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空っぽ鎧の黒騎士様!!  作者: ken
三章 鬼ノ国編
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55話 大会の後

 決勝の前に三位決定選があったのだが、スザクが約束の確定で気が抜けたのか、簡単にセイリュウに負けた。

 

 全ての試合が終わったことで表彰の開始である。


 俺、ルイン、セイリュウが舞台に並び、三位から順番に執り行って行く。


 二位だったルインにも賞金が出た。金貨五百枚だそうだ。


 二人の番が終わり、遂に俺の番となった。

 並んでいたルインとセイリュウから一歩前に出て、京子と並んで立つ。

 簡単に俺の戦いを振り帰った後、京子が俺の腕を天に掲げ、優勝を宣言する。


「第九十回武闘大会優勝者!!ジン・ミクモです!!」


 会場全体がざわついた。


 何故会場がざわつく……ここは拍手とか送ってもらえるものだと思うのだが?

 いや、送ってる奴はいるな。


「さすがジン様!!我らが神!!」

「私達はジン様に付いて行きます!!」

「素敵ですー!!ジン様最高!!」


 信者が大騒ぎだ。変に目立つからやめて欲しい。


「皆様拍手をお願いします!!優勝者に拍手を!!」


 京子が気を使ってくれたのか、お仕事だからか、観客に拍手を促してくれた。

 すると、次第に拍手が湧き出し、会場全体から称賛を送られた。


「さ、さすが邪神だー」

「神様は違うわねー」

「本当に【空の黒騎士】様は凄いなー」


 称賛ではあるが、気持ちの籠ってない棒読みばかりである。


 なんだろう。これが接待で持ち上げられる人の気持ちなのかな?

 いや、違うな。どちらかと言えば初めて会う人に当たり障りのない事を言っておこうみたいなそんな感じかな?

 なんにせよ、ちょっとした孤独感を感じる。早く皆に会いたいな。


「それでは賞金授与を行います。金貨千枚です。おめでとうございます!」


 そう言う京子から手渡されたのは、ジャラジャラと金属がこすれる音が聞こえる大きな袋。

 ちょっとだけ袋を開けて中を見てみる。


 うおっ!!凄い光ってる!!

 金貨の価値は良く知らないが、これはかなりの額ではなかろうか。

 思わずニヤつく。使い道の想像が膨らむな。


「では表彰状を授与します」


 優勝の証を受け取り、俺は元の位置に戻った。

 京子が大会終了を宣言し、観客席のみならず、大会の為に動いてくれた係員の人達まで盛大な拍手をしていた。


 舞台から表彰を受けた者が降りると、本選参加者達とクロナ、セキトが出迎えてくれた。

 各々に褒め合いつつも、どこがダメだったかの反省回が始まる。

 しばらくすると京子、星月キララがライブを始めた。

 何でも、「ファンを取り戻す!!あわよくば増やしてやるわ!!」とか言って舞台を占拠したのだとか。

 しばらくの間は舞台に用事が無い為、ベニバナが公認し、急遽ライブスタート。

 ルインがゴーレムによるバックダンサーを、スザクとセイリュウが[炎鳥]と[竜撃]による演出を行い、結構盛り上がった。

 ベニバナとか凄い楽しそうだった。かなり弾けてたな。王の威厳とかほぼ感じない。凄い親しみやすさである。

 やがてライブも終わり、太陽も沈み始めた。祭りは夜に突入し、俺達は存分に騒いだ。




◆◇◆◇◆◇




 表彰が行われる中、観客席で会話をする老人と青年がいた。


「……ジン・ミクモ。伝説を超える者か。どう思いますか?」


 青年が老人に向かって尋ねる。


「そうですな。周りの皆は恐怖の象徴が出来上がったと不安がっているようですが、根は優しいのでは無いですかな。少なくとも私にはそう見えますな」


 老人の答えに青年は驚いたようで、目を大きく開いた。


「優しい?あの見た目で?」

「ええ。見た目はそうですが……気が張っていないとでも言うんでしょうな。全体的に丸さがある。きっと人を殺した経験も無い。戦を知らぬ若者ですな。いざとなれば私は勿論。貴方の方が残酷になれるでしょう」

