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空っぽ鎧の黒騎士様!!  作者: ken
二章 竜生誕編
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25話 チームジンvs竜夫婦討伐隊 上

 ジンが敵に向かって走っている間に、敵の全員が魔法陣を作り終えた。


「ふん!!突っ込んで来るとは馬鹿め!!辿り着く前に中身ごと串刺しにしてやるわ!!」


 獰猛な笑顔を浮かべたおっさんが手を掲げる。そして次には大きな声を上げて手を振りかざした。


「撃てぇ!!」

「ッ!!止めるんだ!!」


 一人の若い男が止めるよう声を上げるが、その指示は遅かったようで、その者意外は全員が魔法を発動した。

 魔法は一本の大きな氷の槍を飛ばすというものだった。俺に向けて作られたその槍は───


 一本以外が術者本人へと突き刺さった。


「「「ぐあぁぁぁ!!」」」


 足や腕に突き刺さり、それぞれが苦しみを訴える。


「な、何が起こって……」


 おっさんが狼狽えながら兵を見回す。俺はその間、飛んできた氷の槍を高熱化で受け止めながら溶かした。


「遅れたわね。来たわよ。ジン」


 上から声が降り注いだ。その声の主に向かって返事をする。


「おう。思ったより早かったな」

「あれくらいの体調不良、少し休めば問題ないわよ」


 声がした方をおっさん達も見る。


「援軍……だと!?」


 そこにいたのは、空を浮く円形の石版に乗り、ゆっくりと降下して来る六人の少女。フィア。ルイン。クロナ。ウル。エリーナ。リディアである。


「凄いな。あんな事まで出来るのか?」


 先程、氷の槍の向かう先を変えたのは恐らくフィアだ。全ての攻撃を受けた所であまりダメージは無いと考えていたのだが、守ると同時に攻撃もしてくれてありがたいことだ。そう思って質問してみると、フィアは得意げな顔で答えた。


「まあね。あれなら魔力の消費も少なくて便利なのよ。でも、二人は書き換えが間に合わなかったけどね」


 フィアが見る先。そこには二人の男女がいた。

 俺に氷の槍を飛ばした者と、発動を止めようとした者だ。男がフィアに尋ねる。


「おいおい。冗談だろ。魔法陣を見ただけで術式を理解して、更に展開中に書き換えたってのか?魔法初心者相手ならまだしも、そんな事ありえるのかよ」

「ありえるわよ。だって私だもの」


 冷や汗を浮かべる男に、フィアが胸に手を当てて自信たっぷりに言ってのける。


「そうかよ。でもまあ、もうあまり魔力は無い。威力のある魔法は打てないはずだ。これでお前は戦力外だろ?」


 男は脅威が過ぎ去った事を口にするが、それをフィアは笑って返した。


「それは普通でしょ?雑魚なら足止めくらいなら軽いわよ。こんな風に」


 フィアは魅せつける様に一枚一枚が独立した十一枚枚の魔法陣を男との間に作り出し、全てを割り砕いた。


「な、なんだ!?」


 大盾を持った一人が騒ぎ出し、同じように他の者も騒ぎ出した。

 見てみれば足が脛辺りまで地面に飲み込まれている。


 それを回避したのは三人。おっさんとフィアと離している若い男。それと氷の槍を放った軽鎧の女だ。

 おっさんと女は地面が動くと同時にバックステップで回避した。若い男は足を飲まれながらも魔法陣を二枚素早く作って割り、地面を元に戻した。


「三人か……後は皆で頑張ってね。私はあっちで休んでいるから」


 フィアが肩を揉みながらミュリエル達を指さす。


「分かったっす。後は任せるっすよ。じゃあ私はおっさんをぶちのめすっす。ジンはあの若い男を頼むっす。四人はリディアに熱いまなざしを向けているあの女に。いいっすか?」


 ルインの提案に全員が了承の返事をして駆け出す。石版は地面に近い位置まで降りてきているので、俺以外は跳んで降りてから走っていた。

 フィアはそのまま石版に乗って移動する。


 実は、ここに来るまで俺を含めた七人であの石版に乗って向かっていた。だが速度が遅いので、俺が魔物を吸収して飛びながら引っ張って来たのだ。速度を出しすぎて皆が酔ってしまったのは誤算である。なので、酔った皆を大穴の近くに置いて、俺だけ先に来たのだ。因みにちょろちょろいた兵士もフィア達に任せた。


