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第40話 人間だもの

 魔王、もといクグイの襲来から数日後──


「ふんふん♪」


 ホロスの鼻唄が部屋に響く。


 ──俺達は平和な日常を送っていた。


「ホロス、いつまでその花眺めているんだ。枯れるぞ」


 ホロスはこの前俺が渡した花、白月花びゃくげつかを花瓶にも入れず手に持ち眺めてる。まあ仮に花瓶に入れてたとしてもそのうち枯れるだろうが。


「枯れないわよ。だってほら」


 ホロスが白月花びゃくげつかの花弁をつつくとその指が花弁をすり抜けた。これは……


「幻影魔法…か?」


「似てるけど違うわよ。これは私の亜空間に入れてあるものの姿だけを現実世界に映し出す魔法。この花の本体は時間が止まった状態で亜空間に保存してあるから枯れることはないわ」


「そんなことできたんだな」


「最近できるようになったの。私も成長しているということね」


 ホロスは胸を張りドヤ顔、華麗に2コンボを決めてきた。


「成長といえばホロス、もしかしてお前背伸びたか」


 ホロスの髪をとかしながら思う。頭の位置が以前より若干高くなっている気がする。


「やっぱりエインもそう思う!? 私もそうじゃないかな~って思ってたの!! これは私がもとの姿に戻る日も近いわね!!」


「いや伸びたって言っても少しだから近いということは…」


「近いわね!!」


「……はい」


 どちらでもいいが髪をとかしている最中にこちらに振り向かないでほしい。やりづらいから。


「実際力を取り戻しつつあるというのは事実なのよ。亜空間に繋がるこの穴も前までは一つしか出せなかったけど今は二つまで同時に出せるようになったし」


「二つ出せたらなにか良いことがあるのか?」


「それはあれよ…多く出せた方が…なんかいいじゃない」


 今のところ利点は見いだせてないんだな。


「そうだな。力が戻ってきたのはいいことだ。それで今日はどうする?」


 ホロスの髪をとかし終えた俺は櫛をテーブルに置きホロスに今日の予定を尋ねる。クエストは入れてないし今日は一日暇だ。

 魔王を倒すという目的がなくなり無理に資金集めする必要がなくなったし魔王の情報を集める必要もなくなった。特にこれといってやることのない平和な毎日を送っている。


「う~ん。二度寝?」


「髪とかさせた後にする提案じゃないだろ」


 そんなこんなで適当に街中をぶらつくことに。


「──ってこの前リヒトが言ってたんだがホロスはどう思う?」


「そうね。私が思うに…… ん…? げ……」


 他愛のない会話をしながら歩いているとホロスがなにかに気付く。そして俺の後ろに隠れる。


「もう遅いっぽいぞ」


 見知った顔が俺達に近づく。


「ホロ…ホロスちゃん!! こんな街中で出会えるなんて今日はなんて良い日なの!!」


 いつもの調子で話しかけてきたのはギルド所属の魔法師リサと……


「はろはろーお二人さん。今日も仲がいいねー」


 同じくギルド所属魔法師のメイだ。気の抜けた話し方をするがうちのギルド内でも指折りの実力者である。


「挨拶もいいが早くリサ抑えてくれないか」


 リサはじりじりとホロスに近づくがそんなリサから逃れるためホロスは俺を盾にし常にリサの対角線上になるように移動する。そんな動きが無限に続き、結果として二人はまるで衛星のように俺を中心に回りだした。


「ごめんねエイエイ。ほらリサリサ、ホロホロ怖がってるからそろそろ終わりにしよー」


「……はっ! 私としたことがつい我を忘れて!」


「リサリサ、二人にごめんなさいはー?」


「ご、ごめんなさい。ホロスちゃん、エイン君。ギルド外で会えるとは思わずつい……」


 いや、お前ギルド内でも大体そんな感じだろ。


「あなたは! 少しは! 距離感を! 考えなさい!!」


「は…はい……」


 ホロスが説教を始めリサは地べたに正座をしながらそれを受け止める。

 この大人が子供にマジギレされて普通にへこんでいる絵面、見ているこっちが恥ずかしくなってくるから本当に勘弁してほしい。


「それでエイエイとホロホロは二人で一緒にお買い物でもしてたのー?」


「まぁそんなところだ。暇だから適当にぶらついていた。……それとこれは前から言いたかったんだがエイエイって呼ばれるのしっくりこないから普通に呼んでほしい」


「なんでー? かわいいのにー」


 そうか? 俺にはよくわからない感性だ。


「諦めなさいエイン。その子誰に対してもそんな感じだから。私だってホロホロよ」


「ホロホロはまだいいだろ。なんかあだ名として自然な感じがして。でもエイエイはなんというか…無理矢理感がすごくないか?」


「そうかなー? エイエイも独特な感性持ってるねー」


 お前にだけは言われたくなかったよ。


「でもそっかー。二人とも暇してたんだねー。じゃあホロホロ借りてっちゃおうかなー。女子会開きたかったんだよねー。あ、エイエイも来る?」


「それ女子会じゃなくなるだろ。俺はいいよ。もう少し散歩してたいから」


「ちょ…待ってエイン! あなた私のこと置いてく気!?」


「大丈夫大丈夫。ちゃんと千偽理ちぎりは持っておくから。これで俺の居場所はわかるだろ?」


 ホロスもこの世界で人間として生きていくことを決めたんだ。だったら俺以外との交流ももっと増やしたほうがいいだろう。


「そうだけどそうじゃなくて!! 私この変人たちの中でやっていける気しないわ!!」


「ギルドの連中なんて大体変人なんだから今更だろ」


 さーて、俺はどうするかな。リヒトん家でも遊びにいくか?


「ぐへへホロスちゃん!! たくさんお話しましょうね!!!」 


「エイン!! やっぱりメイメイはともかくリサはハードル高いわよ!!」


 ……まぁリサもホロスが本当に嫌がることはしないだろう。最悪メイメイがストッパーになってくれるはず……はずだよな。


「じゃあ俺はこのへんで」


「エイエイまたねー」


 手を振るメイメイの後ろでホロスが叫んでいる。人間生きていればこういう試練もいつか訪れるだろう。まあ俺は体験したことないし体験したいとも思わないけども。



    第40話 人間だもの


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