21. 霧華(きばな)九
「ちょっと、みいな!」
にいなが慌てたように言いますが、みいなはそれを無視して校舎の中へ向かおうとします。
「みいなちゃん! 本当にごめん。今までのこと全部、全部ごめんなさい。私、私……」
その子の声が泣きそうで、みいなは思わず足を止めました。
だめ。こんなことで騙されるもんか。先に進まないと。
そう思う気持ちと、その子のことが心配な気持ちが攻めぎ合います。
「あのね、私、私たちみんなね。みいなちゃんとにいなちゃんのことが羨ましかったの。髪の毛もきらきらで、目もきらきらで、物語に出てくるお姫様みたいで。だから意地悪しちゃったの。ごめんなさい」
女の子は頭を下げました。周りにいる女の子たちも、みんな頭を下げます。
みいなはかっとなって言い返しました。
「なにそれ、意味わかんない。物語のお姫様みたいだからいじめるってどういうこと?」
「だって、だって、周りの子がみんな、みいなちゃんとにいなちゃんのことかわいいって言うから」
「そんなこと誰も言ってないし、聞いたこともないし。みんな不良とか、くるくるとか、悪口ばっかり言うじゃん。かわいいなんて誰にも一言も言われたことないんだけど!」
みいなは、今までのうっぷんを晴らすように大きな声を出しました。何事かと周りの子も集まってきます。
「言ってる。本当は言ってるの! クラスの男子とか、みんな言ってる。でもあいつらガキだから、悪口言って気を引こうとしてるだけなんだよ」
「なにそれ意味わかんない。それにクラスの男子がガキなんて、あんたたちの方がよっぽどガキでしょ。一人だけ仲間外れにしたり、無視したり。そんなの今どき幼稚園児だってやらないし」
みいなはにいなの手を離すと、にいなをかばうように後ろにして女の子たちに向き合いました。
こんなにしっかりとその子たちの顔を見たのは久しぶりです。みんな気まずそうに目を逸らしていきます。後ろでにいなが「そうだ! そうだ!」とみいなを応援します。
「だからごめんって言ってるでしょ!」
リーダー格の子は、いつものようによく通る声で言いました。
「ごめんで済んだら警察いらないわ!」
そうだそうだ! と周りに集まってきた子たちも囃し立てます。
「ほんとはもっとずっと前から謝りたいって思ってたの! でも周りの子が悪口言おうって言うから……」
「ちょっと! 私たちのせいにしないでよ! 私は謝ろうって何度も言ったよ!」
「私も言った!」
「嘘つき! きらきらなんて変だって言ってたじゃん!」
女の子グループは口喧嘩を始めてしまいました。
みいなはイラッとして、その子達の言い分を遮りました。
「それで、なんでいきなり謝りに来たの? ああ、もしかして、自分たちもきらきらになって、やっと私たちの恥ずかしさが分かったの?」
みいなは吐き捨てるように言います。
「違う! 恥ずかしいなんて思ってない。きらきらしてるのが可愛くて、みいなちゃんとにいなちゃんとお揃いになれたのが嬉しくて……だから……だから」
いまさらお揃いって言われても、とみいなはまた言葉を遮ります。
「そんなことはどうでもいい。それより、私のことはいいから、にいなには謝って。私は性格悪いこと自分で分かってるけど、にいなはいい子だよ」
女の子たちは、びくっとして、気まずげに口を閉じました。
こんなに大きな声で自分の意見を言うのはいつぶりでしょう。喉がカラカラになってきます。でもこれだけはきちんと分かってもらわないといけません。
「ごめんなさい……」
女の子たちはみんな頭を下げました。
「みいな、もういいよ。ね、みんな、お友だちになろう。みんなで遊ぼう。こんなにきらきらしてるんだもん。きらきらを集めてさ、みんなで雪合戦したら楽しいよ!」
みいなは両手を大きく広げて言いました。




