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空っぽ鎧の黒騎士様!!  作者: ken
一章 魔女開放編
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11話 ゴーレムの洞窟へ

 宴から三日がたった。


 狐人族は全員進化して仙狐人族になった。そして驚くべきことに、進化して老人や中年が若返った。これは進化して寿命が伸びたのでは無いかと俺は思っている。

 信者の爺さんは進化によって燕尾服とか似合いそうなナイスミドルの見た目になっている。あくまで見た目なので、精神面は爺さんなのだが。因みに、進化の時に名前を訊いたのだがバルというらしい。


 進化も済ませていざ旅立とうとすると、犬人族の時のように連れて行って欲しいと二つの種族から言われた。皆の目がキラキラしている。

 俺は慕われているようだ。おそらくその理由は俺の戦闘を見たことや、進化や治癒をしてやった所にあると思っている。

 尊敬されていると思うと嬉しくもあるが、期待に答えられるか少し不安でもある。


 集団で動くのは時間が掛かりそうなので、元からいたチャノと案内役のウル、そして足の速いエリーナと洞窟に向かう事にした。


「それじゃあ行ってくる。ここにはまた来るから安心してくれ。じゃあな」

「はい。お気をつけて」


 バルが代表して見送ってくれた。後ろには信者もいる。信者はこの三日でさらに増えた。猫人族も混ざっているようだ。

 どこかでありがたさを感じて増えたのだろう。


 俺達は皆に見送られて集落を出た。




洞窟までの道のりは、ウルが指輪になってそれをエリーナが嵌めて走り、チャノは俺が背負うスタイルで走って行くことになった。

 背中に当たる柔らかな感触。ウルの時は驚いてしまい、ほとんど感触を覚えていないという惜しいことをした。しかし今、確かに感じるのこの弾力。幸せである。


 進む速さはエリーナに合わせる為、今までと比べて遅い。

 俺が合わせるエリーナの速度だが。実は、本気を出せばエリーナは俺と同等の速度を出せる。むしろ、小回りが効く分俺よりもいい動きができる。

 しかし、それは[高速]を使用できる限られた時間での話だ。スタミナにも限度がある。

 なので今は通常状態での走りだが、それでも結構速い。たぶん[覚醒]を使用せずに本気で走る俺と同レベル。それでもエリーナは通常状態で本気だして無いらしい。


 恐ろしい子!!……金髪縦ロールを見ていると言いたくなった。


 さて、そんな凄い脚力なのだが疑問がある。

 俺は亜人へと進化した者に服をあげた。しかし、靴はあげていない。つまり素足なのだ。裸足で森を駆け抜けるというのはかなり危ないと思う。尖った石や折れた枝など、危険がゴロゴロしている。犬人族も裸足だが、狩りをしてきても足には負傷が無いように見えた。可能性としては[再生]があるが、わざわざ足裏から血を流しては治すなどといった戦い方をするとは思えなかった。なのでなにか手段があるのだろうと、今まではそう考えていた。いい機会でもあると思うので訊いてみる。


「なあ、エリーナ。裸足で痛くないのか?」

「ええ。見た目は人間に近づきましたが、それと比べれば体は頑丈な方だと思いますわよ。きっと足裏も丈夫なんだと思いますわ。」

「ほ~う。そうなのか」


 人間に近い形と思考を持ち、丈夫さは獣並。つまり、道具も使える上に獣の力もある。かなり強いんじゃ無いのか?恐ろしい子!!……またもや言いたくなった。金髪縦ロール恐るべし。


 くだらない事を考えていると、エリーナがまた口を開いた。


「後、二本足の走り心地は進化前とかなり差がありますが、以前と同じように、魔力によって脚力が強化されるという私達の種族特性は変わらないようですわ。そしておそらく、[高速]は元から持っていたこの特性が具体的になった物でしょうね」


 ほう、これは新情報。称号以外でも能力ってあったのか。あれ?そういえば今まで当たり前に吸収で使ってた能力ってどれなんだ?


