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第32話 降臨

「エインはどこ? リヒト」


 風が吹いた。そんな気がした。


「えっ!?? エインさんですか? お、オレもぜっ…ぜんぜん居場所わかんないッス!!」


 目が泳ぎまくっている。これは絶対知っているな。そして魔力を抑えていたのは私に問い詰められたら隠し通せる自信がなかったからだろう。つまりリヒトはエインに口止めされている。これが意味するところは……


「エインは…私に会いたくないの……?」


 私は今どんな表情をしているのだろうか。少なくともいつも通りの顔は出来ていないのはわかる。私はそんな顔を隠すように顔を俯かせた。


「そっ…そんなことないッス! それだけは…! それだけは絶対にないです!!」


「じゃあなんで…?」


「それはっ……それは本人から聞いてください」


 そう言って指を差したのは草原へと進む道。


「オレはただ指を差しただけです。そこに誰がいるとかは知りません。だから…」


 だから自分が居場所を教えたことはエインに言わないで、ということか。

何故リヒトが口止めされているのかわからない。何故それでも私に教えてくれたのかもわからない。それでも──


「ありがとう」


 私はただ前に進むだけだ。



 ホロスがこの場から立ち去りリヒトは再び一人きりに。


「はぁ…まったくエインさんも罪な男ッスね。女神様を泣かせるなんて──」


◇ ◇ ◇ ◇


 リヒトに示された道を真っ直ぐと抜ける。この道はクエスト中何度か通ったことのある道だ。まだ町からも近いということもあって好戦的な魔物は基本的にいない。そんな道を抜けた先の草原に彼はいた。


「エイン……」


「ホロス…?」


 しゃがんで何かを見ていたエインは私の声に気付き、驚いたような困惑しているような、そんな様子でこちらに振り向いた。


「なんでここが…いや、リヒトから聞いたのか」


 私から言うまでもなくリヒトの存在はバレていた。でもリヒトには悪いけどそのことは一旦置かせといてもらおう。それよりもエインに伝えたい大事なことがある。


「ねぇエイン。魔王倒すのやめよっか──」


「──え…?」


 遥か昔、私は異世界から呼び出した人間に封印された。そしてその人間は新たな魔王になった。それから千年後、封印された私の前に魔力を持たない一人の少年が現れた。それがエイン。エインは故郷を魔族に襲われ逃げてきた。千年経っても魔族の被害は起きている。魔王は健在。そう思った私は、封印された私に代わり魔王を倒してもらうためエインに力を授ける話を持ちかけた。そしてそれは快諾された。

 故郷を襲った魔族を倒すため力を欲したエイン、魔王を倒してもらうため力を授ける者を探していた私。その時点では私たちの利害は一致していた。でも──


「エインの目的はもう達成したでしょう? 故郷の仇は既に討った。あなたが戦う理由はもうない。それこそ魔王と戦う義理なんて」


 エインにもし魔王と戦う理由があるとすればそれは私の存在。魔王を倒すことを目的にしている私と行動するということは自分も魔王と戦わなければならないということ。でも本来それはエインにとって必要のない戦い。きっとエインはそれに気づいて私の前から去ろうとしたのだろう。


「私はね、エイン。魔王を倒すよりもあなたと一緒にいたいの。だから──」


「ちょ…ちょっと待てホロス! お前何か勘違いしてないか?」


「勘違い? だってあなたわざわざ千偽理ちぎりまで置いて私の前から…」


 いなくなった。

 見つけられたくないから千偽理ちぎりまで置いて行った。それが一番自然に見えた。


千偽理ちぎりを置いてったのはホロスに俺の居場所がバレたくなかったから。千偽理ちぎりは鞘に納めた状態だと魔力を発さないけどそれでもお前なら気配でわかるんだろ? それにいなくなったって言ってもたったの数時間。まぁ本当はもう少し早く戻るつもりだったけど」


「バレたくないってなんで…?」


「なんでって……いやもう隠す意味ないか。もう目に入ってるだろうし」


 いま私の目に入っているものといえばエインと花畑。この花は──


白月花びゃくげつか。この花を探してたんだ。」


 白い花弁が5枚、星型のように配置されたその花を私は知っている。


「前花屋に通りかかったときにこの花見てただろ? 結局そのときは買わなかったけど次にその花屋に通りかかったときにはもうこの花は置いていなかった。それに気付いたホロスが俺にはなんだか寂しそうな顔をしているように見えて」


 エインは話を続ける。


「だからこの花が欲しいのかなと思って。──いや違うな。この花がホロスに似合うと思って、ただ俺がホロスにあげたかっただけだ」


「なんで私に黙って…?」


「柄じゃないから…かな。でもそのせいで苦労したよ。いろんなところ探し回って、いろんな奴に話聞いて、やっと見つけた。だけどやっぱり柄じゃないことはするもんじゃないな。時間かけすぎてホロスに心配かけるなんて本末転倒だ」


 そう言いながらエインはその花を私に渡す。


 ふふっ! なんだ全部私の勘違いだったんだ! 柄じゃない? そうかもしれない。でも私は今、最高に──


「嬉しい! ありがとうエイン!」


 ねぇエイン知ってる? 白月花びゃくげつかの花言葉はね──


 口にしようとした次の瞬間それは現れた。この世界の住人はみな魔力を持っている。例外はエイン、そして──


「──随分と面白いことになっている。俺も混ぜろよホロウノス」


 異世界からやってきた──


「魔王……!!」


「つれないな。クグイって呼んでくれ。千年前と同じように」



    第32話 降臨


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