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空っぽ鎧の黒騎士様!!  作者: ken
三章 鬼ノ国編
55/59

54話 武闘大会本選 下

 ルインは易々と決勝まで勝ち進んだ。

 そして決まった決勝の組み合わせ。


 俺vsルイン


 どっちが勝っても賞金はもらえるが、どうせなら優勝したいという俺とルインの意見で戦う事にした。


「さあ!!とうとう決勝となりました!!優勝を掴むのは【空の黒騎士】か!?それとも【人形支配の魔女】か!?心踊る試合を篤とご覧あれ!!」


 今更だけど京子はアイドルキャラが剥がれてきていないだろうか。

 何だか熱が入りすぎている気がする。

 『キラッ☆』とか言わなくていいのかな?


 ちょっと見てみた。

 立ち上がってマイク片手に握り拳で叫ぶ姿勢。

 アイ……ドル?

 俺には熱血司会者に見えるな。

 あっ。こっち見た。サムズアップされたよ。

 絶対アイドルキャラ忘れてるな。


 マイクを持っている振りをして歌っている真似をしてみる。

 ちょっとの間頭に疑問符でも浮かびそうな顔をした後、自分の姿に気付いたのか、焦りながらを手をほどいてチョコンと座った。


「さあ、今から試合を始めちゃうよー!!」


 急に変わりすぎだろ。遅いよ。そして雰囲気にびっくりするくらい合わないな。

 ほら、観客の皆がどよめいてるよ。止めとけ。


 俺は首を振って止めるようにアピールした。

 それに京子は苦笑いを浮かべ、項垂れるように前のめりになった。

 そして再度握りこぶしを作り、『自棄だ!!』とでも言わんばかりに真っ赤な顔で立ち上がって叫んだ。


「さあ!!盛り上がった所で試合を始めましょうかー!!決勝戦開始!!」


 京子によって、どよめいていた観客が火薬に火を放たれたように爆発的な熱を持ち、声を張り上げて俺達の応援が始まった。

 そして代わりに京子はちょっと燃え尽き気味になった。

 一度冷静にさせるべきじゃなかったか。お疲れ様です。


「行くっすよ!!」


 京子を見ていると、いつの間にかルインがすぐ近くにまで迫ってきていた。

 この大会では、魔法で作り出した物であっても木製以外の武器は禁止。

 ルインがいつも使うゴーレムの手は禁止扱いなので、本体は弱っているはずだ。

 それなのにルインが自らやって来る。

 何かあると踏んだ俺は後ろに大きく飛び退いた。

 すると、さっきまで俺がいた場所に五メートルの腕型ゴーレムの拳が湧き出てきた。

 恐らくルインは俺の足元近くに魔法陣を作り出し、それを割砕いたのだ。

 あのまま同じ場所にいれば危なかったかもしれない。

 近づく時は注意せねば。


「まだまだっす!!」


 そう言うとしゃがみこみ、自身の周りを囲う様に単体の魔法陣を大量に出した。

 大砲……では無いと思う。

 ルインは俺も含めた村の奴等と良く模擬戦をしているが、俺と戦う時に良く出してくるものがある。恐らく今回もそれだ。

 地面に足先を付けつつ低い姿勢で回し蹴りをして一回転。魔法陣を全て割る。


「行くっす!!チビゴーレム達!!」


 出てきたのは洞窟で散々壊し、昨日スザクの家でも壊したゴーレム達。

 チビとか言っても一メートルはある。

 それが十体。

 こいつらの攻撃などほぼ俺に効かないが、数で纏わり付いてきて面倒なのだ。


「もっとあるっすよ!!」


 チビゴーレムをさらにドンドンと増やしていくルイン。

 いつもなら、これで俺は時間を喰わされてしまっていた。そう、いつもなら。


「今回は違うぞ!!」


 俺は背中から黒い腕を六本生やした。

 溶解効果のあり、関節の無い腕。

 以前とは違った[邪気]を使用した戦いだ。


 此方に飛びかかるゴーレムを、六本の腕を鞭の様に扱う事で溶かし切る。

 前後左右から襲ってくるゴーレムをじゃんじゃんバラバラにして行き、全て壊した所で気付く。


 囮に気を向けすぎたと。


 ゴーレムはいつも纏わり付かせての時間稼ぎ。

 今回は手早く壊せると思って調子に乗っていた。

 ルインは七重の魔法陣を舞台全体に作り出していたのだ。


「さあ、行くっすよ!!」


 七重の魔法陣。

 単独で扱える者が、一国に一人いるかいないかと言う代物。


 それが舞台全体に来る!!


