第39話 ずっと一緒
俺が聞きたいこと、それは──
「何故千年前ホロスを封印した」
「ク…クハハ!」
俺の質問を聞くや否や鵠は笑い出した。
「なにがおかしい…!」
「いやスマン悪気はないんだ。だが…ハハ! お前ら二人とも自分のことについてではなく互いのことを聞いてくるものだから!」
お前ら二人とは俺とホロスのことだろう。
「この二人そういうところあるんスよ」
リヒト、お前凄いな。仮にも魔王と呼ばれている存在に友達の友達ぐらいの距離感で話しかけるとは。これは別に褒めてないぞ。
「だろうな。俺と戦っている最中も──」
話を広げるな。
「マジすか! オレもその場にいたかったなぁ!」
「おう! 今度はお前も見にこい!」
嘘だろこいつら。どこで波長合ってんだよ。前言撤回だ。お前らは友達の友達ではなくもはや普通に友達だ。
「苦労しますねエイン様」
「互いにな。……そういえば一つスズメさんに聞きたいことがあるんだがいいか?」
「ええもちろん」
鵠とリヒトが盛り上がっている間に聞けることは聞いておこう。
「魔族は人間を襲う本能があると聞いたがスズメさんはそんな感じしないな。どうしてだ?」
「かつては私にもありましたが鵠様に祝福の力で取り除いてもらいました。私に限らず彼に仕えている魔族は皆取り除かれています。無駄に人間と争うことのないように」
「あいつの祝福そんなことまでできるのか。便利だな」
「ええ、これが私が鵠様に仕えている理由の一つです。私はあまり戦うのが好きではないので感謝しているのです。普段はまあ、あんな感じですが返しきれないほどの恩があります」
戦いたくないのに人間を見たら戦いの衝動に駆られる。もはや呪いと言ってもいい本能を取り除かれたんだ。恩義を感じるのも当然か。
「エイン、あなたが“さん”付けって珍しいわね」
「おや、そうなのですか? 私はどのような呼ばれ方でも構いませんが」
「いや、なんだかスズメさんにはシンパシーを感じてな」
「ふ~ん」
あの千年間では俺はホロスとしか話す機会がなかった。だからこっちの世界に戻ってきてから他の人間との距離感を計りかねてきたが最近ようやくわかってきた気がする。ギルドの奴らは大体ちゃらんぽらんだから適当にあしらっていいと。そしてだからこそ感じる。スズメさんは常識人側だと。
「そりゃあ、さんも付けますわな」
「?」
なんて独り言を言っている場合ではない。閑話休題だ。
「鵠、話が逸れすぎだ。そろそろ俺の質問に答えろ」
「ん…? ああ、そういえばそんな話だったな」
おい、リヒトとの会話が盛り上がりすぎて忘れるってどういうことだよ。
「そりゃあれだ。女神の力を恐れたから! 以上!」
「…真面目に答えろ」
「割と本気で答えたが。俺がこの世界のパワーバランスを崩すものを恐れているという話は既にしたよな。その最たる例が女神の魔法だ。だから封印した。それだけの話だ」
…やはりこいつとは相容れないな。
「鵠様…!」
「黙っておけスズメ。これでいいんだ。この話にこれ以上の言葉は必要ない」
あちらさんにも込み入った事情があるらしい。だが例えそれにどんな大儀があったとしても俺は……。いや、話を拗れさせるだけか。それよりも……
「今はお前の存在が一番この世界の均衡を崩していると思うが」
「だからこうして均衡を保つ側に徹している」
「そんなお前が暴れ出したら誰が止めるんだ」
「そのときはお前が俺を殺せ。エイン・フロース」
「無茶を言う。それができなかったからこうして話しているというのに」
「成長期だろ。頑張れや」
一応俺は千年以上生きているんだが。そんな奴に成長期を期待するな。
「というわけで質問タイムはこれで締め切りだ。他の人間に見られても面倒だし俺達はそろそろ帰る」
「そうしてもらえると助かるわ。その場合私達の方が困るもの」
たしかに。客観的に見たら意味が分からないからなこの光景。下手したら魔王に絆されたと思われて俺達の人間社会での地位が危ぶまれる。
「それでは皆様失礼いたします。怪我や病気にはお気をつけて」
そう言ってスズメは鵠の両脇を掴んで飛び立った。
「あ…そうやって運ぶのか……」
なんというか……
「猛禽類に捕獲された獲物みたいッスね」
「宅配用ドローンかよ」
「まるでUFOキャッチャーね」
鵠とスズメの姿がどんどんと小さくなっていく。
「………」
とてもじゃないが魔王の姿とは思えない。
◇ ◇ ◇ ◇
ここは上空数百メートル。
「おい運び方もう少しどうにかなっただろ」
「運んでもらえるだけありがたいと思ってください。……それにしてもきちんとお話されなくてよかったのですか?」
「封印の件か? 言っただろう、あれでいいと」
「それもですが科学の件についてもです」
「…それか」
「いつの世も人間は力を求めます」
「目を逸らさせるにも限界がある。だから俺は“メ”を潰す。手を汚すのは俺達だけでいい」
「左様ですか。…おや鵠様、頭に白い花びらがついてますよ」
「マジか。取ってくれ」
「両腕が塞がっているので無理です。これは…白月花ですかね」
「ク…クハハ! やはりあいつらは面白いな! おいスズメ! その花の花言葉は知っているか?」
「そうですね。たしか──」
第39話 ずっと一緒
「あ…騎士団には気をつけろと言うのを忘れてた」
「戻りますか?」
「いい。まぁどうにかなるだろ。あいつらの実力はちゃんと確認できたからな」
しばらく更新止まるかも




