↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空っぽ鎧の黒騎士様!!  作者: ken
二章 竜生誕編
28/59

27話 空の黒騎士の始まり

 さて、俺が四股男を追い掛け回している内に皆勝ったようだ。魔力枯渇と体力消耗で動けない四股男の足を掴んで引き摺って移動する。


「痛い痛い痛い!!頭!!頭擦れてる!!禿げるから止めてくれ!!」

「黙れ四股君。お前のような奴はおかしな形に禿げてしまえば良い」


 モテる奴は禿げるという噂がある。事実であってくれ。


 ごちゃごちゃ会話しながら進み、皆の所にまできた。


「随分遊んでたっすね?こっちはこの通りっすよ」

「うわぁ。よくやったな」


 片腕と口から血を流すおっさんと、半身火傷だらけの女が鎖でグルグル巻にされていた。女に至っては手の甲から骨が見えている。凄い痛そうだ。


 目の前の光景が四股男の視界にも入ったのか、「初めは女の子の相手が良いって思ってたけど、あんたで良かった」とか言ってきた。


 てめぇそんな事考えてやがったのか。


 腹が立ったので尻を三度叩いてやった。身体能力を強化したので涙目である。扱いへの抗議を拒否していると、リディアから声がかけられた。


「ジンさん。クロナさんの手当をお願いします」

「すまない、ジン。頼む」


 クロナは片足を引き摺り、リディアに支えられて立っていた。クロナには、塞がってはいるが痛々しい傷跡が幾つも体に残っていた。俺は肩の荷物(四股男)を投げ捨て、二人に駆け足で近づいた。


「どうしたんだ!!」

「魔法を喰らってしまったんだ。リディアの魔法で応急処置はしてもらったんだが、片足がうまく動かなくてな。治療してもらえるか?」

「当たり前だ。ちょっと横になれ」


 リディアの補助を受け、クロナがゆっくりと横たわる。その側に俺は座り込む。アリガタ草と一体化し、傷口に手を当てて傷を癒していく。痛みに歪んでいた顔が段々と安らかになっていった。


「ありがとう。もうこれで全部だ」


 上半身を起こし、腕を回してアピールしてくる。


「そうか。後で見逃しがないか、しっかり確認しとけよ?あったらすぐに直してやるからな」

「ああ。分かった。次はエリーナを治してやってくれ?」


 そう言われ、エリーナを視界に捉える。彼女は傷こそ浅く、問題は無さそうだ。だが、女性が傷まみれというのは問題があると思うので、治療してやる。


「私も横になったほうが良いかしら?」

「いや、クロナと違って動けそうだからそのままで頼む」


 指でなぞって傷を消していく。


「クロナの治療を見ていても思いましたけど、凄いですわね。一瞬で直してしまうんですもの。信者が出来るのも仕方ないですわね」


 悪寒が走った。声を震わせながら尋ねる。


「ま、まま、まさか……お前まで信者に……」


 フルフルと震える俺を見て、エリーナは苦笑しながら答えた。


「大丈夫ですわよ。私はジンの信者では無く友達ですもの。安心してくれていいですわよ」


 ホッと息を吐く。鎧だから気分だけだが。


 エリーナの傷もしっかり直した。恐らく後は残らないだろう。遠目に見たところ、ローレンもミュリエルによって塗られたアリガタ草の薬で傷跡はなさそうだ。本当にありがたい薬草である。さて次は───


