21話 四人の幹部就任
エリーナとウルに配下を連れて来るように言ってから一週間が経ち、俺の配下が集合した。
教祖のバルが一歩前に出てくる。
「ああ!!ジン様!!お呼び頂いたというのに、長くお待たせして申し訳ありません」
「いやいや、大丈夫。寧ろ集団での移動だから速いと思うぞ。こっちこそ皆の所に行くって言っておきながら呼び出して、皆悪かった」
俺が謝罪すると、皆が声をかけてきた。
「それくらい大丈夫です!!ジン様!!」
「お気遣いありがとうございます!!私達は大丈夫ですよ!!」
「大丈夫です!!だから抱いてくだせぇ!!」
フォローは嬉しい。が、最後の最後はなんだよ。声からして明らか男じゃん。嫌だよ。まだこんなのいたのか。はやく間違いに気付いてくれ。
皆が言葉をくれる中、バルが右手を掲げる。
「皆の者。そろそろジン様のお話の続きを聞かぬか。いつまで待たせるつもりじゃ」
その言葉で皆は一斉に静かになり、俺から発される声を一言一句聞き逃すまいと耳に神経を集中する。
あ。皆耳がピクピクして可愛い。
集まった皆の頭から飛び出る獣耳が、ピョコピョコしているのだ。
意識が話から逸れたが、皆の視線で思い出し、すぐに戻る。
「えー。これから皆には、ここに村を建てて貰います。そして、これからは出来た村を中心に行動しようと思います。皆で頑張ろう!!」
沈黙が場を支配する。
え?何か間違った?
不安になって自分の言葉を思い出そうとした時、沈黙は配下達の大きな声で破られた。
「「「おおーーー!!」」」
「え?騒ぎ過ぎじゃないか?」
予想外の反応に少し後退ってしまう。
「皆ジン様からの初の命令に喜んでおるのです。私も精一杯頑張らせて頂きます」
「そ、そうか……」
驚きはしたが、俺は良い配下達を持ったようだ。
その後、色々な事を説明して、作業に移るように言った。
皆が作業に入ろうと一時間程してから、一人の人物が俺に近付いて来た。
「ジン。久しぶりだな」
「ん?もしかしてクロナか?」
目の前にいる鋭さを感じる女性は、艶のある長い黒髪を後ろで一本に束ね、頭からは犬の耳が出ていた。顔立ちは凛々しく、犬人族の特徴である赤い目を爛々とさせている。肌は触れば柔らかく、スベスベとしていそうだ。背はスラリと高く、腹周りも細い、引き締まった体をしている。ただ、胸は乏しい仕上がりになっている。
「酷いな。忘れていたのか?」
「いや。髪型変えただろ?それで分かりずらかったんだよ」
「ああ、戦闘の最中に視界を奪われるから変えたんだ。似合うか?」
「おう。綺麗な顔が良く見える」
俺が褒めると、クロナは恥ずかしそうに頬を掻いた。
「そう言われると少し照れるな」
「そうか?所で何のようだ?何か分からない所でもあったか?」
質問すると、まだ頬は赤いが、クロナは緩めた口を戻した。
「私を幹部にしてくれないか?今まで半月近くをバルと一緒にジンの配下を纏めた力もある。新しい称号も手に入れた。どうだろうか?」
クロナが一歩近寄り、かなり近い距離になった。クロナは女性の中では背が高い。だが俺は更に大きいので見上げられる形になる。格好良い見た目のクロナが上目遣いで目を輝かせて可愛らしくお願いしてくる。
ギャップが良いです。しかし、この光景何かで……あ、犬がおねだりするときだ。
例えるならおやつが欲しい時とかにクゥ~ンとなくシェパードだろうか。
「よーしよし。いいぞ」
元の世界の犬には逃げられたり噛まれたりで上手く出来なかったが、犬を撫でるようにクロナを撫でながらそう言ってやった。
「ありがとう」
撫でられるのが気持ち良いのか、クロナは顔をほんのり赤くしつつ緩ませながら礼を言った。
