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空っぽ鎧の黒騎士様!!  作者: ken
三章 鬼ノ国編
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34話 鬼の説明

 村では最初の計画で決めていた数と、エルフが増えた分の小屋が完成した。これで皆小屋で眠れるようになった。

 家に関しての次の目標はもっと丈夫な家を作ることだ。今度どこかの国に行って技術を配下に教えてもらいたいと思っている。

 寝場所を確保した現在。次に、皆には荒れた森の整備をしてもらっている。体を大きく動かす自由に動かす場所として使う予定なのだ。ついでに木材も確保である。


 うまく作業が進む中、相変わらずゆったりとさせて頂いている俺は村の周りを彷徨いていた。暇なので何か無いかと散歩中である。

 そんな時、森の方向何か光ってるな~と思って近づけば、魔法陣の光だった。

 どうやらクロナとエリーナが襲撃を受けていたようなのだ。とりあえず敵を[畏怖]で恐慌状態にして気絶させた。

 二人は足を中心に傷ついていたので、敵は恐らく殺すつもりは無かったようだが大事な友達がボロボロである。可哀想に。


 俺はすぐに治療してやった。もう慣れたもので、治療は手早く終わった。


 そして、襲撃者に気を回してみた。


「……うわぁ。骨見えてる上に粉々。血もドバドバと……」


 太ももを大きく抉られ、悲惨な事になっている者がいた。力を入れたら千切れてしまいそうで、なんとも同情を誘った。


「どうだジン!!私の称号【突き進む者】の能力を使った手刀だ!!凄いだろう?」


 無邪気な笑顔で尻尾を振るクロナ。その笑顔が少し怖く感じるのはきっと気のせいじゃ無い。


「その、褒めてくれてもいいんだぞ?主として」


 膝を曲げて座り、少し顔を赤くしながらズイッと頭を俺に寄せる。尻尾がブンブン振られている。まるで『褒めて褒めて!!』と飼い主によっていく犬のようである。


 いや、犬人族だけどさ。主従だけどさ。褒め方本当にそれでいいの?前にやっといて何だけど、結構無茶だと思ったよ?


 考えていると、サラサラモフモフの耳がピコンピコンと動いた。


 …………まあ、本人がいいならいいか。耳触れるし。サラサラだし。モフモフだし。耳触れるし。


 スーッと震わせながらも手を伸ばす。その手の先、そこに待つのは俺の大好きなあの感触。さあ、いざ行かん!!


 モフッ。モフモフモフモフ。


 うむ。獣耳グッジョブ!!


 先ずは頭を撫でつつも耳に軽く当てる。次に両手で耳の付け根のフワフワ部分を中心に撫でる。そして、遂には後ろから前へと耳をペタンと折らせながら全体を味わう。


 あ~。異世界来て良かった~。


 素晴らしい感触である。因みに髪も含めて。石鹸などは無く、川での水浴びしか出来ないはずなのだがなかなかの触り心地であった。人間の頃の俺の髪とはまるで違う物質のようだ。


「ふん。うぅん」


 ふと、そんな艶かしい声が響き。モフモフの世界から現実に引き戻された。そして気付く。

 力が抜けきり女の子座りになり、両手を太ももに挟んだ状態。顔は真赤でふやけてしまい、目は潤ませながらトロンと垂らし、半開きの口から涎を垂らすクロナが目の前にいる事に。


「ちょっ!?どうしたクロナ!!」

「……ジ、ン。ジン、がぁ……」


 クロナはまともに話せていなかった。まるでお酒に酔っているようである。


「しっかりしろ!!何があった!!」

「……いや、やったのジンじゃないですの」

「……え?」


 思わずハテナ顔である。鎧なので目だけで表現出来ているか疑問ではあるが。


「……何処に意識が飛んでるんですのよ。ジンが撫でるのが上手過ぎてクロナがここまでなったんじゃないですの」

「おお。そんな事が……」


 なんと、耳に夢中過ぎて気付かなかった。俺の撫でテクは高レベルだったのか。今まで動物に逃げられて開花しなかった才能が、今花開いた!!両親へ。素敵な才能をありがとう。マジで。


「やっべ。感動で泣きそう」

「え?何処で感動を誘う所が?」


 今度はエリーナがハテナ顔である。


「両親に産んでくれてありがとうって感動してたんだ」

「……そう、なんですの?にしても何処で両親に繋がって……」

「それはもう良いじゃん。エリーナも撫でてやるよ。ご褒美だぞ。ご褒美。ほ~ら頭出してご覧!!」

「え?あ。はい?」


 勢い任せにはいと言わせ、言質を取った。さあ、行くぜ!!第二のモフモフの世界へ!!