 今までは鎧の一体化で使える能力として調べていたが、どの能力かは知らなかった。

 疑問ができれば[理解]の出番。という訳で調べてみる。

 結果、その種族の目立った特徴が利用可能というかなりアバウトなものだった。


 よくよく考えてみると角が生えたり蔓が生えたり触覚が生えたり……よく生えてるな……とにかく。一体化はその種族の特徴的なものを鎧に反映する力だった。能力もきっとおなじ感覚なのだろう。




 その後も四人で会話をしつつ、ウルの案内にしたがって森を駆けていた。すると、エリーナが[気配察知]にて集団で動く気配がこちらに近づいて来ている事を確認した。

 エリーナは常に[気配察知]を使っていても、魔力の燃費がいい為に、回復量の方が消費量よりも上回っているらしい。なので敵の接近は教えて貰うようにしているのだ。

 

「おかしいですわね……ジンの魔力が見えないのかしら?この森では、集団で動く上にそれ程の強さの者はいないはずですのに」

「確かにそうね。ジンは魔力感知の出来ないような魔物でさえも、本能的に震え上がらせるものね」

「……待て。なんだよそれ」


 不満気な声でウルに説明を求める。


 聞き方によっては存在そのものがダメって言われている気がする。断固抗議させて貰いたい。


 しかし、俺の抗議は張り合うどころか、『え?こいつ何いってんの?』といった顔で返答された。


「何って、それだけの量の魔力を直接出していたらさすがに威圧感を感じるわよ」


 魔力を出す?何の事だ?鎧を動かす為に魔力は常に必要としているが直接出すなんてした覚えがない。


「え?魔力なんて出してる覚えないけど?」


 思った通りに言うと、三人が一斉に驚いたような声を上げた。


「無自覚なの!?魔力だだ漏れよ。そんな事していて今までよく持ったわね……」

「魔物を近づけない為にわざとだと思ってました……まさか意識していなかったなんて」

「休みも入れずに出し続けていると思っていましたが……そういう事でしたの」

「え?え?何か不味いのか?」


 皆の驚き方に圧倒されてなんだか焦ってきた。俺は何かをやらかしちゃったのか?


「それだけの量を無駄に漏れさせ続けるだなんて、普通ならとっくに死んでますよ」

「予想以上にやばかった!!」


 チャノの言葉に衝撃を受ける。口があったらきっとポッカリ開けていたことだろう。知らない間に命を危機に晒していた。恐ろしい事である。


 そういえば昔、怖い格好のおっさん達に誘われてロシアンルーレットをやった事があったな。妙に良く出来た玩具の拳銃だなーと思っていたら、本物で中身も実弾だったという事があった。玩具と思っていた為に、余裕で笑いながら一発目をやると、「お前只者じゃねぇな」と言われた。

 最終的にはラスト一発まで弾が出ず、「俺の負けだ。許してくれ」と銃を自分のこめかみに突きつけたおっさんに泣きながら降伏宣言された。よっぽど悔しかったんだなと思い、「面白かったからまたやろうぜ!!」とリベンジの機会をあげたつもりでそう言い、笑いながら別れた。

 次の日、ニュースでおっさん達が銃刀法違反で捕まった事がわかった。

 親父に焦って調べもらった所、使った拳銃が本物だった事を知らされ、俺絶句。恐ろしい思い出である。


 おっと、本題を忘れるところだった。昔の危機より今の危機だ。より詳しく聞かねば。


 という訳で聞いてみた。どうやら魔力は意識せずとも出るものらしいが、俺はその出ている魔力の量が異常だったらしい。

 自分に意識を向けてみる。すると周りと比べて存在感がある気がした。これがおそらく魔力だろう。

 意識すればこのレベルの魔力を出せない事も無いらしいのだが、そんな事をすれば普通はすぐに倒れて動け無くなるらしい。そこから更に無理を重ねれば死に至るのだとか。

 なるほど、だがそれなら死ななかった理由の予想は付く。おそらく俺の魔力量が多いのが理由だろう。これに関しては魔女であるフィアのお墨付きだ。

 このまま放置でもたぶん大丈夫だが、節約は大事。という訳で魔力が体外に出ないようにイメージ。結果───


「一気に弱くなりましたね。逆に存在感が薄く感じるくらいです。さすがですね。慣れて気にならなくなってきていましたが、やはり威圧感は多少感じてしまっていたので楽になりました」