「ジッとしてろよ?」

「……何をする気だ……」


 目元を赤く腫らした女が、俺に暗い目を向けてきた。


「ん?治療だが」


 そう言うと、周りの全員が目を見開いた。


「貴様……私達は敵だぞ。何を考えている」

「そうっすよ。ここに来る途中に、できれば殺さないでくれって言った時点でおかしいと思ったっすけど、何のつもりっすか?」


 実は移動中の会話で、全員が殺す気満々だったのだ。俺は人殺しはしてほしく無かったので、できれば殺さないように頼んだのだ。

 皆の視線が答えろと言わんばかりに突き刺さる。それに俺は動揺しつつ答えた。


「え。いや。可哀想じゃん?」

「いや、可哀想ってなんっすか。敵っすよ?何時また襲ってくるかわかんないんすよ?」


 ルインは今にも俺に掴みかかりそうだ。


「え、えーっと…………じゃあさ。利用しよう!!」

「敵の前でそれ言った時点でアウトっすよ……」


 周囲の視線が馬鹿を見る目に変わった。そんな汚名は返上するべく、俺は頭の中で利用法を瞬時に考えた。


「むしろそれでいいんだ」

「はあ?何言ってるっすか」


 やはり、馬鹿を見る目を向けてくる。だが、本当にこの状況は利用できると思う。


「俺達って協力してるだろ?その情報はこいつらが帰れば知れ渡る。そうしたら襲ってくる奴なんていなくなるんじゃないか?」


 そう。【無限多重の魔女】と【災害竜】。そして俺。俺は知名度など無いに等しいが、三人は有名人らしいので、その有名人が手を組んだとなれば簡単に襲ってこようだなんて思わないはずだ。


「そういう事っすか。でも、私達は【災害竜】と仲良くするなんて言って無いっすよ?今回助けたのだってジンさん一人じゃ危険かも知れないって事で来ただけっすし」

「なら、今協力関係になろう。お互いに身を守りたいって考えは一致してるだろ?力のある奴が味方にいれば楽になると思わないか?」


 ルインは弱ったフィアが襲われる事を気にして結界を張り続けていた。それは、ルイン一人で相手出来るかどうかわからない奴等が攻めてくる可能性があったからだ。今もその可能性がある考えれば、力のある者が近くにいた方が安全だろう。ローレンとミュリエルも安心して子育て出来るだろうし、お互いに得がある。


「確かに、お互いの目的は一致してるっすね……でも、【災害竜】がフィアさんに危害を加えないって断言できるっすか?」

「あいつらには子供がいるんだ。そんな弱点もった状態で襲ってくる意味も無い。それに、今は向こうも弱っていて、協力者がいれば心強いはずだ。どうだ?」


 ルインはしばらく黙考した後、頷いた。


「まあ、向こうが協力関係になりたいって事ならなってもいいっすよ」


 ルインは協力関係に納得したようだ。これでローレンとミュリエルも安全に子育てが出来るだろう。

 ホッとして、治療しようと振り返ろうとする。が、ルインが続けて発した言葉で、動作を止めた。


「でも、知らせるのは一人でいいっすよね?」


 確かに、知らせるだけなら一人で良い。だからといって、他の奴を殺すのは強い抵抗を感じる。


「え……いや、でもさ。わざわざ殺す必要も無いだろ?」

「殺したほうが説得力が生まれるっすよ。むしろ殺さずに帰したら調子に乗るかもしれなっす」

「そうかもしんないけどさ、俺は人間に思い入れがあるんだよ。頼む!!」


 今、俺は【ゴーストナイト】という名前の魔物になった。だが、心は人間の頃と変わり無いつもりだ。だから俺は頭を下げて、ルインに素直に頼み込んだ。


 頭を下げているので見えないが、ルインの溜め息が聞こえる。そして、ルインが口を開こうとした時、別の声が響いた。


「いいんじゃない?別に」

「フィアさん!!あなたまで何言ってるっすか!?」


 遠くのミュリエル達の近くにいたが、いつの間にか近くに来ていたようだ。


「ジンは人間を殺す事に慣れていないのよ。下手に殺して心を病ませるより、逃がした方がいいと思うの。戦力は削りたくないでしょう?」


 俺が異世界から来た事を知っているのは、今のところフィアとルインのみだ。フィアとは元の世界の事などを話していたので、俺が人間を殺す事に強い抵抗がある事も分かってくれているのだろう。


