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第1話

 澄んだ空気、一面緑の草原。

 綺麗な澄んだ水が流れる川、小鳥の(さえず)り。

 美しい花たちと、緑に染まっている木々、風が吹き葉っぱたちが擦れあう音がする。

 とても落ち着くこの空間は、この狂った世界にある数少ない貴重な場所だ。

 この国『ゾネル』の北の外れにあるエルフの森。またの名を『エルフィティ』。

 この世界に、森に来て十六年、この森に一軒家を建て穏やかに過ごして三年。この森の住人『エルフ』の皆とも交流が深く、また僕も姿こそ違うも森の住人だ。

 エルフの姿はもちろんの事耳が尖っている、だがそれ以外は人間と同じ。エルフの男女にも違いがあり、男の場合耳の尖りが鋭い。女の場合もちろん胸の膨らみで女性とわかるが、耳が少し尖りが丸っこい。

 僕はもはや人間という容姿で、耳の尖り以外エルフと一緒だ。

 この世界に転生し、誰かから産まれこうして生きている。

 この言い方からして分かるだろうが、僕は捨て子だ。この容姿がおかしかったのだろう。耳以外エルフに似ていたためかこのエルフの森の近くに捨てられていた。

 なので僕は親の顔、声、全てを知らない。

 別にそれでも良い、僕にはもう家族がいる。このエルフの森全ての住人。

「ふぅ……」

 僕は一度深呼吸をする。

 澄んだ空気を肺に入れ、肺の空気を入れ替え、入れ替えられた空気を吐き出す。

 この世界に転生され十六年が過ぎているので言葉に困ることなどない。だがこの世界には『魔人・魔物』が存在する。

 この世界には有力な国が三つある。

 まず一つ、僕らが住む『ゾネル』、二つ目、魔人たちが住む国。ゾネルの東に面する国『魔界』、三つ目、ゾネルにも魔界にも面していない北の果てに在るエルフたちの住む国『縁国(えんこく)』。

 この森に住むエルフは、縁国から移住してきた。

 この世界には『魔力』というモノが存在しており、その魔力の力、正確さ、速さ、この三つで大体この世界の最有力者が決まるらしい。

 エルフは昔からこの世界で一番の権力を持っている。

 膨大な魔力、知識を掛け持っているエルフは当然の如く世界の有力者を保持している。

 そして先ほど述べたようにこの世界は狂っている。理由はこの国の東に面している魔界がゾネルを落としにかかったからだ、前々から仲の良くないこの両者は昔から睨み合っていた。それがある日、魔王が代わったその日から魔界はゾネルを支配しようと目論みはじめた。

 ゾネルは本質的に魔力に関して魔界に負けず劣らず力を持っている。しかし魔界は強すぎた、魔界の住人ほぼ全てが戦士に変わったのだ。この国はそんな住人はあまりいない。

 今ではゾネルの三割は魔界の支配下にある。

 そして魔界の当面の目標、それは、この森を支配すること。だが魔界の住人らはこの森を落としにかかってもエルフ攻撃隊に返り討ちにされるだけだ。なのでこの森は未だ平和を保ち続けている。

 魔力には種類がある、炎系魔法、水系魔法、風系魔法、雷系魔法、土系魔法、その他にも魔法はある。

 エルフの殆どが風系魔法を得意とする。他にもエルフは得意魔法を兼ねており、エルフの最有力者は先ほどあげた魔法全てを得意としているらしい。

「おーい、レムナー!」

 僕は明るい声を放つ主へと振り返る。

 『レムナ』、これは僕のこの世界の名だ。尤もこの世界の名しか僕に名前は無いが。

「やあセシリィ」

 彼女はエルフ族の住人『セシリィ・ミリカ』、この世界で唯一、時系魔法を所持する存在だ。

 時系魔法は名前の通り時間を操る能力者である、ただし時間旅行は不可。出来ることは時を止める、瞬間移動、その他。

 だが彼女の能力の力は微弱なものだ、瞬間移動は得意だが時を止めるのが五分ほどしか行えない。

 艶のある長い金髪、美人と言うべき美しい顔、もちろん有る少し丸っこいエルフの象徴である尖がった耳、碧眼、桃色の唇、申し訳ない程度の小さな胸、細いうなじ、僕より背が六センチほど小さい。

 彼女は唯一の時系魔法能力者で、貴重な存在だ。なので護衛は付き物だ。

 そして僕はその護衛者、昔から家が近い彼女が護衛者に僕を推薦した。そのおかげで今では彼女の家が僕の家の真上だ。

 僕の家は一軒家、そして二階建て、玄関は一つ、一階に設けられている。ということはもはや彼女は僕と同居している。

 彼女の家、部屋は二階で、僕の家、部屋は一階。

「だからわたしの事は、セシで良いって」

「わかったよ、セシリィ」

「もうっ」

 セシリィは可愛らしく頬を膨らませ拗ねたように顔を逸らす。

 彼女は僕によく愛称で呼ぶように言ってくる。でも僕はそう呼んだことはない、なぜなら彼女の事をそう呼ぶ者はいないのだから。いや言える人物がいないのか。

「……本当に此処が好きなのね」

 セシリィは僕の顔を見ながら微笑して言う。

 そう、此処は僕のお気に入りの場所なのだ。この場所を知る人物は僕とセシリィだけだ、いわば秘密基地みたいな空間だ。

「まあね、きれいな景色だし、落ち着くし」

「うん、分かるよその気持ち」

 僕らは微笑み合い、その後再び景色を眺める。

 数分間、僕らはその景色を眺め続けた。

「さ、帰ろう」

「うん、そうしよう」

 僕らは立ち上がりわざわざセシリィはゆっくり僕と家を目指して歩き始めた。


・・


 僕には魔力が無い。

 それが判明したのは十年前、僕が六歳の時だった。そろそろ魔力が扱える歳なので僕は周りに勧められたので、一度試してみた、試した魔法は光系魔法のレベル1の幼年でも使用可能な一番簡単な魔法、しかし発動方法を聞き魔法を発動させようとしても魔法は発動できなかった。

 だがもう一つ判っていることがある。

 それは僕が唯一この世界で魔法で身体に影響を受けない、ということ。

 これが判明したのは八歳の頃、近所の十歳の女エルフと喧嘩をしてしまった時に彼女が僕に炎系魔法、レベル2の火傷を負わす程度の魔法を繰り出した時だった。僕はそれをまともに喰らってしまったが僕には、火傷どころか擦り傷一つもなかった。

 余談だが喧嘩相手はその状況に恐怖したのか大泣きしていた、そして僕は周りの人に驚かれつつも頭を叩かれた。僕は被害者だったのに。

 そして僕がセシリィの護衛に任命されるのに文句が無かった理由はそれがあったからだろう。

 僕はそんな過去を思い耽りながら食事の時を待った。

 転生して十六年、思えば以外にも短いモノだった。転生だからまたあの元の世界に戻るのだろうと思っていたが結局はこの世界だった。別に嫌ではない。

 この世界は魔力が有る者が生き残る。それがこの世の(ことわり)だ。

 だが僕の存在はそれを無視している、いや無視しなくてはならない。

 話が変わるがエルフは目立ちたがりではない、力を持っているのにそれをむやみに使いことをしない。エルフは自分たちに危険が迫る時だけに魔法を発動する。子供の頃はむやみやたらと使うのだが。

「レムナー、ご飯だよー!」

 セシリィが僕を昼食に読んだ。

「はーい」

 僕はそう言い布団から出て食卓へと向かった。

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