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第31話 どこ?

 カーテンの隙間から差し込む陽ざしが容赦なく私の顔を覆う。どうやら朝が訪れたようだ。いつもの私ならそんなのはお構いなしに布団を深くかぶり二度寝へと洒落込む。だけど今日はなんとなくそんな気分ではなかった。まあ早起きして損はないだろう。

 この部屋に住まうもう一人の住人は既に布団にいない。これはいつも通りだ。でも一ついつもとは違うことがあって、


 それは──


「……エイン?」


 エインが部屋から消えていた。“千偽理ちぎり”を部屋に置いたまま──



「エイ~ン!」


 返事はない。いつもなら私が声をかけるまでもなく「おはようホロス」と朝の挨拶をしてくるというのに。

 外に出かけた? 私に声をかけずに? “千偽理ちぎり”を持たずに? 前者はまだわかる。そもそも寝ぼけた私が声をかけられたことを忘れただけっていう可能性だってあるし。でも後者は…“千偽理ちぎり”を持たずにというのは不自然極まる。あんなに腰に差してないと落ち着かないと言っていたエインが“千偽理ちぎり”を持ち出さずに外に出るなんて。


 もう一度部屋を見渡してみる。やはりいない。


「エイン?」


 ベッドの下も。


「エイン?」


 テーブルの下も。


「エイン?」


 ゴミ箱の中にも。……いやここにいるわけないか。なにをやっているんだ私は。


「まったくどこにいったのかしら」


 人探しなら“魔力探知サーチ”をするに限る。これなら探知範囲にいる見知った魔力を持つモノを探すことができる。でもエインは魔力がない。だからこんなことをしても意味はない。

 エインを探すにはいつもエインが腰に下げている“千偽理ちぎり”の気配を追うのが一番。“千偽理ちぎり”は私の分け身だからどこにあろうと大体の場所はわかる。でも御覧の通り“千偽理ちぎり”は部屋ここに。参った手詰まりだ。


「う~ん…」


 部屋はいつも通りきれいだ。荒らされた形跡はない。誰かに無理矢理連れ出されたとかではなさそうだ。というか誰がエインを無理矢理連れ出すことができる。それに寝てたとしても不審者が部屋に侵入してきたらいくらなんでも私も気づく。


 ということはエインが自発的にどこかに消えた。私に気付かれないように。


 なんで?


 私と一緒にいるのが嫌になった…? 理由は思いつかないこともない。だけど私は……!


 想いを言葉にする前に、“千偽理ちぎり”を抱え私は外へと飛び出した。


◇ ◇ ◇ ◇


「ハァ…ハァ…」


 全力で走った私は息も絶え絶えになりながらギルドへ訪れた。


「どうしたんだホロスちゃん。そんなに息切らして」


 話しかけてきたのはガデロン。壁に貼ってある受注可能なクエスト一覧を眺めていたようだがギルドの扉を開けた時に鳴ったベルの音で私が入ってきたことに気付いたみたいだ。


「ガデロン今日エイン見た!?」


「見てないが今日は二人一緒じゃないのか珍しいな」


 そりゃあそうだろう。一人でギルドに来たのは多分、いや確実に初めてだし。


「その持ってる刀、エインのか」


 ガデロンは私が抱えている“千偽理ちぎり”に視線を向けた。


「そうなの! 朝起きたらエインいなくて! “千偽理ちぎり”も置いてったまんまで!」


「そうか、あいつホロスちゃん置いてどこいったんだか。う~ん、俺もエイン探しを手伝ってやりたいんだが今日はクエストがあってこれから寝坊してくるであろうフェルドを起こしにいくという任務もあるんだよなぁ……」


 仕事があるというのであれば邪魔をするわけにもいかないか。


「ま、見かけたらホロスちゃんが探してたって伝えておくぜ」


「ありがとう」


 ガデロンに礼を言うと私は受付に目を向けた。


「ノーリス、悪いけどエインがギルドに顔を出したらあなたからも伝えておいてくれないかしら?」


「は、はい! わかりました!」


 そして私は外に出た。ギルドにいないとなるとどこにいるのだろうか。とりあえず心当たりのある場所を手当たり次第探していこう。



「あ~あ、ホロスちゃんに嘘ついちった」


 ここはホロスが去った後のギルドの中。


「私も心が痛いですぅ…」


「でもな~、あいつの頼みだからなぁ」


◇ ◇ ◇ ◇


 いないいないいない。どこにもいない。露店が立ち並ぶ通りにも、この町に初めて来た日に訪れたレストランにも、もしかしたらすれ違いになったのかと思い戻って確認した私たちが普段宿泊している宿屋にも。道中見知った顔には何人か会った、でも誰もエインのことは見ていないらしい。

 …いや待てよ。そういえば今日エイン以外にもまだ見ていない顔が。エインは探せなくてもあちらなら……


「“魔力探知サーチ”!」


 この町全体を覆う大規模探知。ホロスの想いに比例して大きく広がった魔力探知は確かに対象を捉えた。


 いた! だけど魔力を抑えている…? まさかあなたも私から隠れているっていうの? でも精度の低い魔力探知ならともかく私の魔力探知からは逃れられない。


「かくれんぼはもうおしまいよ」


 私は駆け出した。町のはずれ、森や草原の近く、いつもクエストに行くときに使う道まで。 



 目的地まで辿り着くと一人の男が立っていた。魔力探知に引っかかった男が、私がこの町でエインの次に顔を合わせている男が。

 でも一人だ。エインはいない。当てが外れたか? だがわざわざ魔力を抑えていたんだ。何かしらの理由があるはず。それこそエインに関わる何かが。


 目が合った。そして私は口を開く。


「エインはどこ? リヒト」



    第31話 どこ?


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