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第6話

 魔界の戦士はほとんどが、エルフがそうであるように、炎系魔法が得意だ。

 風系魔法は炎系魔法とは相性が悪い、風は火を煽り火力を強くさせるだけだ。だがエルフはこの世界一の魔力を持つ種族だ、そう簡単に負けるはずがない。

 現にエルフ軍は水系魔法を使用し、魔界軍を潰しにかかっている。

 魔人たちの姿はエルフとはそう変わらない、角やら牙やら尻尾、翼が生えている。翼は漆黒の色で魔人を魔人たらしめている色なのかもしれない。

 魔界は魔獣も使っており、こちらは能こそ無いものの、魔法力はまぁまぁある。

 全て僕の前では無意味な力だが。

「行こうか、セシリィ」

「うん……」

 セシリィはまだどこか怯えていたような表情で僕を見つめる。

「大丈夫、僕が守るよ」

 僕がそう言い頭を撫でると、セシリィは落ち着きを徐々に取り戻し始めた。二、三度の深呼吸。

 僕は完全に落ち着いている、いや、焦りすぎて、恐れすぎて逆に冷静になっていた。

 僕は一歩本部と呼ばれるテントから足を踏み出した、セシリィも僕に続き足を踏み出す。

「さ、行こうか」

 瞬間移動は術師が触れている者も一緒に瞬間移動することができる。ただ、僕には効かないと思われがちなのだが、これは逆という名はついていないが、逆系魔法の一種だ。

 因みに、彼女が時間停止を発動しても、僕には効かないのでセシリィと僕のみが自由行動できることになっている。

 僕たちはセシリィの体力温存の為に走って魔界軍の基地を目指す。

 僕以外にもセシリィ護衛の為に付いて来ているのが、リリナさん、キャルメだ。二人はとてつもない強者だ。先ほどから迫りくる魔人、魔獣を得意魔法で蹴散らしていく。

 僕も微力ながら戦いに参戦する。

 魔法は効かないので無防備で乱入しても痛くもない。

 魔人どもは僕が傷一つついていないのに気が付いたのか、今度は土系魔法を発動し、土を剣へと変える、剣と言っても岩の棒みたいなものだ。

 簡単に圧し折れる。

「雑魚が」

 冷たく言い放ち、その魔人の溝に渾身の殴りを打ち込む。

 すると魔人は腹を押さえて転げまわる。

 今度は魔獣が跳びかかって来た、見た目からして、地球では架空上の伝説の生き物、キメラだった。

 僕は感嘆の声すらあげず、ただその『障害物』の顔面に殴り、顎に膝蹴りを喰らわす。それもまた地面に倒れこむ。

 周りを見ると周囲に居た魔人等は大抵潰したようだ。

 やはり身体派はあまり役に立たないか。僕は少し拗ねる。

「かっこいい……」

 セシリィを見ると何故か僕をこんな状況で褒めてくれた。

「さ、行きますよ」

 リリナさんが皆にそう言い放ち、動かせる。司令官に向いているのだろうか。

 僕たちは再度走り始めた。

「基地の場所は森を抜けたすぐ傍です」

 キャルメはようやく悲しみから回復したのか、そう声を張り上げる。

 それにしても森の目の前か。

「舐められたものだね」

 魔界の軍はそのことを一生呪うんだろうな、と僕はいきなり勝利宣言を心の中でした。

 すると今度は魔人三体が現れた。

「おっと、此処から先はアタシたちが通さないわよ」

 そう言った女は、サキュバスみたいだった。灰色の髪、獲物を逃さぬ鋭い紅い瞳、鋭く尖るエルフとは違う禍々しい耳、鋭い牙、耳の上に生える角、背中に生える翼に、尻から生える長い尻尾。服装といえば露出の多い、へそを露わにしている。かなり挑戦的な服装だ。

 本当に舐められたものだ。

「潰す」

 他の二人は部下か何かだろう、眼中に無い、目的は位の高い者のみ。

 僕はそう言い女に向かい走る。

「ティア・カルマ、目的確認」

 サキュバスことティアはそう子供らしく言い僕を睨む。鋭い眼がさらに鋭くなる、僕でなければほとんどの者が退けただろう。

 残りの二人はリリナさんたちに任せる。

 僕はティアの腹部を狙い殴りを入れる、しかしティアはそれを軽やかな身のこなしで避ける。

 想定済みだ。

 僕はそのまま突進し今度は腹部に後ろ蹴りを喰らわせる。

 鈍い音。

「ふぅ~、ヤルゥ」

「なっ」

 僕の足はティアの両手にガッチリと掴まれていた。

 そのままティアは僕を地面へと叩きつける。

「がっ!!」

 喉から何かが這い上がってくる。それは口から勝手に出る、血だ。

 セシリィの悲鳴が聞こえる。

 僕はいったん間合いを取り、セシリィを見る。

「セシリィ、魔法は使うな」

 僕は口に付着した血を拭い笑う。

 久しぶりだ、この緊張感。

 僕は口に残っていた血を吐き捨て、ティアへともう一度突進する。今度は顔面目掛け殴りを喰らわす、しかしそれはティアの右手に呆気なく防がれる。それもそのはずその殴りには、力を入れて無かったからだ。

 ティアも怪訝そうに僕を睨むと、間合いを取ろうとした。

 取らせない。

 僕は足払いを仕掛け、見事ティアをこかす。

「うおっ」

 素っ頓狂な声をあげ倒れるティアに、少々乱暴ではあるが、横腹に渾身の蹴りを喰らわす。

「ぐほっ!!」

 ティアは地面を転がり、すぐに停止する。

 ゆらゆらとティアは立ち上がり僕を見据える。

 その瞳は、一瞬にして狂気の瞳に変化した。

「……」

 僕はそれを無言で見つめる。

 すると、

「ふふふふふ……、ふふふふふ」

 急にティアは笑い始めた、その笑いは徐々に甲高くなっていく。

 僕は怪訝に思い、間合いを取りつつ凝視する。

 どうしたのだろうか。

「ふふふ、久しいわ、随分と……、久しく本気を出させてもらおうかしら……!!」

 空気が変わった。

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