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第53話 いざ王都へ

「遅れてすいません!! エインさん! ホロスさん!」


「ようリヒト。話し相手には困らなかったからこの程度気にしなくていいぞ」


 察しの通り俺とホロスが待っていたのはリヒトだ。同じパーティの一員で王都出身とあらば今回の旅に同行してもらわない手はない。


「で、一応聞くけど遅れた理由は?」


 ホロスが呆れた様子でリヒトに尋ねた。

 まあ、ホロスの気持ちもわかる。なぜなら遅刻の理由は今のリヒトの様子を見れば一目瞭然なのだから。


「すいません……! 荷物の整理に手間取って……」


 そう言いながらリヒトはバカでかいリュックをテーブルの上に置いた。およそリュックとは思えないズシンとした音が響く。

 大丈夫かこれ? テーブル壊れるだろ。


「そんなに大量に何持ってきたのリヒト君……?」


 少し引いた表情をしながら控えめに尋ねたのはフェルド。

 それに答えるようにリヒトは荷物の中身を取り出していく。


「まずは少し多めにお金を引き出してきて……」


 それはわかる。王都の物価はこっちより高いらしいし、あっちで何泊するか未定だしな。


「あと水と保存食も少し多めに……」


 これもまあわかる。魔法師の仕事はいつ完了するかわからないから念のため食料は多めに持ち込んでいくというのは基本だ。だが今回はクエストで旅に出るわけではないし列車で移動するからそんなに必要とは思えないが一旦よしとしよう。


「あとはテントと寝袋と虫よけスプレーと……」


「ちょっと待ったぁ!!」


 ちょうど俺もツッコもうとしたタイミングでホロスがツッコんだ。先を越されたか。


「絶対いらないわよそれは!! キャンプしにいくんじゃないんだから!!」


 野営するならともかく列車移動では必要とは思えないモノが次々とでてきた事実をホロスは指摘する。それに便乗して俺も口を挟む。


「リヒト。ただでさえお前は弓と刀両方持ち歩いてるんだから他の荷物は最小限にしておいたほうがいいと思うぞ」


「うっ……! でも…俺は二人には快適な旅をしてほしくて……どんなトラブルが起きるかわからないので念のためと思って……」


 なるほど。俺たちの役に立ちたいと思ってのことだったか。急な同行の頼みに応じてくれた上にそこまで気遣ってくれるとは。その想いを無下にするのは流石にあれだな。


「……ホロス。たしか『ポケット』の容量はまだ余裕あったよな?」


「ええ。まったく仕方ないわね。荷物出しなさいリヒト。私が預かっておくわ」


「いやいやいや! これくらい自分で持てますよ…! ホロスさんの『ポケット』を俺の荷物で圧迫させるなんて……!!」


 リヒトは大げさに首と手を振り俺たちの提案を拒む。変なところで意固地だなこいつ。


「俺たちの、だろ。それにこんな荷物背負ってどうやって戦うつもりだ。俺たちはお前を荷物持ちにするためにパーティに入れたわけじゃないぞ」


「エインさん……!」


 そんなやり取りを眺めていたフェルド一行が一斉に口を開く。


「でたでた。エイン君の人たらしが」


「余裕を感じていいわね。そういう男の子はモテるわよ」


「どうかんー。でも人は選んで言ったほうがいいよエイエイー。じゃないとよくない虫まで寄ってきちゃうからねー」


 言いたい放題だなこいつら。ていうかなんだよ良くない虫って。


「ガデロン……。こいつらどうにかしてくれよ……」


 俺はこの中で唯一静観を保っていたガデロンに助けを求めた。


「ったくおまえら後輩を困らすんじゃねえよ」


「「「はーい」」」


 この返事は絶対口だけだ。長い付き合いになってきたんだ。これくらいはわかる。


 ちなみにホロスはそんなやり取りを横目にせっせとリヒトの荷物を亜空間である「ポケット」にしまい込んでいる最中だ。


「どうだホロス? 全部入りそうか?」


「ええ、それなりに余裕を持って入れられそうだわ」


 その「ポケット」をじっと見ていたフェルドが声を出した。


「相変わらず便利な魔法使ってるねホロスちゃん。手ぶらで仕事できるなんて羨ましい限りだよ。他にも防御魔法と回復魔法も使えるし、ホロスちゃん一体いくつの魔法持ってるの?」


「それで全部よ。防御魔法と『ポケット』……収納魔法は私の固有魔法。回復魔法は知っての通り汎用魔法よ。たしかリサとメイメイも使えるのよね?」


「そうだよー」


 と、メイメイが肯定の言葉を返すがそれをかき消すように……


「覚えててくれたのホロスちゃん!!! 私嬉しいわ!!!」


 鼻息荒くリサが答えた。

 リサのその感じはもうずっとだ。ホロスも慣れ始めてきたようで最近はほとんど無視している。


 ちなみにだが固有魔法とは個人の魂に刻まれた魔法のことを指す。当然だが魂の形は人によって異なる。つまり全く同じ魔法を使える人間はいないということだ。しかし全く同じこそないが似た魔法になる例ならいくらでもある。

 例えば属性系の魔法はよく被る。それこそ氷と雪を操る魔法、「氷雪魔法」を使える魔法師はフェルド以外にもこのギルドに存在するが細かい部分で魔法の仕様が異なるらしい。


 反面、汎用魔法と呼ばれる回復魔法は魂の形関係なく誰でも使え得る魔法だ。しかしその「誰でも」というのはあくまで理論上の話で使える魔法師は滅多にいないというのが現状。一等魔法師であるフェルドですら使えないらしい。


「っと、そろそろ出たほうがいいな。列車に乗り遅れる。ホロス、リヒト、出れそうか?」


 俺は二人に目を合わし確認を取ると、


「オレは大丈夫ッス!」


「私もよ」


 このように元気に返事が返ってきて今から出発しても問題ないことの確認が取れた。

 すると、


「あれ? もう行くの?」


 フェルドが言う。


「ああ、早めに出るぶんには損はないだろ」


「真面目だねぇ。気を付けて行くんだよ」


 俺は「ああ」と返事をすると、続けざまにリサ、ガデロン、メイメイも見送りの言葉を送ってくれた。


 更に他のギルド員からも……


「怒られても気にすんなよ!」

「ちゃんとこっち戻ってきてね!!」

「お土産よろしくぅ」

「いってらっしゃい」


 ……ふっ。こいつらこういうときだけちゃんとした言葉を……いや待てよ、しれっと土産せびってきたやついたな……。


 まぁいい。何はともあれ……


「いってきます」


 挨拶はちゃんとしなきゃな。



    第53話 いざ王都へ




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