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揺れる思い(2)

店内に入ると店主夫婦の趣味なんだろう。あちらこちらに可愛らしいカントリードールが飾ってあった。



インテリアもカントリー調で纏められている。




「ゆきちゃん、奥が空いているようだよ」


奥行きの長い店内には、入口から満席で一番奥のテーブルが一つ空いているだけだった。




私たちは、その席に着きオムライスを注文した。




オムライス専門店ではないが オムライスの上にかかるソース味が私の好みなのだ。




伊藤さんの前と私の前には同じオムライスが並べられた。




「変わった色のオムライスだね」




「見たことないでしょ?」



「あぁ、初めてだよ」


「食べてみてください。好みじゃなかったらご免なさい」


伊藤さんは、大きな口を開けて一口食べた。




「うん!旨いよ!!」




「でしょ!!」




「このデミグラスソースがなんとも言えないコクを出してるね〜」



オムライスの中身は、鶏肉と玉ねぎのみじん切り、それにグリンピースが少し。


味付けは、ケチャップ味ではなく自家製の甘口ソース味。



普通の洋食屋さんのオムライスのようにチキンライスを包む玉子は、ふんわり柔らかではない。




では、どんな玉子で包まれているかというと薄く透き通るような玉子巻きである。




中身が透き通って見えるほど薄く‥だから見た目は黄色いオムライスではなく 中身の色と同色で なんだか別物ではなく一体化している。




勿論、自宅で拵える錦糸玉子のようにパリパリパラパラしていることもなく 口に入れるとチキンライスに溶け込む感じかな〜




そして、そのオムライスの上には、これまた自家製の茶色のデミグラスソースがたっぷりと掛かっている。




私は一口一口美味しさを噛み締めるように食べていますと 伊藤さんの視線を感じた。




その視線は、ヨーロッパ旅行で送られていた視線ではなく 私の目と鼻の先から送られてくる視線に 少し怯みながら‥




「伊藤さんに、そんなに見られていると食べれないじゃないですか?」




伊藤さんは、オムライスを食べていたスプンを皿の上に置いてまで私を見ていた。



「ゆきちゃんが美味しそうに食べている顔を見ていると幸せになるよ」




「恥ずかしくって食べれません」




「嫌かい」




「嫌ですよ!美味しい時の顔なんて、どうせ間抜けな顔でしかないんだから」




「そんなことないよ。ゆきちゃんは、誰よりも可愛いよ」




「もう〜いいですから伊藤さんも食べてください」




「僕は、ゆきちゃんを前に胸が一杯で食べられないんだ」




「冗談言わないで!もしかして、美味しくなかったですか?」





「いや、本当に美味しいよ。この玉子なんて絶妙な薄さで きっと熟年のシェフが作っているんだろうね」



「でも‥伊藤さんなら世界中で美味しいものを食べ馴れてるから〜」





「そんなことないよ。やはり日本人は和食が一番だよ。海外にいても日本食食べてることが多いんだ!どうしても、外国の味には馴染めないんよ」





「そうなんですか。意外だな〜」




「ゆきちゃんは、何か作れるの?」




「まぁ、お言葉ですけど、もう〜お料理教室とかに行っている‥いやっ、行かされているから 一般的なお料理なら適当に作れますよ」




「えっ、もう花嫁修業してるの?それに、適当に作れるってどうなんだ!!完璧じゃないってことかな?」



そう言って伊藤さんは笑った。








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