21. 霧華(きばな)十一
「それから、みんな違うけど、みんな同じ『子ども』なんです。私たちを変に区別しないでください」
みいなは震える声で言いました。喉がからからで、喉の奥から何がが迫り上がってきそうです。
にいなはそんなみいなを励ますように、手をぎゅっと握りました。
「そうだよ、教頭先生。私たち、みんなと同じ、子どもだよ! ゆっこちゃんとまやちゃんの髪型が違くても、先生怒んないでしょ? なんで私たちのだけ怒るの? みんな違くていいじゃん!」
にいなは教頭先生をじっと見つめます。
みいなも、教頭先生をじっと見つめます。
教頭先生は、石のように固まった顔で、口を閉じてしまいました。
そのまま時が経ちます。もう何時間もそうしているかもしれないような気がします。でも、二人は動きません。
ぜったいに負けないんだから、と二人は決して教頭先生から目を離しませんでした。
「……そうね、あなたたちの言うとおりだわ」
教頭先生は重いため息を吐きました。
「ここはあなたたちが前に住んでいたところより、田舎でしょう? あなたたちが引っ越してくるって決まった時、ちょっとした騒ぎになったのよ。ここは保守的な……そうね、昔からのしきたりを守る人が多い地域だから。あなたたちがここに馴染むには、ここのしきたりに合わせてもらうことが一番だと思っていたけど……そうじゃないわね。私たちも、変わっていかなければいけなかったんだわ。そう、あなたたちもみんなと同じ、子どもですものね。そして、雪の結晶のように、みんな一人一人違うんだわ」
教頭先生は深く頭を下げました。
「ごめんなさい。あなたたちのことを傷つけてしまって」
「先生……」
にいなはおろおろし始めました。
ですが、みいなは引きませんでした。
「ママにも謝ってください。ママ、ときどき夜に泣いてます」
みいなとにいなが学校で叱られた日に、ママが夜中にこっそり泣いているのをみいなは見たことがあります。
「今日の放課後、二人の家に伺いましょう」
教頭先生は頷きました。
ほっと肩の力が抜けたみいなは、今さらながら自分の足が震えていることに気づきました。にいなの手を握りしめている手はカチカチで、にいなはきっと痛い思いをしているだろうと、みいなは手を離そうとしました。
ですが、にいなはみいなの手を離しません。「私たち、やったね!」と唇だけでささやくと、にいなはにこっと笑いました。
「さ、あなたたち、早く戻りなさい。今日は私の権限で授業はすべてお休みとします。こんな奇跡的なことがあった日ですもの。教室でじっとしているなんて、もったいないわ」
教頭先生は真面目な顔で二人に告げました。でも、唇の端がわずかに上がっています。
二人は走って校庭に戻り、友だちに授業がなくなったことを伝えました。みんなから一斉に歓喜の声が上がります。
◆◇◆◇
「霧華さんにはね、浄化の作用があるんですよ。みーんな、嫌なものを洗い流してくれるの。だからね、今日はみんな外に出て、いっぱい霧華さんを浴びるといいですよ。うちのひいおばあちゃんも、赤子の頃は病弱だったけど、霧華さんを浴びてねえ――」
テレビでは、おばあちゃんが昔話を語っています。おばあちゃんの頬は、つやつやとしたピンク色に染まっていきます。
「あら。そういえば私も目元のしわが薄くなってきてるような」
レポーターはモニターをチェックしながら目元を触りました。
町の人たちは、続々と外に出てきました。
人も、街も、森も、みんなきらきらです。
みんなの笑顔もきらきらです。
◆◇◆◇
きらきらしたもの。
ダイヤモンドダストの結晶。
きらきらに覆われた街と学校と家。
にいなとみいなとママ達の髪の毛と瞳。
星の卵。
きらきら石。
以上で完結となります。長くお付き合いいただきありがとうございました。
活動報告にこのお話を書くまでの経緯を載せましたので、お時間がある方は覗いていただけるとうれしいです。
お読みいただきありがとうございました。