 クロナを右手で、エリーナを左手で撫で始めてから一分後。


「ふぅ……あふん!!」


 またもや響く艶かしい声。

 四つん這いと正座の中間のような微妙な姿勢。頬を赤く染め上げ、目をウットリと閉じている。必死に引き結んだ口からは一筋の煌めく液体が垂れている。

 エリーナは第二のクロナ状態である。


 それはそれで見ていて良いものはある。だがしかーーーし!!俺は今、もう一つの素晴らしきものを手で触れている。それはそう!!獣耳である!!


「いや~。やっぱ良いよな。うん」


 ポーッとしつつも手は止めない。付け根から先まで丁寧に触っていく。すると二人の体が時々ビクッとする。恐らく気持ちいのだろう。これは素晴らしいギブアンドテイクである。


 夢見ごこちでいた俺だが、更にあることに気づいた。それは──


「尻尾だと!?」


 そう。尻尾である。視界に忙しなく動く二本の尻尾が入った。毛が長くて大きく見えるクロナの尻尾。それとは逆に短くてほっそりとしたエリーナの尻尾。


 ああ。あれにはどんな感触が……。


 考えるともう止められなかった。頭から手を離し、二人の尻尾へと手を伸ばす。そして、[覚醒]を使って身体能力を上げる事により、動き回る尻尾に不可を与えずに付け根から先まで綺麗に撫で上げる。


「ああ。幸せ……」


 俺の中の幸せゲージがみるみる回復である。むしろ限界を超えたかもしれない。


 ただ、そんな俺とは違って二人は叫びを喉で詰まらせたような声を上げると、飛び上がって走りだした。


「む、むむ、村にいっていますわ!!」」

「わ、私もそうする!!」


 割かしマジの全力ダッシュである。どうしたお二人よ。


 さて、幸せな時間であった。そう思いつつ二人を追いかけて後ろを向いた視線を戻す。すると端に何か見えた。首を回す勢いのままそちらに目をやる。


「あー。忘れてた」


 馬鹿面、重傷、失禁と、それぞれの様子で気絶した三人がいた。




◆◇◆◇◆◇




 襲撃者の内、酷い怪我をした者は治療した。その後、蔓で縛って小屋に連れて行った。


「……あのさ。どうしたの?」


 俺がそう問いかけるのは先程の二人。クロナとエリーナである。


「いえ、ちょっと冷静になりたかったんですの」

「ああ。冷静さは大事だ。だからこれは必要だ」

「そうか……」


 『冷静』を強調する二人は、川に顔面でも突っ込んだのか首から上がずぶ濡れである。ホノサウルスの皮で出来たランニングに水が落ち、材質のお蔭で水をはじいて水滴だらけである。短パンにも少し被害が出ているが、ほとんど濡れていない。

 今の所、基本服は一人一着しか無いので水を弾く素材で良かっただろう。


 ああ。モフモフが水でぺったりしている……ちょっぴり残念。


 まあそれはともかくと、捕まえた三人を改めて見る。男二人に女一人。全員俺の蔓で捕まえている。男は俺が服を脱がせ、下半身の下着一枚だけ。女はそんな格好をさせるわけにはいかないと思ったが、何分下が湿ってしまっているので同性である二人に脱がさせ、即席の正方形のホノサウルスの皮で覆った状態である。

 そして、服を取って見つけた大きな特徴がある。それはこの三人が来た場所を表していた。


「これが鬼か……」


 三人それぞれが角を生やしていた。竜夫婦の子供と少しにている気がするが、この森の近くには鬼の国があるらしいので恐らくそこだろう。因みに、近くの国の情報は、洞窟での戦闘後に教えてもらった新しい情報である。まあ、戦った相手を知りたかったのだ。