 ルインが足を振り上げた時、俺は[剛力]を[覚醒]と[邪気]にって引き上げた防御力の底上げした。


 少女の小さな足が舞台に降ろされる。

 すると、舞台全体に用意された魔法陣が割り砕けた。

 砕けた光の欠片が幻想的な雰囲気を醸し出したのはほんの僅かな間。

 舞台上が人形で溢れかえった。

 赤ん坊、少年、少女、老人、老婆。

 一目見ただけでは本物と見間違えそうな、様々な造形をした老若男女の人形達が俺を一斉に見据える。

 手にはそれぞれの武器を持っており、赤ん坊の人形でさえナイフを握りしめている。


「まさか、ここでやるのか……」


 俺は既に何度かこの技を受けた事がある。故にこの狭い空間では受けたくないと強く思う。


 ルインは良い笑顔をした。


「全員突撃」


 それだけ言って指を鳴らすと、人形が全員遅い掛かってきた。


 足先を赤ん坊がナイフで刺す。

 膝を幼児が金槌で叩く。

 腹を老人が刀で切りつける。

 背中を少女が槍で突く。

 腕を少年がナックルで殴る。

 頭を青年が棍棒で打つ。

 その他もろもろ……。


「ちょっ!!ぐはっ!!やめて!!うがっ!!ぬぐっ!!おうっ!!うあああああああああ!!」


 数分はたっただろうか。

 不満は色々あるがとりあえず言いたい事がある。


「何時になったら終わるんだよ!!」


 全く終わる気配がない。

 鎧に傷は入って無いけど痛覚はあるんだよ!!

 それに、赤ん坊がナイフだの、幼児が金槌だの、ホラー映画みたいで怖いんだよ。


 そして、色々不満が募って行く内に俺は気付いた。

 反撃しようぜ。俺。

 急にバカらしくなって泣きたくなった。


 腕を振り回して人形を一掃する。すると、その奥にいた弓を持った奴等から一斉掃射を喰らった。

 痛いけど無視だ。

 取り敢えず上空に逃げようと黒い翼で空に向かった。

 だが、足を人形が掴んで付いて来た。そしてその人形に更に人形が。さらにまたその人形に……と続いてかなりの重量。

 オオバトとの一体化に[邪気]を使えば自身の重力をコントロール出来るが、他はコントロール出来無い。

 俺は舞台に引きずり降ろされ、またタコ殴りを食らった。

 しかも防御力が落ちてるからさっきより痛い。

 なので一体化を人狼に変えて、初めの防御力に戻した。


 逃げる事は出きそうにない。

 なら、この人形を全て潰していってやる。


 そう決めた俺はそこいらの人形を潰して回った……のだが。


「絶対におかしい……」


 潰した数を考えれば舞台上の人形は全て潰した自信がある。

 だが、人形の数が減っている様に見えない。

 そして壊した人形のパーツが見当たらない。


 考えたくなかったが、恐らくこの人形は壊しても治る。

 ただ、俺がいる場でその治っているところは見ていない。

 そして、ルイン自身が仕掛けて来ない事も考えると、恐らくルインがどこかで治している。

 俺がいない場所でしか人形が自動再生しないという可能性もあるが、それは嫌がらせにしかなっていないのでまず無いだろう。


 ルインを倒すしか無い。

 だが、人形の溢れる中を探すのはかなりの苦労だろう。

 思わず溜め息が出た。


 舞台上を数分走った。

 そして俺はルインを見つける事に成功した。


「やっと……やっと見つけたぞ!!」

「あらら~。見つかっちゃったっすね」


 ルインは舞台の角ギリギリで座って人形を治していた。


「痛かったんだけど!?」


 嫌味のつもりで言ってみた。

 しかし、ルインは特に気にしなかった。むしろ呆れ顔をしてきた。


「普通だったら長い間痛がる間も無く、とっくに死んでるっすよ。傷すら無いってどういう事っすか」


 酷いな!!俺の苦痛をなんだと思ってやがる!!