「そうだったのか、ゴメンな」

「いえいえ」


 チャノは手を軽く振って許してくれた。話が一区切りついた所で、話を元に戻した。


 未知の敵。しかし、俺ほどの魔力の威圧感は無い事から、俺より弱いと三人が判断、近づいて来るような強い魔物ならば吸収しておくのもいいかもしれない。そう考えてここで待ち構える事にした。


「さて……そろそろ正体が見えそうですわよ」


 そう言ってエリーナは指を一本ピンッと伸ばし。背の高い草むらを示した。


 そして、その正体が姿を表した。


「「「ジン様!!」」」


 犬人族達だった。


 話をしてみると、遠くまで狩りに来ていると俺の威圧感を感じたので寄ってきたらしい。

 あったついでに連絡をしておいてもらう事にした。配下はまとめたいと思っていたので、犬人族は集落に行くように言っておいたのだ。チャノも仲良くしていたようだし、きっと一緒に居ても大丈夫だろう。

 犬人族が集落に行くことはウルに許可にも許可をもらっている。

 一応犬人族が土地を大事にしているかもしれないと思い、住処を移動しても大丈夫かチャノに訊いてみた。すると、よく住処は変えるらしく、問題ないと言っていた。

 伝言を頼んで、俺達はまた洞窟にむかって走りだした。




 そして、とうとう洞窟に到着した。

 チャノを背中から下ろし。ウルが元の姿に戻る。

 洞窟は森に入ってすぐの所にあった。入り口は石で作られた大きな扉で塞がれ、壊れた石像が両脇においてあった。


「凄い見た目だな」


 思わず出た呟きにウルが反応する。


「確かにそうね。ここは元々、ただの洞窟だったんだけど、いつの間にかこうなっていたらしいわ」


 おそらく百五十年程前、フィアを守る為、ここに結界関係の装置を置いてからだろう。フィアの同族がこの洞窟に手を加えたという事ならば、危ない魔法の罠等があるかもしれない。気合を入れなくては。


「この先は危険そうだから俺一人で入ろうと思う。いいか?」

「ジン。何を言っているの?私達も入るわよ」


 チャノとエリーナが頷いて同意する。

 付いて来てくれるというのは嬉しい。だが、出来るならば危険に晒したくは無い。


「けど危ないかもしれないぞ?」

「私達はあなたのお蔭で強くなったわ。だから大丈夫よ」


 自身に満ちた顔で三人がこちらを見てくる。簡単に折れてはくれないだろう。


「分かった。でも、危険そうになったらすぐに出てくれよ?」

「ええ」

「はい」

「わかりましたわ」


 こうして洞窟に四人で入ることになった。

 扉を手を掛けて。皆を見る。


 「開けるぞ」


 三人はゆっくりと頷いた。それを確認して、俺は扉を開け放った。そして目の前に広がった光景に俺達は固まった。


 洞窟は整備されており、正四角形の部屋が目の前にあった。奥には扉が見えるが、床は見えない。何故なら、床が見えない程の量のゴーレムで埋め尽くされていたのだ。さらには中央に巨大ゴーレム。

 開けられた扉に向かって、ゴレームが一斉にグポーンと鈍く赤い光を向ける。


 俺はすぐに扉を閉めた。


「……やっぱり待っててくれないか?」

「うん……」


 こうして早くも三人には洞窟を危険と判断し、俺は一人で挑むことになった。

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