42話 チームジンvsヘルベルクの四神 上
俺達が城で出された朝ごはんを食べ終わると、世話役が俺たちに話し掛けて来た。
「我が軍が今から模擬戦をするのですが、それに付き合って欲しいと軍の方から声が掛かっております。どういたしますか?」
「やるっす!!」
ルイン、即答である。
「ふむ。興味がある。私も行きたい」
「見るだけならいいわよ」
セキトは飛び跳ねた。たぶん行きたいんだろう。
皆行くのか。それなら俺も行こう。
「じゃあ俺も行く事にするよ」
軽く決めたこのお誘いだったが、その場に行って思った。兵士からの目が怖い。
よく考えれば、初っ端から[畏敬]を使ってるから警戒心上がってるよね。
「近衛隊長がこの中にいます。まずはお会いして下さい」
言われた通りに建物に入る。すると真っ赤な瞳と髪が印象な青年が目に入った。かなりのイケメンである。
その青年は俺達に気付くと、こちらに歩いて来た。
「私の名前はスザクだ。ここに来という事はお誘いにのって頂けたと思っていいのか?」
並んでみると身長は俺より少し低い。だが俺自体、まあ鎧がかなり大きいのでこのスザクという奴もかなり大きい方だと思う。
「フィア以外は模擬戦をするつもりだ」
「そうか。名高い【無限多重の魔女】と手合わせ出来ないのは残念だが、四人も相手してもらえる事は嬉しい。相手は誰でもいいか?」
誰って言われても誰がいるのか知らない。なので頷いておく。
「良いぞ」
「そうか。ではこちらで用意する。少し待っていてくれ」
そう言ってスザクは出て行った。
そして十数分後。用意が出来たと俺達は連れだされた。
ついた場所は直径五十メートル程の円形状に壁が作られた場所だった。足場はガチガチに固められた土。たまに血とか付いている。
「ここで戦って頂く。相手は全員が近衛隊長。我等四天王だ。私の右からセイリュウ、ゲンブ、ビャッコだ。四対四で頼む。
そう言って俺らの前に並ぶ男女が四人。初日にベニバナの後ろにいた人達だったような気がする。
なんだろう。全員から威圧感を感じる。接し辛そうだ。
まずは一番左、スザク。先程の青年である。その手には長い太刀が握られている。
次のスザクの右、セイリュウ。たしか昨日綺麗な舞を踊っていた女性。両手に短剣を握っている。
更にその右、ゲンブ。全身傷だらけで筋肉盛々な中年。大きな盾を持っている。
最後にビャッコ。真っ白な髪をオールバックにして後ろに長々と垂らしている人だ。
因みに持っている武器は全て木製だ。模擬戦だしね。
四神の名前を持った四天王か。襲名制なのかな?。まあ四天王とか名乗るくらいだ。それぞれ凄そうなのも納得できる。けど、それを俺らにぶつけるってどうなの?いや、[畏敬]使ったからなのかもしれないけどさ。
とりあえずそっちはもういい。今更変えてとか言うのもちょっと悪い気がする。それよりだ。
「四天王の共闘だー!!」
「そんな奴等やっちまって下さーい!!」
「我等の力を見せつけて下さーい!!」
「スザク様素敵ー!!」
「セイリュウ様ー!!こっち向いてー!!」
ガヤが煩い。
この闘技場の様な場所は周りに観客席が用意されている。壁の上から席は始まり、奥に行くほどせり上がって行くという設計だ。
因みに満席。席はあまり多く無いが兵士達で満たされている。立っているものまで出ている程だ。
ただの模擬戦をここまで盛り上げるか。
そして、大きく開けたスペース。特等席っぽい所にベニバナと彼女にいつも付いている老人。それにフィアと京子がいた。
ベニバナは偉くぬいぐるみが気に入ったのか片手に持ったまま俺に手を振って来た。なので振り返す。
すると正面から何故か殺気を感じた。振り向いて見ればスザクが此方を睨んでいる。怖い。
あれか。王から手を振ってもらえるなんて下で働く者として羨ましい。みたいなものだろうか?
