悪姫ちゃんだけでも逃がせる様にと備えた魔道具は数知れない。
だがそれら全てが、コウの行動で無駄になる。もちろん、いい意味でだ。
コーリィの目の前で・・・塔が爆発した。
「・・・は?」
「カーナ!?!?」
目を疑うコーリィと、悲鳴の様な声を上げるルイーズ。
無理もない。救いたいと願い、様々な無茶をしてきた人がいる場所が、木っ端みじんに砕け散ったのだから。
一気に頭が沸騰する。だが心が冷静だった。
コーリィの目は、崩れゆく塔の中から飛び出した黒い影を捉えた。
黒い影は、そのまま城の外へと離脱していく。
「おった!」
「どこ!カーナは!?」
「ああもうマジでランナーっちゅうんは!!」
急いで持ち込んだ魔道具の中から、遠くを見る為の物を使って影を追う。
ステルスで既に影は消えかけていたが、何とか消え切る寸前で見ることが出来た。
その黒い影の腕には・・・一人の少女が抱えられていた。
「・・・大丈夫みたいや。一緒に抱えられとった」
「ほ、本当ですか・・・?」
「はい。でもとんでもないことやってくれたわ」
視界を下に向ける。
そこには、突然爆破した城の下敷きになった兵達が。
最初にコウが内部に侵入した段階で、侵入者の存在を兵たちは魔法で知っていた。
故にそこに殺到するかのように集まったのだが・・・結果、大きな被害を生むことになった。
コウが爆破の為に動いたのは、僅か2分。
それだけの短時間で、王城の中でも最も強固な場所を崩して見せた。
そして、一つの言葉を思い出した。
『なるほどねぇ・・・あんがとさん。これ返すわ。いやぁ火力控えめで来ちゃったなぁ』
これが本当なら、コウは今全く本気ではないことになる。
それを察した瞬間、コーリィの背に寒気が走った。
これがランナー。
これが世界トップクラスの怪物だ。
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