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第52話 仲間ならもうひとりいます。

「聞いたぞエイン、ホロスちゃん。お前ら王都行くんだって?」


「耳が早いなガデロン」


 ここはギルド内。俺は水、ホロスはりんごジュースを飲みながらとある男を待っている。そんな最中話しかけてきたのはガデロン。誰から聞いたが知らないが俺たちも昨日聞いたばかりの情報を既に耳にしていたようだ。


 そんな俺たちの話を聞いていた他のギルド員のざわつく声が耳に入る。


「マジで!? エインたち本部に移籍すんの!?」

「い~な~おれ王都行ったことないんだよな~」

「せっかく仲良くなれたのにさーびーしーいー!」


 まったく騒がしいことこの上ない。馴れ馴れしい上に図々しい。そんなやつらが多いがそれも悪くないと思っている自分もいるのもまた事実。


「移籍ではないわよ。ただ本部に呼び出されただけ。入会条件満たしてないのにギルド員になってる件について話をしたいらしいわ。これ無理矢理入れたワルドに問題があると思うのだけれどもなんで私たちが直接本部に行かなければいけないのかしら」


 文句を言うホロス。だが実は俺もそう思っていた。


「それはホロスちゃんたちを直接確認したいからだと思うな」


 ガデロンの横にいたフェルドが疑問に答える。


「どういうことだ?」


「本部って度を超えた実力主義なんだよ。普通だったら即強制退会。でも君たちが噂通りの実力をしていると理解されたら特例で認められてもおかしくない。だけどその場合は本部に引き抜かれるかも。本部は見栄っ張りだから優秀な魔法師は手元に置いておきたいらしくてね、『枠外ブラック』を強制的に本部所属にしてるのもそれが理由。まああの人たち自由だから上の言うことなんてまったく聞かないし書類上はって感じになってるけど」


「詳しいなフェルド」


「この子もともと本部所属だったのよ」


 リサが持っている杖をフェルドに向けて言った。


「僕っていうか僕たちでしょ。リサとガデロンも一緒だったよ」


「へぇ。なんでこっちに来たんだ?」


「それがさぁ! 聞いてよ! 枠外ブラックが言うこと聞かないからって上の連中困ったらすぐ僕たちに仕事押し付けてきてさぁ! 大変だったんだよ! 優秀な魔法師なら他にもいるのに仕事の割り振り方下手すぎて。流石の僕も怒って辞めたね」


 テーブルに両手を置きながら身を乗り出しいつもより声を張ってしゃべるフェルド。よほど本部での仕事がつらかったらしい。

 フェルドが怒るとは珍しいこともあるものだ。


「お偉いさん方に引き留められなかったのか?」


「当然引き留められたよ。でも移籍を認めてくれなかったら魔法師ごと辞めるって言ったらしぶしぶ許諾してくれた」


「それは大変だったな」


 労いの言葉の言葉をかけるとフェルドたち三人は「わかってくれるか」といわんばかりに深く頷いた。思っていた以上にに本部の仕事は大変だったようだ。さては社畜というやつだったのだろうか。


「で、話は変わるけど王都までどうやっていくつもりなの? 僕、二人が迷子にならないか心配だよ」


 フェルドに限らず俺たちのことを子供扱いしてくるやつは多い。全く持って心外だ。ホロスはともかく俺は「狭間」の時間関係なく成人しているというのに。

 そんな俺の不満気な顔を見てかフェルドは言葉を続ける。


「だってエイン君この前リヒト君ち行くっていって真逆の方向歩いてたじゃん」


「真逆は言い過ぎだ。少し遠回りになってただけだろ。あの通り無駄に入り組んでんだよ」


 反論中の俺にホロスが割り込む。


「エインすかした顔して意外と方向音痴よね」


「すかしてないし方向音痴でもない。というかお前らは魔力探知が使えるからズルだろ」


 “魔力探知” 文字通り魔力を探知することができる魔法師にとっての基本技能の一つ。しかし探知の範囲や精度は魔法師によってまちまち。


「ズルじゃないよ。がんばって鍛えた結果だって。ねー? ホロスちゃん」


「そ…そうね……」


 嘘つけ。フェルドは知らないがホロスは素で魔力操作の精度高かったらしいし絶対鍛えるまでもなかっただろ。


「ちなみにガデロンは魔力探知下手くそよ」


「俺のことはいいだろって…! それに平均程度の魔力探知はできる。お前らが異様に上手いだけだ!」


 何故かリサに勝手にカミングアウトされたガデロン。可哀想に。


「魔力探知が得意と言えば……」


 俺はもう一人、この場にはいない人物が頭に浮かんだ。その名前を口にしようとした瞬間──


 ──カランカラン。


 ギルドのドアにつけられているベルの音が鳴り響いた。

 続けてドアを開けた主の声も響き渡る。


「おはようみんなー。あれー? なんか今日はいつもよりにぎやかだねー。なにかあったのー?」


 朝のあいさつをしながら入ってきたのはメイメイ。麦にも似た明るい黄金色のくせ毛を垂らしながら疑問を投げかけた。


「あ! メイメイこっちこっち! エイン君とホロスちゃん王都行くんだって!」


 リサが手招きしながらメイメイをこちらに呼び込む。そして先ほどまで俺たちが話していたことを伝えた。


「なるほどー。それは大変だねー。でも王都までは魔導列車通ってるから迷子の心配はないんじゃないー? あれ乗れば一瞬で王都まで着くよー」


 そう、この世界にも列車がある。クグイは科学の発展を危険視しているようだが列車の存在は容認しているようだ。直接的な兵器以外は黙認するということだろうか。それとも魔力で動かしているからセーフ判定なのだろうか。あいつの考えはよくわからん。


「でも王都についてからが大変だよー。王都あっちズウェルテ(こっち)と比べものにならないほど広いし迷路みたいになってる区画もあるから」


 と、フェルドは言うがそういった話は既にとある男から聞いている。


「問題ない。案内役ならいるからな」


「ああ、そうか。そういえばあいつもたしか……」


 俺の言葉の意味を察したガデロンが口を開く。が、その途中で……


 ──カランカラン。


 再びベルの音が鳴り響き、噂の主がギルド内に入ってきた。

 メイメイも然り、噂をすればなんとやらというやつだな。こんなことなら早めにあいつの話題を出しておくべきだった。

 その人物は慌ただしくギルド内をきょろきょろと見渡したかと思えば俺たちを見つけたようで勢いよくこちらに駆け寄った。


「遅れてすいません!! エインさん! ホロスさん!」


 現れたのは俺たちのもうひとりの仲間、リヒト。



    第52話 仲間ならもうひとりいます。



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