「貴方が言うならそうなんでしょうが……とても信じられない」


 青年は口元に軽く握った拳を当て、吟味するようにジンを眺める。

 見えるのは禍々しく、恐ろしい鎧姿。とても優しさを感じられない。

 だが、老人には違うように見えた。

 人を求め、優しく接する姿。そんな姿が幻視出来たのだ。


「私は、姫様に会わせても問題無いと思いますな」

「……会わせる必要はあるのでしょうか?やはり危険だと思うのですが」


 心配した様子で老人に返答する青年。

 しかし、老人は首を振った。


「何度も言うようですがあの者には優しさを感じる。それに、小さな事では姫に通じない事は理解出来ているんでしょう?あれくらいの刺激を用意せねば」

「……そうですね」


 渋々と言った様子で青年は頷いた。


「では、決定ですな。ジン・ミクモ。あの者を我がフィローナ王国に招き、姫様の感情に刺激を与えてもらいましょう」


 そう告げると、老人は観客席から立ち上がった。

 それに釣られて青年も立ち上がる。


「姫様は……笑ってくださるでしょうか」

「さあ、それは分かりませんな。笑顔で無くても、何かを取り戻して頂ける事を祈るばかりです」


 二人は自らが使える国の姫を思いながら、その場を後にした。




◆◇◆◇◆◇




「クソッ!!クソッ!!クソッ!!」


 町の路地裏、四人の女に囲まれ、子供のように地団駄を踏む男がいた。


「ラ、ランバート様……お気を確かに……」


 女の一人がランバートに手を伸ばす。だが、彼はそれを払った。

 肩で息をしながら赤く腫れた目を女達に向ける。


「煩い!!どうせ!!どうせお前たちも僕を馬鹿にしているんだろ!!」


 ランバートは予選の出来事によって心を荒らしていた。

 王子であり勇者の彼はとてもプライドが高かったのだ。だが、それは衆人の目中で砕かれた。悔しくて悔しくて仕方が無かったのだ。


「違います。私はお慕いして申し上げております」

「私もです。決して馬鹿になどしておりません」


「煩い!!煩い!!どうせいつも心では笑ってるんだろ!!知ってるんだよ!!お前等が影で話してた内容を!!」


 ランバートは知っていた。四人はランバート本人では無く、彼の価値に恋をしていると。

 恐ろしく速い移動は瞬間移動に近い。

 突然側に現れると、四人が陰口を叩いている所だったのだ。

 言い訳によって誤魔化されたが、その時からランバートは疑いを心に抱いていた。

 しかし、自分を悪く言うはずが無いと思った彼は、その感情を隅に追いやり続けた。

 だが、限界が来た。


「もう沢山だ!!何処かに行ってしまえ!!お前らの顔なんて見たくないんだ!!」


 腕を振り回し、女達を遠ざける。

 彼女達は始めこそ説得しようとしていたが、やがて全員諦めるように溜め息を吐いて何処かに消えた。


「どうせ……どうせ僕なんて……」


 たった一人。祭りで賑わう町の路地で縮こまって泣きじゃくるランバート。

 そこに一人の女が現れた。

 フードを被り、左目を眼帯で隠した女だ。


「ねえ。三雲仁……いえ、ジン・ミクモね。あいつが憎い?」

「……憎かったらなんだって言うんだ」


 無視しても良かったのだが、孤独感を紛らせる為にランバートは返答をした。


「私ね。あいつが憎いの。私の左目を奪ったあいつが」


 眼帯をめくり上げてランバートに見せつける。瞼を縦に真っ直ぐ裂くように傷が入っており、黒い瞳は機能を失っていた。


「私は復讐がしたい。まあ、自分でも逆恨みだって理解しているんだけどね」


 女は眼帯を直し、手を差し出した。


「一緒に来ない?私はあいつを困らせるせてやるつもり。貴方の力を貸して欲しいの」

「勇者と言っても出来る事は限られてる。たった二人で何が出来る……」


 ランバートはそっぽを向き、溜め息を吐いた。

 だが、女はクスクスと笑い。否定した。


「違うわよ。二人じゃない。既にある大きな集団と関係を結んでいるわ」

「どんな集団だ?」

「教えたら仲間になってくれる?」

「それなりに有名ならいいだろう」

「そう。ならきっとご希望に添えるはずよ」


 ランパートの顔を包むように手を置き、首を回して目を合わせる。

 女の片方だけの瞳には虚ろな姿のランバートが写り込んでいる。

 だが、その様子は女の次の言葉によって一変する。


「カルカラが率いる教会よ」

「なっ!!」


 ランバートは目と口を開き、驚愕を露わにした。


「うふふ。驚いた?何せ、神へと昇格した者が率いる教会だものね」

「どうしてそんな奴が……」

「ジン・ミクモが凄い勢いで信者を増やしているから、このままでは神になる可能性がある。そうなれば、布教地域の近いカルカラは少なくない数の信者を持っていかれる事が予想できるの」

「だから先に潰すのか……」

「ええ。そうよ」


 口を三日月形に裂き、女はランバートから離れた。そしてもう一度手をのばす。


「私と来ない?」


 女の背景には、沈み始めた太陽が輝いていた。

 孤独を感じるランバートに取って、女は希望の様に映った。

 女の手を取り、立ち上がって口を開く。


「喜んで」


 女はクスクスと笑ってフードを取った。真っ黒な髪を空気に晒し、よく見える様になった顔でランバートに自己紹介をする。


「私の名前はアカネ・サカガミ。称号は期待してくれていいわよ」


 太陽が落ち、暗くなっていく路地裏。その中で光を放つ、三つの瞳があった。獲物を殺さんとする者達の、獰猛な瞳が。

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