 さて、強い奴だけが残った所で戦闘開始である。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





「さーって!!あなたの相手は私っすよ!!」


 腰を捻って準備運動をしながらそう言うルインを、第一師団長は馬鹿にするように鼻で笑った。


「ふん!!小娘に何が出来る!!」

「ふん!!小僧は黙って殴られれば良いっす!!」


 長くを生きた魔女のルインから見れば、人間のおっさんなど小僧である。鼻で笑い返してやった。だが、そんな事は知らない第一師団長は子供の戯言とさらに鼻で笑って返す。


「ふん!!ふざけた事を抜かす。経験の差という物を見せつけてやるわ!!」

「見せつけられるのはどっちっすかね!!」


 お互いに挑発して睨み合う。そしてほぼ同時にお互いに向かって走りだした。ルインは手ぶらで足取りが軽いが、第一師団長は重鎧を着た上に盾を正面に構えて走っているのでスピードではルインの方が上回っている。


 ルインが走る先の地面に、第一師団長がは目の前に魔法陣を作り出す。

 ルインが走りながら魔法陣を割砕く。それにわずかに遅れて第一師団長は盾を突き出し魔法陣を割った。

 ルインの走り去った真後ろ、魔法陣があった場所に大砲が作られる。第一師団長は少し驚いたような顔をしたが、そのまま突っ込んだ。


「いくっす!!」


 指を鳴らして横に飛び、大砲の軌道上から自分を退避させ、砲弾を放った。一直線に飛ぶ球体状の土の塊の先。そこにいるのは第一師団長である。彼は走る勢いを殺さぬ為に、やや軌道から逸れる様に走り続け、半身が砲弾に当たろうという時、先程魔法で強化した盾で否した。


「ほう。なかなかの威力だ。だが、今のレベルなら儂の技術と魔法陣一枚で十分すぎるほどだな」

「安心していいっすよ。まだまだっすから」


 そう言ってルインは自身の左右に魔法陣を作り出し、両手を突っ込んだ。魔法陣が割れて手がゴーレム化する。

 そこへ走りこんできた第一師団長が、目の前に魔法陣を二枚重ねて作り出した。

 その魔法陣を見たルインは、足元に魔法陣を一枚作り出す。

 第一師団長は足を止めて地を滑りながら構える盾を横にやり、右手で魔法陣を叩き割った。そこから発生するのは、威圧感を伴った魔力による白い衝撃波だ。魔力を直接放った為、強く存在を感じる一撃。それがルインに迫った時、彼女は足元に作り出した魔法陣を踏み割った。


「チッ!!聡いな小娘!!」


 第一師団長が舌打ちをこぼしながら見るのは、ルインと衝撃の間に一枚の薄い壁が出来たからだ。その壁にぶつかって衝撃波が散った。


「魔力の塊を直接当てて威圧で酔わせようだなんて、考えたっすね。でも、私レベルならあれくらい少し気分が悪くなる程度っすよ」

「何度も当てて気絶させるつもりだったんだよ。だが魔法陣の式で発動を読まれているんじゃ、魔力の塊でしか無いこの技は威力が殆ど無いから薄い壁一枚で先に防がれて、こっちの消費量が馬鹿みたいだがな」

「そうっすね。確かに二重の魔法陣にしては完成速度は速いようっすけど、一枚の魔法陣の方が速いっす。展開中に式を見抜けば消費量の多いそっちが不利っすからね。ただでさえそちらのほうが魔力量がすくないんすから、おすすめしないっす」

