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21. 霧華(きばな)十

 あんたはそうやっていつもすぐに許すんだから、とみいなはにいなを睨みましたが、にいなは楽しそうにみいなを見つめ返すばかりです。

 やがて諦めたように、みいなはため息をつきました。


「……いいけど、次にやったら許さないから」

 女の子たちを一睨みすると、みいなはにいなの手をとって校庭に走っていきました。ランドセルをジャングルジムの近くに置きます。近くに転がっていたボールもきらきらとしているのがおかしくて、それで遊び始めました。遺跡で世界の鍵を作った時のことを思い出します。


 思いっきり走って、思いっきり笑って、思いっきり遊んで。冷たくヒリヒリする空気が体の中に入るたびに、胸の奥でつっかえていたものが消えていく気がします。

 戸惑うように二人を見ていた女の子たちも、おずおずと一緒に遊び始めました。

 他のクラスの子も、他の学年の子も、みんな遊びに加わります。やがて、先生たちも校庭に出てきました。


 ボールを取り損ねたみいなは、にいなと一緒に校舎の裏にボールを追いかけていきました。


 そこにいたのは、いつも怖い顔をしてる教頭先生でした。教頭先生は一人でこっそりと空を舞うきらきらとダンスを踊っていました。くすんだ緑色のワンピースがきらきら輝いています。

 二人と目が合うと、教頭先生は動きを止めました。


「教頭先生!」

 みいなは普段ではぜったいに出さないような大きな声で教頭先生に話しかけました。


「ごほん。なんですか?」

 教頭先生は、今まで踊っていたことなどなかったかのように、真面目な顔でみいなとにいなに向き合いました。


 教頭先生の上から刺さる目線に、みいなとにいなの目線もどんどん下がっていきます。みいなは自分の靴を見つめながら、唇を噛みました。


「なんですか? 用がないなら先生はもう行きますよ。朝から生徒たちが浮ついていて、先生方は困っているんです。あなたたちも早く教室に入りなさい」

 まったく、ダイヤモンドダストなんて降るからと、教頭先生は煩わしそうに自分の肩からきらきらを払います。

 きらりと消えていく粒に勇気付けられたみいなは、大きく息を吸いました。


「教頭先生、雪の結晶は、すべて形が違うと授業で習いました」


「そうですね。どのような結晶になるかは、さまざまな要因で異なってきます」


「見た目は同じでだけど、顕微鏡で見るとみんな違う柄をしているんです」


「そうですね。『雪』とひとくくりにはされていますが、一粒一粒違うパターンで形成されています」


「私たちも同じです。みんな、『子ども』だけど、一人一人違います。私とにいなは、他の子と見た目は違うかもしれないけど……でも、それって私たちだけじゃなくて、ほんとはみんな違うんです」


「……そうですね。生徒一人一人の個性を伸ばすのが、学校教育の役割りです」


「そんなこと思ってないくせに!」

 思わずにいなは声を上げました。

 みいながにいなの腕を引いて、にいなを睨みます。ちょっと黙っててよ、という目で見られたにいなは、だって、と言おうとましたが、みいなの真剣な顔を見て、口を閉じました。


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