「さて……まあ起こしてみるか」


 とりあえず馬鹿面の青年の前に立つ。そして今回初使用の[目覚め]を使ってみる。

 目覚めのイメージを固める。からの、頭頂部に拳骨である。


 耳元でいきなり大きな音で目覚ましが鳴り響いた人のように目を急にかっ開く。


「ん?…………えっ?」


 現状確認からの事象確認が終了。驚いた顔からすぐに馬鹿面に戻った。


「おはよう」


 時間が止まったような青年に手を上げて挨拶してやった。すると彼は慌てたように言った。


「おはようございます!!」

「おお。まさか返されるとは思わなかった。『ここは何処?私は誰?』とか言い出すかと思ってた」

「いや~。俺ら負けたんでしょ?今更知らなんて切れないだろうな~と思いまして」


 捕まってるように見えない笑顔で青年はそう言った。


「そうか。じゃあさ。どうして二人を襲ったのか教えてくれない?」


 そう言って俺は青年の頭を鷲掴みにした。


「それはですね──」


 この青年。ぺらぺらと情報を口にした。

 どうやら最大の狙いは俺だったらしい。どうにかして引き込めないかと考えたらしい。交渉でどうにかしようと考えたらしいが、こいつらが掴んだ情報によれば俺は普段極悪非道なやつだが、配下にとても甘いやつになっており、人質を取って交渉に引き釣りだそうとしたらしい。「その証拠に致命傷は無かったでしょう。後で薬で治すつもりだったんですよ」とも言ってきた。クロナとエリーナが頷いていたので、どうやら本当に俺だけが目当てなのかもしれない。


「一つ。いいか?」

「何ですか?」


 首を傾げて尋ねる青年。


「俺は極悪非道じゃないから震えるなくていいぞ?」

「やっぱバレてました?」


 バレるも何も、この青年上半身は笑顔と緩やかな息だが、下半身は生まれたての子鹿の如くプルップルである。差が激しすぎる。


「すぐ分かるに決まってんだろ」

「ここまで素直に喋ったんですから、拷問なんてしませんよね?もう吐くことないですよ。あっ。拷問はしないけど処刑はするとかもやめてくださいよ!!まだ人生楽しみたいんですよ!!本当にお願いします!!」

「言われなくてもしないって」

「じゃあこの手は何ですか!!怖い!!凄く怖いんですよ!!」


 この青年が情報を離す間。俺はずっと頭を鷲掴みにしていた。だが、脅すためにやっていた訳ではない。[理解]で青年を調べていたのだ。

 [理解]は対象の情報を手に入れられるが、思考や心まではさすがに調べられない。だが、心拍数や発汗量、体温などの身体情報は調べられる。俺はそういった体の状態を調べ続けていたのだ。

 それは何の為かと言えば、嘘を見破る為である。人間は嘘をつくとき、どうしても心拍数が上がったりするものだ。[理解]で得られる情報は本当に細かく、多い。違和感があればすぐに気付ける。それで調べた結果。嘘は無いと分かった。

 暇だからと地味に練習していて良かった。


「嘘を調べてたんだよ。お前が言ったことは全部本当だな」

「え?さっきので分かるんですか?称号か何かですか?」

「ま、そこは秘密だ。それより、言いたい事がある」


 顔を一気に近づける。すると青年は冷や汗を流した。


「な、なんですか?」

「交渉出てもいいぞ?」

「……へ?」


 驚いたのか、青年は口を半開き状態にしている。


「いや、だから出ても良いぞって」

「……どうして?」

「ん。そりゃあな~」


 そう言って俺はちょっぴり【畏敬】を使用。震える青年を見ながら続ける。


「こっちは被害を受けたんだ。お詫び。くれるよね?」


 怒りを隠しているかのように、不気味に笑ってみる。威力は十分だったようで、青年は引き攣った笑みを浮かべながら「あ、あたりまえですよ~」と震え声で言いつつ何度もブンブンと音がなりそうな程頷いた。


 襲われたクロナもエリーナも悔しがってはいるが、怒ってはいない。俺もそうなのだが、この機会を利用して村を発展させてやろうと俺は考えたのだ。

 となれば、ちょっとくらい怒ってるように見せたほうが良い物が貰えそう。だからやってみたのだ。効果は十分なようだ。


 さて、どんな交渉になるだろうか。

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