「そうだな。なら接近戦がしたいから近づかせてくれるか?」


 第一師団長の問に、ルインは楽しそうな笑顔を浮かべた。


「いいっすよ。ある程度希望を持たせないとすぐに諦められそうっすから」


 第一師団長は小さく笑った。だが、その笑いは初めのような馬鹿にした物とはまるで違った。彼の目は明らかな敵を見る目(・・・・・)に変わっていた。

 ルインの知識や判断力、動きから、彼は敵と認めたのだ。


「俺はお前を舐めていたようだが、撤回する。今度は本気出してやるよ」

「へ~。それは嬉しいっすね。精々頑張ってほしものっす」

「後もう一つ」


 そう言って第一師団長は大きく息を吸い込んだ。そして、カッと目を開いて大声で言った。


「舐めるな!!小娘が!!」

「嫌なら頑張るっすよ。小僧が」


 お互いに一気に距離を詰める。


「うらぁ!!」


 先に仕掛けたのはルインだった。ゴーレム化したアッパーを放った。大きな右手を下から上に向かって突き出す。しかし、第一師団長はバックステップしつつ盾にかすらせる様に流して回避した。

 だがアッパーで盾は跳ね上げられ、防御が薄くなった所に左ストレートを放つ。第一師団長は盾を上部に掲げたまま。右足を軸に回転して、ルインに背中を向ける事で左ストレートを脇腹にかすらせる程度にした。

 二つの拳を避けた第一師団長は、左ストレートを回転して避けた遠心力を利用して盾を叩きつけるようとする。ルインの左から迫ってくるそれは、左ストレートを放ったばかりのルインでは受ける事が出来ない。ルインは自ら右に飛び、盾を躱したがバランスを大きく乱してしまった。体を丸めて転がり、衝撃を殺した。

 屈んで状態に戻る頃には、三重の魔法を盾に使い、さらに盾に刻まれた魔法陣も発動させており、力と範囲を拡大させた盾を正面に構えた第一師団長が突進してきていた。立ち上がる暇は与えてくれそうも無いので左腕を地に付け、右腕で盾を押し返す。だが魔法の力もあるのか、段々と地面に押さえ付けられていく。


「儂の突進をその体勢で受けた時点で貴様の負けだ!!今盾の範囲は広い。逃げる為に力を抜けば潰れる。そのままでいても潰れる。さあ!!どうする小娘!!」


 勝利の自信に満ちた顔でそう叫ぶ第一師団長。そんな顔を見たルインは───


「あまいっすね。私の勝ちっす」


 勝利を宣言した。


「何を言っ───!?」


 ルインの宣言を理解できず、聞き質そうとした第一師団長は吹っ飛び。言葉を遮られた。

 武器であり防具である大盾を手放して地面を転がる。回転が止まった時、第一師団長は折れた右腕を押さえながら血を吐いた。


「ぐはっ!!ご、ごふぁっ!!……き、貴様。何をした。あの状況で魔法陣は発動出来なかったはず……」

「簡単っすよ。私の得意魔法は人形の生成っす。初めに私が作り出した大砲は、ただ一発真っ直ぐ撃って終わりの魔法ではなく。私の指示で砲身の向きを変えて砲弾を撃つゴーレムだったんすよ」


 魔法は発動後、イメージで動かす事が出来る。だが、それは特例だ。通常は魔法陣の式に前進や迂回などの式を書き込む事でしか動かせない。

 動きをインストールされたゴーレムは単純な命令を守るだけだが、術者から独立できる。だが、意思なき人形のゴーレムは、常に術者と繋がって操作する特殊な魔法なのだ。だがそれはかなりの集中力を必要とする。一度でも繋がりが切れれば操作はもうできなくなるのだ。通常は本人が近距離戦闘などしながら出来るような物では無い。


「戦闘中に操作し続けただと……馬鹿げた集中力しやがって……」

「ふっふっふ。そこが私の売りっすからね。魔法でもそこだけはフィアさんにだって勝ってます」

「フィア……【無限多重の魔女】……っ!!まさか!!貴様は……」


 ルインからフィアの名前を聞き、第一師団長が目を丸くして一つの可能性を頭に描いた。


「フィア・ネイロンの従者、【人形掌握の魔女】……ルイン・ネイロンか!?」

「よく知ってるっすね~。正解っすよ」


 それを聞いた第一師団長は大きな溜め息を付いて、ルインを見ながら自嘲気味に言った。


「なるほど。小僧な訳だ」


 その呟きを聞いたルインはドヤ顔をかましていた。





 ルイン・ネイロンvs第一師団長……ルイン・ネイロンの勝利。

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