第7話
サキュバス、翼を用いて空を飛び、牙を用いて噛み砕き、爪を用いて切り刻む。魔力にも優れている彼女らは、魔界の中でもとても強い方だ。軍を用いて国を落とす、彼女たちはこのやり方が少々嫌なようだった。
聞いた話によればサキュバスは自分たちの群れなら良いものの、多種族の混ざった集団は好んでいないようなのだ。つまりサキュバスは、自分の群れで行動することが多い。
目の前のサキュバスには仲間は眼中に入っていないようだった。
サキュバスの得意魔法は、雷系魔法だ。尤も僕には関係ないが。
「やっと本気ってどういうことだ……」
僕は唾を飲み込みティアを見る、彼女は今まで本気を出していなかったとは、有り得ない。僕は既にほぼ本気で戦っていた。だがティアは本気ではなかったと。
リリナさんを見ると、魔法で敵を圧倒していたが此方にかまっている暇はない、キャルメもリリナさん並みに圧倒しているが、リリナさん同様こちらにかまってられない、キャルメはセシリィを守りながら戦っているのだから。
セシリィは僕に言われたとおりに、おとなしく身を潜めていた。
すると、急にここら辺一帯の天気が変化した。
晴れから、雨に変わった。それも豪雨に次第に変化していく。
僕は少し見えにくくなったティアに目を見張る。
刹那、猛烈な痛みが僕の脇腹に襲い掛かる。
「ぐっ……!!」
僕は何とか転がるのを防ぎ、足でそのままの体勢を保つ。
敵の仲間が乱入してきたのか? 違う、その方向を見ればティアが笑いながら立っていた。その笑みはとてつもなく邪悪だった。
「ふふ……、手応えがあるわねアナタ……、今まで戦ってきた奴なんて比べ物にならない位ッ!!」
そう言いティアは僕目掛けて雷魔法を放つ。
やっと掛かった。
僕はティアに向かい走りながら少し笑う。
雷系魔法の命中率はとても高い、雷系魔法が得意な人物にかかれば百発百中もあり得る。
雷は僕に見事直撃する。レベル4の雷系魔法だ、ティアも疲れているはず。
僕は煙から抜け出し、目の前のティアの腹部に蹴りを繰り出す。
「何で……、キャ!!」
案の定、僕の魔法拒否体の事を知らないようだった。
ティアは女らしい悲鳴を上げ後方に在った大木に衝突する。
だが僕も折角掴んだチャンスを無駄にするほど詰めは甘くない。
ティアに向かい突進する。
体勢を整えられていなかったティアは僕の横蹴りを見事に喰らい、横へ転がる、もう一度突進して今度はティアを踏む寸前で飛び跳ね、ティアの腹部に渾身の殴りを入れる。
重力の関係で落ちた僕の殴りは相当響いたようだ。
「がっ!!」
ティアは血を吐き出す。その血は自分の顔に降り注ぎティアの顔が、そのまま言葉通りに赤くなる。角は赤く染まり、顔を赤く染まっていた。
「ふぅ……」
僕は少し乱れた息を整え、間合いを取る。
これほどに重ねた痛みに悶絶しないのは、僕にとって彼女が初めてだ。
「ふ、ふふ……、魔法拒否体ね……。あの方と一緒とは……、確かに体の造りが同じだわ……」
「なっ……!? どういう事だ!? 同じ!?」
見破られたことが頭になかった、後者の事が頭に残っていた。
体の構造が一緒。即ち人間。魔法拒否体、といことは僕と同じ不完全な人間。僕と同じ世界に居た人間。
僕と同じこの世に存在する、地球の人間がいる……。確かに不思議ではない。僕だけがこんな優遇されることが逆に不可能だ。
あの時白い空間に居た女性も確かに、久しく人間が来た、と言っていた。
僕がそんなことを考えている間にティアが僕の目の前にまで詰め寄ってきた。
腹部へとアッパー。
「ぐはっ!!」
僕は体が浮き、一メートルほど後方へと飛ばされる。僕は血を吐き出す。
頭には先ほどの言葉が残っている。
僕と同じ魔法拒否体。
再度ティアが僕に突進してくる。僕は立ち上がる暇もなく、頭に大打撃を喰らう。一瞬意識が遠のいた。
「はっ……」
僕は息を何とかする。
意識が遠のいたおかげで冷静さを取り戻す。平気だ。おかしくないんだ、僕と同様の人間がいようと。
間合いを取り、ティアを睨みつける。ティアは僕の視線を受け流し、突進してくる。
僕はティアの殴りを避け、足を払い。バランスを崩したティアに蹴りを喰らわす。そのまま突進し、今度は後ろ蹴り。
「キャッ!!」
戦力は両者互角だった。
僕は息を整えてティアを見据える。
ティアは血を吐き出し、僕を睨む。
「しぶとい……」
僕はそう愚痴を零し、じりじりと間合いを取る。
ティアも少しずつ間合いを取り、僕から目を逸らさない。
「アナタもね」
僕はその言葉を聞き、ティアも僕に苦戦を強いられていることに気付く。少し安心し、先ほどより、頭の速さが上がった。
奴にはもういかさまは通じない、もうこちらは万策尽きた。ティアも万策尽きているのだろう。これからは両者本当に、肉弾戦になる。生身での戦いは、速さはこちらの方が早いが、所詮人間だ、力を上げても魔人には敵わない。
ならば行動あるのみ。速さで潰す、力ではこちらの方が劣っているも、さほど変わりはないんだから。
僕は一度大きく息を吐き、ティアに向かって突進をする。
ティアも僕に向かい突進する。
速さでは僕のが速い。僕は距離が縮まったところで、殴りを入れる。ティアも殴りを入れようとするも速さでは僕に劣っているため、間に合わなかった。
僕の殴りがティアの顔面に直撃する。
「がはっ……!」
ティアはそのまま倒れた。




