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第43話 雪と花

「説明を求める」


「そーだそーだ」


 急に戦えと言われても困る。何故俺たちが戦わないといけないんだ。


「わざわざ言わないとわからないか」


「わからないから聞いているんだが」


 煽られているのか俺たちは。やっぱりここに来たのは間違いだったかもしれない。


「仕方ない話してやろう。まず最近貼りだされているクエストが減っていることには気付いているな」


「そりゃね。何故かこの町近辺の魔物が大幅に減った影響で」


 まあこれは間違いなく魔王の祝福ギフトの影響だろう。何故だ何故だとギルドで騒ぎになっていたが当然真実を話せるわけもなく今に至る。


「で、だ。クエストが少なくなったということはうちの魔法師どもの戦う機会が減ったということだ。それじゃあ体はなまるし勘もにぶる。ということで『どーれ、俺がうちのかわいい魔法師たちを鍛えてやろう』と思ったんだがやっぱりめんどくせぇなってことでお前たちを頼ることにした」


「なんでだよ」


「こいつらも現役バリバリの強者、一等魔法師の戦いを間近で見たほうが学びになるだろうということで」


 言ってることはわかるが……


「さっきめんどくせぇって言っちゃたからもうそれ建前にもなってないよ」


 よく言ったフェルド。


「そもそも俺に関しては一等魔法師ですらないし。メイメイかホロスに頼めよ」


「先に見つかったのがお前らなんだから仕方ないだろ。それに数字なんて飾り・だ・ぜ」


 うぜぇ……


「飾りだとてだ。魔力のない俺の戦い方は参考にならないだろう」


「ちょっと待ってよエイン君! その話の流れだと少なくとも僕が戦うのは決定事項みたいになるんだけど!? 何自分だけ助かろうとしてるの!?」


 やべ、バレた。


「そうだぜ。お前ら二人が戦うのは決定事項だ。これ支部長命令な」


 支部長は吸いかけのタバコをこちらに向けて言い放つ。


「横暴だ横暴!」


 そんな支部長に対し再び俺達は抗議の姿勢を取った。


「まったくしゃあねぇなお前らは。じゃあこれ仕事扱いしてやるよ。報酬は──」


 支部長は俺達に近づいて耳打ちする。


「よぉし! やろうかエイン君! ギルドのみんなのためにもね!」


「ああ、人の役に立てるのってこんなにも気分がいいものなんだな。心なしか今日の空はいつもよりも澄んで見える」


 思いがけない臨時収入に胸が躍る。いや違う、あくまでもこれは後進育成のためだ。決して金に釣られたわけではない。


「現金だ……」


 そんなリヒトの呟きが聞こえた気がしたが気のせいということにしよう。


◇ ◇ ◇ ◇


「で、具体的なルールは? どうなったら勝ちになる」


 外の稽古場まで移動し尋ねる。これは殺し合いではなくあくまでも模擬戦。勝敗の決め方くらいは事前に決めておかなければ。


「どちらかが降参、もしくは俺が決着ついたなって思ったら勝手に止める。デケぇ怪我されても困るからな」


「ちなみに僕は魔法使うのあり?」


「ああ、当然アリだ。魔法戦の勉強でもあるからな」


「なるほどね~」


 魔法の使い方はフェルドから剣術や体捌きは俺から見て学べというのが支部長の狙いのようだ。


「あ、でも二人とも真剣は禁止な。危ねぇから」


「いやいやいや待て。木剣で戦えということか!? 危ないというのなら魔法もそうだろう!?」


「魔法は出力調整できるからなぁ。それに達人武器を選ばずと言うだろ? じゃあ問題ないな」


「異議な~し」


 勝手に決めるな。問題ありまくりだ。


「エインさ~ん。千偽理ちぎりならオレ預かっておきますよ」


 いや預け先に困っているという話ではなくて。


「な~に? エイン君。木剣じゃあ僕に勝てる自信ないのかな?」


 フェルドは受け取った木剣を肩にトントンと当てながら俺を煽る。


「は? 余裕で勝てるが? わかったよ、その条件で戦えばいいんだろ?」


「エインさん……」


 おいリヒト。なんだその目は。言いたいことがあるならはっきり言え。


「二人ともやる気満々で結構なことだ。ほれエイン、お前もこの木剣な」


 俺は支部長に渡された木剣を試しに数度振ってみる。


「軽いな。鞘がないのも違和感がすごい」


「負けた時の言い訳かなぁ?」


「ハンデはこれで十分かって意味だ」


 とは言ったものの正直厳しい戦いになりそうだ。互いに振るうは同じ木剣ということになってはいるが俺が振るう木剣とフェルドの振るう木剣では大きく意味合いが変わってくる。まずはそれをどう攻略するかだな。


「バチバチっすね」


「だなぁ。というか何気に直接戦うのは初めてなんじゃないかあの二人」


 観戦にまわったリヒトとガデロンが話をしていると、


「お前らはエインとフェルドどっちが勝つと思う? 俺はフェルドに一票、うちのギルド最強はなんだかんだあいつだと思ってる」


「俺はエイン。この前ボコされたから」


「わたしは──」


「俺は──」


 他の魔法師たちも集まってきた。どうやらこの一戦、皆が注目しているらしい。これでズウェルテ支部の最強が決まるとか決まらないとか。


「オレは当然エインさんが勝つと思ってますよ。エインさんの強さはオレが一番知ってますから!」


「俺はフェルドが勝つと思うな。エインの強さは俺も身をもって体感したがこの条件だったら……」


「おい、お前ら。静かに。はじまるぞ」


 ガデロンの言葉を遮るように支部長が注意をエインとフェルドの両者に向けさせる。


「じゃ…じゃあ、始めますよ…! いいですか二人とも!」


 試合開始の合図を送るのは受付嬢ノーリス。掲げた旗が下げられた瞬間に勝負は始まる。そしてその旗が今まさに──


「ちゃんと見とけよお前達。そして理解しろ。今から始まるのが──」


「はじめ…っ!!」


 振り下ろされた!!


「最上位魔法師の戦いだ」



    第43話 雪と花



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