最終話・ラマナテイル[6]
明日でひとまず終わりになります。
もうひといきです。
「母様、あまり楽しくないのですか?」
「はっきりいって、ラマナテイルの儀式はグロくてのう」
グロいって。
「よくわからないけど、そんなにすごいんですか?」
「すごいというか……まあ見ればわかるわい」
ふむ。
そこまで母様が嫌がるというのは、また……どんな儀式なんだろう?
たくさんいた兵隊さんたちだけど、そこにいたのはたったの二名だった。
「女の人もいたんだ」
なんと、ひとりは女の人だった。
兵隊さんのせいか飾り気はないけど、確かに女の人だ。
「むしろ男より危険だったって。ひとりで、しかも素手でラミアの戦士をふたりも殺したって」
「うわ」
それはすごい。
縛り上げられた男の人の方を、ラミアのお姉さんたちが連れて行ってしまった。なんか、キャッキャいって楽しそう。
あー……うん、何をするかはまぁわかるけどさ。
「あっちは見なくていいの?」
「みたいか?」
「あんまり見たくない」
「ならば良かろう。
向こうも同じ処置をするんじゃが、その前に味見するじゃろうしのう」
「味見……」
それはどっちの意味なんだろう?
「それより、始まるぞえ」
「あ、うん」
女の人はラミアさんたちに手足を押さえつけられ、服をむしられた。
むきだしのお尻が、ぷるんとなる。
すごい力に女の人はビビってるけど、がんばって「フンっ!」みたいな目でラミアさんたちを睨みつけていた。
そしたらマリが、ああと納得したような声を出した。
「なに?」
「知ってるよアレ。『くっころ』って言うんでしょ?」
「くっころ?」
なにそれ?
首をかしげていたら、マオが不愉快そうな顔をした。
「だれ?マリに変なことばっか教えてるひと」
あ、母様のおつきのエルフさんが目を泳がせた。
はぁ、やれやれ。
けど、ま、なんだ。
女の人の虚勢もわかるけど、そういう強がりってラミアさんたち喜ぶんだよね。
だって睨まれる、つまり、あんた強いってことだからね、ラミアさんたちの価値観だと。
ほら、なんかクスクス、ウフフって嬉しそうだし。
って、なんだあれ?
「母様あれは?」
「あれがラナマテイルじゃ、ナーガ用じゃがな」
「ナーガ?」
「蛇種の総称じゃ。ちなみに猫種のものもあるぞえ」
「へぇ……」
ラミアさんのひとりが、なにかトカゲの切れたしっぽみたいなのを持ってる。
でもそのしっぽは、根元のところに触手みたいなのがいっぱい生えてて、むにむに動いてて不気味。
あれが、うわさのラマナテイルですか。
でも、あれをどうするんだろ……って、え?
「まさか」
「そのまさかじゃよ、見よ」
得体の知れないものを見せられた女の人が青くなるけど、もう遅い。
ラミアさんたちがラマナテイルを女の人の横に置いた。
ラマナテイルは女の人を認識しているようで、すぐさま女の人の背中にとりついた。
そして、たぶん『せきずい』ってやつのあるあたりに触手の一本をつきたてた。
「!」
女の人の下半身が、ぐったりしてしまった。
たぶん動けなくなった女の人の下半身にラマナテイルの触手がからみついた。
そして。
「え、まさか」
「そうじゃ、寄生するんじゃよ」
なんか女の人のお尻の上の方にとりついて、そこから少し血が流れた。
うわ、なんかめちゃめちゃ痛そうなんだけど?
「痛くはないぞ、痛覚もマヒしておるからのう」
「なんか女の人、めちゃめちゃ悲鳴あげてますけど」
「そりゃそうじゃろ、骨をゴリゴリやられている感触は伝わるのに、全然痛くないんじゃぞ?
へたに激痛で転げ回るより、はるかに怖いはずじゃて」
「骨?」
「尾骨といえばわかるかの?」
びこつ?ああ尾骨か。
「尾骨にどうして?」
「ラマナテイルは人間の尾骨を奪い、かわりに自分を接合するんじゃ、ラマナテイルが本物の尾になるんじゃよ」
「……」
「心配せんでも、ちゃんと神経がつながるからの。ちゃんと自分の意思で自由に使えるようになるはずじゃ。
しかも運動能力やバランス感覚も飛躍的に向上するぞ?」
「……それってまさか」
「うむ、脳や神経まですべて、ラマナテイルがついていること前提に組み替えられるんじゃ……当然、精神もな」
「乗っ取られちゃうのか」
「乗っ取りではなく組み込みじゃが……精神に干渉を受けるのは間違いないのう」
「……」
お尻に取り付いたから、ヒルみたいにとりつくのかと思ったら。
なんと、強引に体の一部になってしまうらしい。
心なしか、マオもマリも青くなっていた。
「おもしろい仕組みじゃろう?
脳まで神経が直結じゃからの、安定してから切断なんぞ試みたら激痛で発狂する者もおるくらいじゃぞ」
「……最悪」
そんなやばいものだったとは。
「じゃが、ラマナテイルの本質はこれからじゃぞ」
「というと?」
「人に尾を生やすだけなら、ただの寄生生物にすぎぬ。そういう生き物はたくさんおるから、残酷なこともあるが驚くようなものでもない。
事実、ひとに獣耳を生やす魔物がおるが、年寄りの補聴器代わりに使われておるくらいじゃ」
「へぇ」
なんと。
「じゃが、ラマナテイルがおそろしいのはこの先じゃ」
「?」
「女を見てみよ」
言われて女の人を見直すと、雰囲気が何か変わっていた。
なんというか、エロエロしいというか、なまめかしいというか。
「おーおー、女全開じゃのう」
「どういうこと?」
「女は敵の者なわけで、本来ならここは敵地なわけじゃな。
じゃが、ラマナテイルが生物としての本能を激しく刺激するんじゃよ。子を産みたい、産みたいとのう。
そっちの本能が理性も、本来あるべき所属や属性もすべて食い尽くしてしまうほどにのう」
「……」
絶句した僕らに、母様はにっこりと笑った。
「それだけではない。
妊娠して子を生んでと、体に大きな負荷をかければかけるほど、自分自身もラミアに変わっていくんじゃよ。
尾が成長して骨盤が飲み込まれ、両足が取り込まれ消えていく。
しかも自分自身の食性や習慣もラミア側に塗りつぶされ、人間としての思考をなくしていくんじゃ。
……3回ほど出産する頃には、元人間とは思えぬほどラミアに成り果てておるじゃろう」
「……」
なんだよ、それ。
「なんでラマナテイルがおぞましいか、わかったかや?」
「うん」
生きながら、じわじわと異生物に塗り替えられていくとか……怖すぎるだろ。
「まさかと思うけど……それで生まれる子供も?」
「全部ラミアじゃな、母である女の容姿はもちろん反映されるが」
うわぁ……。
それは、やばい。
なんかこう、生理的にゾッとした。
ゾッとしているうちに、ラミア族の男らしい連中がその女の人を連れて行ってしまった。
「えっと、あれは?」
「もちろん種付けじゃろう。みたいか?」
「いえ」
即座に首を横にふった。
え、なんで見ないのかって?
だってさあ。
「おや、ユウはラミアのまぐわいを見たくはないと?」
「かんべんしてください」
僕は改めて拒否した。
いや、だってそうだろ。
マオやマリが冷たい目をするから?違うよ。
ラミアのエッチって蛇のソレみたいに、うねうね、ぐねぐねって絡み合うってきいたよ。
うん……僕はあんまり見たくないなぁ。
そして夜がやってきた。