 威力としては防御力を高めたお蔭もあって大した事は無かった。

 しかし、それが連続で体のあちこちにくるのだ。

 例えるなら体中を大量の針でチクチク刺されるような感じだろうか。


「もう良いよ!!落としてやる!!」


 苛立っていた俺は、面倒になってルインに突っ込んで行った。

 しかしルインは逃げず、座って床に広がっていたスカートを少し上げた。


「なっ!?」

「落ちるのはどっちっすかね?」


 スカートで隠されていた床にあったのは、隠すために小さくしたであろう四重の魔法陣だった。

 そして、ルインはそれを軽く叩くようにして割る事で発動した。


 魔法陣と同様にサイズの小さくなった腕が出てくる。そして、それは俺を舞台の外へ弾きだそうと握りこぶしを振るってきた。

 後ろに下がって躱そうにも人形が壁になってすぐには下がれない。

 前と左右は腕に弾かれて落ちるだけ。

 なら……上だ!!


 俺は思いっきり上に跳んだ。

 一度は人狼の一体化を解いてから動いたので捕まったが、今度は人狼の[金剛]を使っている。

 跳び上がるだけならこちらのほうが速く、今度は足を掴まれなかった。

 だが、これは既に何度か試した。

 この場合は矢と人形が跳んできて落とされる。それも今回は場外に落とされるだろう。

 しかし、今回はそれでも良い。もう俺は落ちる事を決意している。

 だが、落ちて負ける気は無い。

 俺は勝って落ちてやる!!


 矢が横っ腹や頭に当たり軌道がズレ、他の人形に投げられた人形が次々に俺の足に絡みつく。

 このまま落ちれば俺はルインの目の前で場外落ちだ。

 重力の力でドンドンと地面に落下していく。

 そこで俺は犬耳と尻尾を仕舞い込み、背中から六本の腕を生やした。


 もうこの距離なら届く!!


 この大会では、魔法で作られた木製以外の武器は禁止されている。

 そして、ルイン自身は魔法によるゴーレム化が無ければ、普通の女の子と大差は無い。

 それが今、舞台の端にいる。


 普通の女の子が人狼を絞め殺した力に押されたらどうなるか。

 答えは簡単である。


 ルインは黒い腕により、軽々と場外に叩きつけられた。


 そして、俺はそれに一秒と間をおかずに地面に激突した。


「痛たた……」

「げほっ!!げほっ!!」


 俺がすぐ横でルインが咽ている。恐らく先程強く叩きつけすぎたのだろう。


「……こん、なの……試合、じゃ無かったら……」


 苦しいよりも悔しさが勝っているのか、ルインが必死に話し掛けてきた。

 背中を叩いて楽にしてやりながら返事をする。


「それを言うなら、俺だってとっくに人形達から逃げて体勢を立て直してたさ」


 試合じゃなかったら、と言うなら俺だってそうなのだ。

 少なくとも数分も合計十分近くも殴られはしなかったと思う。


「う~!!悔しいっす!!もう一回!!もう一回するっすよ!!」


 駄々をこねるようにせがんでくるルイン。だがもう嫌だ。


「逃げ場の無い所であんなのと戦ってたまるか!!」

「そんな~。お願いっすよ~」


 涙目で頼んでくるが嫌なものは嫌なのだ。

 俺は顔を逸らしてやった。


「優勝者が決定しました!!優勝はジン・ミクモ!!ジン・ミクモです!!」


 京子が試合の結果を叫び、観客から大きな声が沸き起こった。

 これにて武闘大会終了である。

 やっと……大会が終わりました……。

 もっとあっさり終わらせる予定だったのに、六話もかかるとは思いませんでした……。

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