周りの三人は苦笑い気味だが。
闘技場に兵士が一人入って来て俺達に話しかける。
「武器は何を用意しましょう。こちらで稽古用の物を持ってきますが」
武器か。俺達は今まで武器は無しで戦って来たからな。慣れない物で戦うより無い方がいい気がする。
けれど、一応欲しい奴がいるかもしれないので訊いてみた。すると皆首を横に振ったので断った。
「無手か。手抜きなどしなくてもいいんだぞ?」
鋭い目つきでスザクが言ってくる。
「マジっすか!!全力でいいんすか!!」
ルインが反応した。こいつは何をする気だ。
「おい、無茶するなよ?」
「分かってるっす。冗談っすよ。大きなクレーターとか作ったりしないっす。たぶん」
「……そうか」
信用しきれないな。まあルインの全力は見た事が無いが。
「俺達の戦い方はいつもこれだ」
「分かった。殺し合いでは無いが、手抜きで勝っても嬉しくないからな。力は出してくれよ」
「出せる所まではやってやるさ」
手の内を全て晒すのは避けたいので、ある程度までしか出来ない。ここで晒せば何かあった時に困りそうだしね。
話している内に、先程俺達に話しかけていた兵士がベニバナたちとは真反対。目立つ台の上に立っていた。恐らく審判だ。
その兵士が笛を鳴らすと辺りが一気に静かになった。
「これより四天王対国賓方による模擬戦を行う!!決着はどちらか全員の戦意喪失、または戦える状態では無くなった場合とする!!お互いを磨き合う為、敬意を払って臨むように!!それでは用意!!」
俺を含め、闘技場内の八人が戦闘体勢を取る。
「──初め!!」
掛け声によって模擬戦が始まり、俺達はそれぞれの敵に向かって駆け出した。
◇◆◇◆◇◆
セキトは目の前の白髪の老人、ビャッコに向かって全力で駆けた。目付きは真剣そのもの。両の拳はきつく握りしめている。
相手が持つ武器は弓。セキトは有利になるべく接近戦を狙ったのだ。
そんなセキトに矢が一本飛んでくる。走り方は矢を避けるために姿勢は低い。軽く体を横に捻る程度で右下を通り過ぎて行った。そんな時、ビャッコの声が聞こえた。
「甘い」
そう聞こえたと同時、目の前からビャッコが消えた。
次に左肩に衝撃が走り、左腕を地に擦り付ける様な形で走る勢いのまま転んだ。
そして、滑る勢いが止む前にセキトは何か不味いと感じ、回避を取る事にした。
木製の為、左肩の傷は軽く張れる程度だ。だが、動かせば痛みが走るのでセキトは右腕で地を叩いて転がった。するとさっきまでいた場所に何本もの矢が上空から降り注いだ。
「ほう。避けたか。良い感をしている」
声の方を見ると、ビャッコ空中から片足を地面に付く所だった。
そこでセキトは気付いた。ビャッコは高く跳ねたのだと。
矢を避ける為に姿勢を低くしていた為、視界は普段より低い。そして先程は矢を避けた時そちらに目がいった。その時に白髪はセキトの死角である左上に大きく跳ね、空中で矢を放ったのだ。
だが、それにしても跳躍時間が長すぎる。つまり、そういった能力を所持している可能性が高い。
「ホレホレ。まだまだ行くぞ」
ビャッコはそう言うと矢を更に放ってきた。まずは何とか座る体勢になったセキトの首元を狙い打つ。それを横に転がる事で躱すが、その先にも矢が向かってきており、それに腹を撃たれる。
強烈な嘔吐感を押さえ込みながら勢いで後ろに転がって尻もちを付く。すると次は足に矢が向かってきた。
ビャッコに勝つためには近づかなければならない。だが、相手は跳躍を持っている。ただでさえ近づく事が難しいのに、足が潰されてはどうしようも無くなる。
回避を考えたが、先程のように先周りで矢を放たれている可能性を考える。目だけを素早く動かして確認すれば、時間差で左右に矢が飛んでいた。
内心で舌打ちをして、両手を矢を弾く為に前に突き出す。そして[剛力]を発動した。これで上手く弾くことが出来ればダメージはほぼ無い。ただ、全て弾ければだが。
先程から白髪は一本づつ矢を放っていない。全て二本以上纏めて放っているのだ。今回は足を五本の矢で狙ってきている。
尻もちさえついていなければ足で蹴り飛ばせば終わったのだが、セキトはやむなく手で対応した。
一本目を右手で上へ弾き、二本目を左手で右に弾く、三本は返す右手で下へ弾く。これが限界だった。
残りの二本がセキトの左足を叩きつける。[剛力]を使っていても、足から力が殆ど出ていない以上痛みが走る。
セキトは足に走る痛みを声を喉で詰まらせるようにして耐えた。
その最中も、ビャッコを視界から外さない様に見続ける。だが、白髪は軽く鼻で笑った。
「見るだけで無く、動け」
ビャッコはそう言うとセキトの正面数メートルに一歩で跳躍した。
「先程の距離でその痛み。この距離なら…………まあ、気絶する前に降参を進める」
セキトは唇を噛み、勢いを付けて前に体を傾け、右足と両手を付いた。そしてそのまま[剛力]を使って力まかせに飛びかかった。
「そういうのは嫌いじゃ無い」
白髪はそう言うと、弓を空中のセキトに向けた。そして矢筒から五本の矢を取り出して素早く引く。
セキトは白髪に後少しで手が届くという所で右肩、左腕、右手、腹、右足を撃たれたて地に背中から落とされた。
体を走る激痛と嘔吐感襲われるが、必死に堪えた。そして[剛力]を解いて[再生]を使い、瞬時に体を癒やして飛びかかる。
「ただの馬鹿では無かったか。だが、惜しかったぞ」
ビャッコはそう言って後方に向かって跳躍。地に足を付く間に弓を二回引き、合計十本セキトに放った。
[剛力]を使っていない為、先程以上の痛みでセキトは立てなくなった。
[再生]も魔力の消費が激しいのでもう使えない。
「終わったな」
白髪がそう言うと、審判がセキトの負けを宣言した。
セキトはそれに講義する事さえ出来ず、力を抜いたただ空を眺めた。
セキトvsビャッコ……セキトの敗北