「ああ……ジンさんの育った環境に関わりがあるっすか……」


 ルインはフィアからの情報をじっくり考え、ちらりと俺を見ると溜め息を吐き、諦めたように小さく笑った。


「分かったすよ。ジンさんが戦えなくなるのは困るっすからね。でも、その分しっかりしてくださいっすよ?」

「ありがとう!!ルイン!!」


 ルインに深々と礼して、治療を始めようと振り返った。

 先ずは半身が火傷している女からである。


「ジッとしてろよ?やりにくいからな」


 そう言って俺は手を翳した。すると女は不思議そうな目で俺を見てきた。


「何故、貴様はそこまでする。殺したくないなら、逃すだけでも十分だろう?」

「んー。優しくしなさいって育てられたからかな」

「たったそれだけか?」


 驚いた顔をして、さらに訪ねてきた。


「探せば色々出てくると思うけど、すぐに出てくるのはそれくらいだな」


 俺の言葉を聞くと、暗い顔をしていた女は、少し顔を晴らして小さく笑った。


「その力と優しさで神にでもなれそうだな」


 冗談かもしれないが、その発言は俺には割りかし冗談になって無い。


「おい。まさかお前まで信者になるつもりか!?」

「ん?なんだ。もう信者がいたか。出遅れたな」


 悪戯っぽくわらう女。冗談であれば良いが、結構本気っぽくて怖い。


「一応なんだが、冗談だよな?」

「いや。本気だが?」


 さも当たり前のように答えられた。


「どうしてだよ!!俺は神様じゃねぇよ!!」

「そりゃ神様だったら有名だから、すぐに分かるだろう。だが、私は今、あなたの優しさに救われた気になったんだ。だから私はあなたの信者になりたい」


 清々しい顔をして女は青空を見上げた。まるで悩みが吹っ飛んでスッキリとしたように。


 あー。これはバル達と同じで面倒そうだな。あまり触れないでいよう。


 この後、女に色々と質問をされたが、名前を教えた以外は割りと適当に流した。面倒そうというのもあったが、情報収集をしているのかもしれないからだ。




 しばらくして、怪我をした者全員の治療を終えた。数人程に尊敬の眼差しのようなものを向けられた気がする、すでに信者が一人生まれているので更に増えるかもしれない。そう思うと尊敬の眼差しが少し辛い。


 起きたローレン、ミュリエルとフィア、そして俺で協力関係の為に軽い話し合いをする。それ以外のメンバーは、端に固めた兵士達の監視である。力のある者はウルに拘束させ、ルインに尋問もさせている。

 俺は友達という事で無条件でいいのだが、知り合いでもない三人は、お互いの事を話し合った。すると、案外あっさりと協力関係は出来た。利害は一致しており、強い者と組めるのはお互い助かるからだろう。因みに、兵士達を助ける事は、助けてくれた俺が頼むなら、という事でローレンとミュリエルは許してくれた。


 そして俺達は兵士たちの前に出た。代表して離すのはフィアである。


「しっかり聞きなさい。私達四人は協力関係を結んだわ。力が戻るまで助けるってね。だから、この内一人でも相手しようと思うなら、四人全員を相手すると思いなさい。───」


 フィアが自信を示す。


「【無限多重の魔女】と───」


 ローレンとミュリエルを示す。


「【災害竜】と───」


 そして、最後に俺を示す。


「空の黒騎士をね!!」


 ……ん?あれ?あれれ?名前じゃ無いの?てか、空の黒騎士って?


「なあ、フィア。空の───」

「以上!!さっさと帰りなさい!!」


 俺の言葉は無視し、フィアは全員を帰らせる。

 兵士たちは一部礼をする者を除き、即座に走って逃げた。礼をしたのは勿論信者の女と尊敬の眼差しを向けてきた者である。鎧で無ければ顔が引き攣っていたかもしれない。


 さて、改めてフィアに質問してみる。


「空の黒騎士ってなんだよ」

「ん?どうせならこれを利用してジンに称号をあげようと思ってね。感謝してよ?」


 そう言ってウインクしてくる。恐らく異世界に来てから一番の美人からのウインクである。照れて目を逸らしてしまった。鎧なので、顔が赤くなったりしないのはちょっとした救いである。


 しかしなるほど。こういった称号の獲得法があるのか。【無限多重の魔女】と【災害竜】の名前と一緒なら、それなりに知れ渡るのではないだろうか。


 ウインクで照れくさいが、俺は頬を掻きながらフィアに礼を言った。

 読んで頂きありがとうございます!!増えていくお気に入り数は励みとなっております。感想なども頂けると嬉しいです。

 やっと……やっとですよ!!タイトルをなぞったジンの称号!!もうすぐ二つ名を使える!!ここまで頑張った!!

 最初は【黒騎士】にするつもりだったんですが、『黒い騎士ってだけで同じ名前の称号量産出来ない?』と思いタイトルをなぞりました。

 でも、能力考えてなかったな~。とりあえず次章で獲得する予定ですので、その間に考えます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。