16話 竜の洞窟へ
さて、騒いだ結果。分かった大きく分けて三つあった。
まずその内の一つ。俺が震えている間、どうやら皆が交代で見守ってくれていたらしい。
なんでも、また頭を殴りだしたら危険だろうからと言う判断だった。聞いた話では人狼との一体化をして顔面を殴ろうとした事もあったとか。記憶に無い……さすがに人狼の力まで使えば鎧も壊れていたかもしれない。止めてくれた皆に感謝である。
次に分かったことはフィアの体調だ。治療のお蔭もあってそこいらの初心者魔法師レベルまで復活したらしい。そう言われたが、俺には初心者魔法師レベルが分からないが……まあきっと常人並には回復したんだろう。普通に過ごすのに問題無いようだ。
最後に分かった事は、竜についてだ。色々な情報をフィアとルインに話した所、それはおそらく大きな力をもった竜が産卵期に入ったのだろうという事だった。竜の雌は産卵期になると精神的に荒れてしまい。番でさえも襲われることがあるのだとか。それを知っていた竜の雄が妖精を逃したのだろうという事だった。
因みに、フェアリー達の保護は皆納得してくれ、構わないという事だった。すでに屋敷に種族で来ているらしい。
大きな力を持った竜の産卵期には、色々と起こるらしい。まず、竜は子供を生む時、力を卵に渡すため、酷く力が弱くなるらしい。更に雌は産卵が近づく毎に動くことも辛くなっていくのだとか。こうして本人たちは弱くなるが、卵に込める魔力がいくらか漏れ出て、周りの竜関係の魔物は強くなるなるのだとか。いい例としてはホノサウルスである。あいつらは最近になって一気に増え、この森のバランスを乱していたようだ。その為に食料不足が起こり、魔物達の争奪戦が始まったと……すっごい迷惑な出産ですね。お祝い代わりに拳を送られそう。
この情報から、どう行動するかを話し合った結果。俺とフェアリーの族長で、洞窟に残ったフェアリー達を助けに行くことになった。
助けに行きたいとは思っていたが、俺としてはフィアが心配なので、大丈夫なのか聞いてみると、「伝説舐めないでよ~」と、ドヤ顔で言われた。え?何の伝説?と思ったが、【無限多重の魔女】関連と推測。有名みたいだしね。
まあ、俺の配下兼友達という奇妙な奴らが三人もいる上に、ルインもいるので何かあっても大丈夫だろう。実力は森での移動中で確認済みだ。
という訳で、またもや洞窟に行くことになりました。
皆に見送られ、俺達二人は洞窟に向かった。
洞窟までの道のりは、頭にチョコンと乗せたフェアリーの族長が案内してくれた。間で雑談している内に仲良くなって。友達になったしまった。
友達が増えるのは怖いけれど、やはり嬉しさもある、何よりも「私も……その、友達として扱ってもらえませんか?」と恥ずかしそうに言われてしまい。断りきれなかった。俺って頼まれると弱いのかな……。
その後、フェアリーの族長にはリディアと名前を付けて上げた。喜んでもらえたので良かった。
俺の身体能力全開で走ること約半日。朝に出たためもう夕方になってしまったが、洞窟までやって来た。
洞窟の入り口は縦幅が一メートル半程で、横幅が五メートルと言った横長の小さな物だった。とても竜が出入りするようには見えない。
「なあ、リディア。あそこから竜が出入りするのか?」
「いえ。この洞窟は下に向かって伸びているのですが、一番奥の深い部分は上空に繋がる大きな穴があってそこから出入りするようです。上から入るのは危ないので飛べない者以外はほぼ誰も来ませんし、なかなか住みやすいみたいですよ」
「へ~。そうなのか」
空を飛べる者のみの出入口か。俺も飛びたいな。何時かそういった魔物を手に入れたいものだ。
そんな事を考えながらも、俺は頭をぶつけないようにして中に入った。
洞窟内部は坂道になって下方向に広がっており、道が幾つもに分かれていた。リディアの話ならばこの坂はかなりの深さになるまで続くことになる。大変そうだ。
とりあえず適当に進むか、と思い左に向かうと、
「あっ。そこ右です」
とリディアの案内が入った。
「仲間のいる場所が分かるのか?」
「おそらく、ですが。竜とあった場所から怖がって逃げられずにいるはずなので、そこに行けばいいと思います」
「ああ、それもそうか」
手を叩いて納得。元々怖さで動けなくなって洞窟にいるのだから、初期位置から移動した可能性は低いだろう。だが、これほど入り組んだ道を目的地までうまく歩けるものだろうか。
「道覚えてるのか?」
「幾らかはわかりますよ。私は族長なのでよく色々な所に行くんです。ですから、大まかな道の流れは覚えています」
「なるほど。リディアだからわかるんだな」