ふむ、撫でられるのは好きなのか。やっぱり犬の亜人だからか?まあ、良い発見である。喜んで貰えそうなので、後で他の奴等にもやってみよう。
頭を撫でるついでに耳を触る。フサフサして気持ち良かった。クロナも気持ち良かったのか「はふ~」と息を吐いていた。
さて、クロナに言われて気付いたが幹部か。あまり考えていなかったが、配下を纏めるのに何人かいれば便利そうだ。
クロナの言い方だと、俺について来ていた三人は幹部扱いで見られていたようだ。取り敢えずその三人に声をかけてみるか。
という訳でまずウル。
「幹部にならない?」
「いきなりね……」
ウルは周りの人に指示を出すのを止め、驚いたように言って来た。
「まあ、今とやる事は大して変わんないだろうけど、その立場は配下として嬉しいわ。喜んでなるわよ」
と言ってニッコリ笑顔を浮かべるウル。俺はそのウルの頭を撫でた。
「ちょっ!?え!?な、なに?」
「ん?そうだな……感謝の印みたいなものかな」
クロナは気持ち良かったみたいので、ウルも気持ち良ければ良いのだが。まあ、撫でるのは俺が耳を触りたいのもあるが。
「感謝の印って……」
「嫌か?」
「……ううん。恥ずかしいけど嬉しいし気持ち良い」
ウルは顔を真っ赤にさせながらも、気持ち良さそうにしていた。
さて、お次はエリーナである。
「幹部になる?」
エリーナは俺の言葉で笑顔になると、素早く駆け寄りって両手で俺の右手を握ってきた。
「良いんですのね?本当に良いんですのね?嘘だなんて言いませんわよね?」
「あ、ああ……」
鼻息が荒い、ちょっと怖い。
「やりましたわ!!幹部!!幹部ですわ!!重職ですわよ~」
拳を握って叫ぶエリーナ。
嬉しそうで何よりである。
そんなエリーナも撫でてやる。
「あら?なんですの?」
「就任祝い。気持ち良いか?」
「ええ。でも、どうせなら喉の当たりも良いかしら?」
そうか、猫は喉を撫でると良いんだったか。
注文通りに喉も一緒に撫でてやる。すると目をトロンと垂らして気持ち良さそうにした。
「ああ。なんだか段々と眠、く……」
「ちょっ!?眠るなよ!!」
力が抜けてエリーナが座り込む。
「気を許した友人だからこその反応ですのよ。ふわ~。良いじゃありませんの」
「いや。そう言われると気分は良いが、ここで眠るのは不味いだろ?」
現在作りかけの小屋の中である。ここで眠るのは邪魔になる。
「それもそうですわね。眠るのはもう少し頑張ってからにしますわ」
「頼むぞ」
俺はエリーナを立ち上がらせて移動した。
さて、次はチャノだが……
「きゃーっ!!ジン様よ」
「おお。何時見てもなんと禍々しいお姿。流石だ」
「立っているだけなのに、なんて恐ろしくて尊いのかしら」
最初以外悪口じゃね?もういいか。面倒臭い。
チャノのいる場所。それは信者達が集まって大きめの簡単な建物を作っている場所だった。信者が鬱陶しい。
「幹部になるか?」
「幹部……ですか……」
チャノは悩んでいた。
以外だ。信者になるくらいだから即答だと思っていた。
チャノが悩んでいると、バルが入ってきた。
「何を悩んでいるのだ。ジン様のご提案だぞ?」
「はい……そうなのですが……あの、ジン様」
「ん?なんだ?」
「幹部という事は、ある程度の権力を持ちますよね?」
権力か。確かに幹部ともなればそれなりの権力を持つだろう。
「まあ、そうだろうな」
「では、その権力を私個人ではなく、この宗教に下さいませんか?」
ふむ、幹部一人分の権力を一つの団体が持つ。これは多くの意見を取り入れやすい構造だ。
だがしかし、その意見は全員信者のもの。下手すれば面倒な意見が出かねない。何より、俺が宗教に権力なんて渡したら、本人公認の宗教になってしまう!!それは嫌だ。反対だ。
