第012話 「アリーナの賭け」
いつものように小深山ジムでトレーニングをしている3人。
「兄貴!アリーナ挑戦はもうすぐですね!ちょっと緊張もしますね!」
「そうだな!しかし、これだけトレーニングをやっているからな!トレーニングは裏切らないと思うぞ!」
「あたいは、お腹へった~。」朱華音が愚痴をこぼす。
その瞬間ジム扉が静かに開いた。
汗と闘志が渦巻くその空間に、不意に現れた男の姿に、彼と大輔、朱華音の三人は驚愕した。
「……誰だ、お前?」
彼が警戒しながら尋ねると、その男はニヤリと笑った。
「デッドショット・ジャクソンだ。」
彼の名を聞いた瞬間、朱華音の表情が強張る。
「……デッドショット・ジャクソン?まさか、アリーナで無敗の記録を持つが、アマチュアから次のステージに行かず、荒稼ぎしている輩?」
ジャクソンは軽く肩をすくめた。「噂通りなら、俺は相当有名みたいだな。」
次の瞬間、ジャクソンの拳が彼を襲った。しかし、彼は即座に反応し、腕でキックを防ぐ。
「おっと、すまない!」ジャクソンは少し驚いたように笑う。「聞いていた通り、やるじゃねえか。」
「何のつもりだ?」彼が睨みつける。
「別に道場破りをしにきたわけじゃねえよ。」ジャクソンは指をポキポキと鳴らしながら言った。「賭けをしにきたんだ。」
「賭け?」大輔が眉をひそめる。
「次のアリーナ戦、俺たちのチームも出る。そこで、お前たちに賭けを持ちかけたい。」
「賭け?」彼が聞き返す。
「そうだ。俺たちが勝ったら、グレゴリーを引き渡してもらう。」
その名前が出た瞬間、場の空気が一変した。
「冗談じゃねえ!」大輔が叫ぶ。
「悪いが、その交渉には乗らない。」彼も毅然と言い放つ。
しかし、ジャクソンは余裕の笑みを浮かべた。
「ま、そう言うと思ったぜ。だから、お前に教えてやるよ。」
ジャクソンは懐からスマートフォンを取り出し、画面を彼に見せた。そこには、グレゴリーの姿が映っていた。そして、その周囲には何人かの男たちがいた。
「……!」
「安心しろ、まだ手は出してねえ。ただ、ポールの部下に見張らせてるだけだ。あくまで平和的な交渉をしに来たんだぜ、ブラザー。」
「ポールだと!クソッ……!」彼の顔に緊張が走る。
朱華音が静かに言った。「グレゴリーさんが危ない……。」
彼はすぐにスマートフォンを取り出し、グレゴリーに電話をかけた。
『……もしもし?』
「グレゴリーさん!無事か?」
『いや……数人の男たちに尾行されている。気づいてないフリをしてるが、ずっと後をつけられている。』
「わかった、すぐに何とかする。」
電話を切ると、彼はジャクソンを睨みつけた。
「……わかった、その賭け、受けてやる。」
ジャクソンの顔に満足げな笑みが浮かんだ。「いい判断だ。」
「ただし、条件がある。グレゴリーには絶対に手を出すな。」彼がジャクソンを睨みながら話す。
「もちろんさ。」
ジャクソンは軽く両手を挙げて見せた。「俺たちは正々堂々と戦いたいだけだからな。」
ジャクソンは背を向けながら言う。
「アリーナで待ってるぜ。俺たちと戦う前に、負けるなよ。」
彼はその言葉を背に、静かに拳を握り締めた。
アリーナでの戦いが、避けられない運命となった——。
小深山はちょうど留守にしていた為、彼が帰ってくると同時に、さっき起きた出来事を彼が説明した。
「ふむ……なるほどな。」
小深山は腕を組み、少し考え込んだ。
「アリーナの決戦は来週の週末か。時間がないな。」
彼と大輔、朱華音はそれぞれの決意を新たにする。
「お前たちの実力は、確かに上がっている。だが、アリーナで勝つためにはそれだけじゃ足りねぇ。特に、お前らが戦う相手は、経験もあり、戦い方を熟知した奴らだ。」
「じゃあ、どうすれば……?」大輔が焦った様子で尋ねる。
「コツを教えてやる。」小深山は鋭い眼差しで3人を見つめる。
「まず一つ目、『相手の癖を見抜け』。強い相手ほど、自分の戦い方に自信を持っている。だが、それが逆に隙にもなる。相手の攻撃パターンを冷静に観察し、一瞬の隙を突け。」
「二つ目、『スタミナ管理を徹底しろ』。アリーナの戦いは長丁場になる。序盤で全力を出しすぎると、後半でバテる。ペース配分を考えながら戦え。」
「三つ目、『相手の精神を揺さぶれ』。戦いは力だけじゃねえ。心理戦でもある。自分を冷静に保ちつつ、相手を焦らせることで勝機が生まれる。」
小深山の言葉に、彼らは深く頷いた。
「よし、それを頭に叩き込んで、明日から最終調整に入るぞ!」
彼らのアリーナ決戦へ向けた最後の追い込みが始まる。