褒めてやると、リディアは「いや~」と赤くなって頬を掻いていた。
ここは竜から出てくる魔力が多く、並みの生物なら住む事が出来ない。そして魔物などが入って来たとしても、フェアリーの幻覚によって迷路のような洞窟は巨大な檻となり、食料も水もない道を歩かされて死んでいく。または、竜まで一直線に歩かされて殺される。なので道中はとても楽であった。
あっさりとついてしまった目的地。つまりはフェアリーの群れが竜と遭遇した場所まで来た……のだが。
「誰も……いません……」
「ああ、そうだな……」
誰一人としてそこにはいなかった。
別の場所に逃げたか。それとも荒れた竜に殺されたか……。
別の場所に逃げた可能性は薄いだろう。何故なら、怯えた者全員を引き連れて行ける者が、怯えた者達から出る事はそうそう無いだろうからだ。心とは簡単なものではないのだから。
「皆……」
別れたフェアリー達が心配なのだろう。リディアは暗い顔でそう呟いていた。
大切な人が心配な気持ちは理解出来る。
そんな彼女を見て、俺は彼女に一つ、提案をしてみる事にした。
「竜に会いに行ってみるか?」
竜に会いに行く。これは俺だけなら何とかなるだろうが、正直リディアが一緒に行くとなると厳しい。
魔女二人の見立てでは、弱っている今なら、一匹なら勝てるだろうが、二匹なら逃げた方が良いという事だった。
その状況にリディアを含むのだ。守りながらの戦いはさらに厳しいだろう。リディアの命も危険に晒す事になる。
しかし、竜に会えば殺されたかどうかは分かるかもしれない。雄の竜は少なくともまともな思考が出来るはずだから闇雲に洞窟を駆け回るよりは確かな情報を得られるだろう。
もしかするとフェアリー達が逃げた先を知っているかもしれない。そうならば、時間が掛かれば掛かるほど情報は価値を無くしていく。やるならば早くしたほうが良い。
「……はい!!」
リディアは少しの間考える様に瞑目し、それから決意を籠めてそう返事した。
俺は大きく頷いてやり、
「それじゃあ進化しておくか!!」
「いいんですか!?」
リディアが嬉しそうな笑顔で俺の顔の前に来た。
あれ?皆と反応が違うな。どうしてだ?まるで俺が進化させる事が出来るのが分かっていたような……。
「ジンさんの配下の御三方に聞いてから、羨ましかったんです!!お礼はいつか必ずさせて頂きますね!!」
成る程。あいつらか。驚く所を見るのが密かに楽しみだったのに……まあ良いだろう。 竜と会う前に進化で強化はしておいたほうが良いしな。
そういえば、リディアはお礼はすると前から言っているが、一体なんだろうか?
俺からすれば大した事でもない上に、友達なので別に要らない。だが、気にはなる。
「前から思ってたけど、お礼って何するつもり?」
「そうですね……」
そう言うとリディアは少し考える様にしてから、また口を開いた。
「候補としては、攻撃反応発動型の結界魔法を付けたり、暫くお世話として何人か付き添ったりですね」
攻撃反応発動型の結界魔法だと!?何だか格好良い!!
「その結界魔法ってどんな物なんだ?」
「そうですね……見てみます?」
俺はすぐに頷いた。
「では、左手に付けましょうか。出してもらえますか?」
言われた通りに左手を出し、ジッとリディアを見る。ワクワクである。
思い出して見れば、間接的とはいえ初めて魔法を使うかもしれない。
俺の視線に少し緊張しながらもリディアが両手を掲げる。すると、同じ大きさの魔方陣が二枚出てきた。それをそっと左手に近づ、触れた瞬間―――
まるでガラスが割れるような高い音がして、魔方陣が砕けた。
リディアが少しの間動きを止めてから、俺を見てくる。
「終わったのか?」
「どうやら、鎧の力に耐えられずに付けられなかったようです……こんな事は初めてです」
「そうなのか……」
覇道の鎧さんよ……貴方、少し性能がぶっ壊れてませんか?
「すいません。お礼は別の物にします」
リディアがそういって頭を下げてきた。
「あ~。進化のお礼ならもういいよ。初めは貰うつもりなかったしな」
「いや、しかし悪いですし……」
「気にするな」
「そうですか。では、ありがとうございます」
リディアがまた、頭を下げた。
「それじゃあ進化始めるか」
「はい!!」
リディアの嬉しそうな返事を聞いて、俺はリディアに手を翳した。
読んで頂きありがとうございます。
私はいつもノートパソコンで執筆するのですが、突然、そのノートパソコンの充電器が壊れてしまいました。そして取り寄せに半月以上必要なのだそうです。
現在スマホにて頑張っていますが、スマホでの長文に慣れていない為に更新速度は以前より遅くなってしまうと思います。
申し訳ありません。