「駄目だ。却下だ。反対だ」
「うぅ……そうですか……」
くっ!!そ、そんなに尻尾垂らしながら落ち込むなよ。表情だけでも罪悪感が湧いてくるんだからさ……仕方ない。
「宗教には権力はやらないけど、幹部になれば補佐くらいは付けられるだろ?それはだれでも良い」
そう言ってバルを見る。そこでチャノは気付いたのか。小さく声を上げた。
「宗教の第一人者である教祖様を補佐に付ければ、意思の反映も……」
「まあ、補佐は自由だからな」
自由を強調する。
飽くまでも俺が宗教の意思を認めたわけじゃ無い事をアピール。ここが折衷案と言った所だろう。
「やらせて下さい。ジン様」
「良し。分かった」
そう言って俺は頭を撫でた。
「あぅあ!?」
チャノは突然の事に驚いておかしな声を出した。だが段々と顔が緩んでいく。それを見て周りの信者達が羨ましそうな顔をする。
「就任祝いだ。どうだ?」
「えへへ。幸せです……」
チャノは幸福を表情で表していた。
さて、こうして幹部が四人決まった。
犬人族代表クロナ。
仙狐人族代表ウル。
猫人族代表エリーナ。
本人非公認宗教代表チャノ。
大体はこれで統率が取れるだろう。とりあえず幹部はこれで良いかな。
今回、色んな耳が触れた。フサフサして気持ち良かった。ほっこり幸せである。
その後も作業の進行具合を見て回った。
今の目標は、皆が眠れるように小屋を作る事である。木を切って材料を得ながら空間を作り、そこに建てる。
ここには建築の詳しい知識や技術を持つ者がいない。所かまともに見たものも少ない。なのでまだ知識のある仙狐人族によって、小屋は見よう見まねで作られている。簡単な作りでそれぞれ幾らか違うが、パッと見は絵本に出てくるようなログハウスのような物になっている。
作業効率を上げるため為に、配下は伐採役や運搬役等に分けている。人数は現在進行系で調整中である。
木を切る道具は仙狐人族が変化してくれている。状況によって斧や鎚になってくれるのでかなり便利だ。火の玉を取り込んだ刃物等で部分的に焼きながら切れば速いが、まだ能力に慣れているか分からないので、間違って火事でも起こさないようにそれは禁止している。
皆頑張って働いてくれているが、流石に今日一日で全員分の小屋は出来そうもない。余った人はフィアの屋敷に泊めさせて貰うつもりだ。
皆が寝泊まり出来る数の小屋が完成するまで、全員小屋建てに専念して貰うため、食糧は俺が溜め込んでいるホノサウルスを提供する。ドラグ夫婦の産卵による大量発生の影響もあるだろうが、あちこち行く度に良く会うので、ホノサウルスは鎧内に大量にスットクしてある。配下全員でも一日に二、三匹あれば充分だと思うので、かなりの期間はそれだけで持つはずだ。
まあ、集団ならば自力でも割りと安全に手に入れられるようなので、甘えさせ過ぎて駄目な配下にならないよう、小屋作りが終わったらあまり出さないつもりだ。自立はしてもらわないとね。
夜になったので、作業は明日の朝まで中断である。目標の約四分の一の小屋が完成した。伐採が速く進んでおり、空間はかなり出来ているので明日からはさらに建築スピードが上がるだろう。
ホノサウルスの丸焼きを嬉しそうに食べていた皆は警備役を覗いて疲れを癒す為に眠ってしまった。俺は眠る必要がない。というか、眠れないので警備役に混ざる事にした。
ある程度の力を持った者がこれだけ集まっているので、魔物等も魔力に警戒してそうそう近寄って来ないが、きちんと見回る。
そうこうしている内に朝が来た。幹部達が上手く動いてくれたので、スムーズに作業は開始された。
その後少ししてから、俺の前に洞窟に帰ったはずのリディアが焦った表情で現れた。




