第10話
顔面への激痛を喰らうも、それを我慢して間合いを詰める。
そして腹部へと殴りを喰らわせ、その勢いを利用し膝蹴りを打ち込む。
一度間を取り、すぐに突進し回し蹴り、そのまま一回転をして、顔面に殴りを入れる。
「クソッ!!」
暴言を俺は吐いて、再び間合いを取る。
「真、弱くなったね」
魔王はそう言い俺の腹部へと殴りを一発、その後再び一発。
俺は血を吐き、地面へと墜落する。
「がはっ……」
コイツ、人間の動きじゃない。
俺はすぐさま立ち上がり、口に残っている血を吐き捨てる。俺は魔王を睨む。
「負け犬がどう足掻いたって僕には勝てやしない」
再度、安い挑発。
確かに今の俺じゃ、奴には勝てないだろう。でも頭がその考えを拒否し、その安い挑発を飲み込んで、怒りの炎を煽り立てていた。
「黙れッ!!」
俺は叫びながら魔王へと跳びかかる。
しかしいつの間にか魔王は俺の後方へと回り込んでいた。
「馬鹿が」
魔王はそう俺に吐き捨て、俺の背中へと回し蹴りを入れる。
俺は転がる前に体勢を整え、追撃に備える。
案の定次の攻撃が来る、俺はそれを避け、魔王の後方へと滑り込む、そして殴り、そして蹴り、横に跳びかけた魔王の顔面を左腕と思いっきり衝突させる。
魔王は少し浮き上がり、その後、俺に振り返り、顔面へと殴りを入れる、だがまだ攻撃は終わらず、魔王は俺の胸ぐらを掴み、俺の腹部へと膝蹴り、その後頭突きを繰り出す。
一瞬意識が遠のき、俺はそのまま投げられる。
俺はしりもちをつき、魔王を睨み上げる。
「ホント、弱いよ」
「ホントに、お前はウザいよ……」
俺は血が含まれる唾を吐き捨て、そう言い返す。
俺はよろめきながら、何とか立ち上がる。
後ろからリリナさんが叫んでいた、「もう止めて」と、こいつは魔王だぞ、この森を潰そうとしてるんだぞ。止められるか。
魔王へと突進し、殴りを入れようとする、魔王は呆れ顔で俺を見る。そして腕を振り上げる。
俺は、ぎりぎりまで突進し、魔王は腕を振り下ろす。
掛かった。
俺は紙一重でそれを避け、そのまま横へと滑り込み、背中へと渾身の蹴り。魔王はよろめく、俺はその魔王の腹部へ膝蹴り、浮き上がった顔面へ頭突き、下がった顔面へ蹴りを連続で喰らわせる。魔王の頭から、口から赤い液体が流れる。
俺は胸倉を掴み、背負い投げを繰り出す。
リリナの水系魔法の氷で魔王を凍らせようかと思ったが、奴は俺と同じ転生者。十分に高い確率で魔法拒否体だ。
あの白い空間を通ったからか、魔法の無い世界の住人だからか、俺達には魔法は効かない。
魔王は血を吐き、俺を睨む。
刹那、頭に強い激痛が走る。魔王が寝ころびながら、足を振り上げ俺の頭を蹴ったのだ。
俺は歯を食いしばり、痛みに耐える。そして俺は魔王の顔面に肘を強く打ちつける。その後魔王を飛び越え、足を掴み、大木へと投げつける。
衝突音。
「はぁはぁ……どうだ……」
肩で息をしながら大木を見据える。
「クソが」
魔王の声が聞こえたかと思うと、自分の後方に人の気配がした。
俺は慌てて振り返る。
振り返ると、顔目掛けて、殴りが襲いかかって来た。それを紙一重でギリギリ避け、魔王の懐目掛けて渾身の殴りを喰らわす。
間合いを取り、魔王を観察する。
すると、
「魔王様!!」
魔王の後方から一体のローブを深く被った人物が現れた。声からして男だった。
ローブの男は俺を見るや、魔法を放つ体勢を取った。
「待て、奴には魔法は効かない。それでどうした血相変えて」
「ハッ、只今を持ちまして、我ら軍団の全滅が確認されました」
俺の後ろで、リリナが感激の声をあげる。
「……そうか」
魔王はそう言い、俺の方へ歩み寄ってきた。この雰囲気じゃ攻撃はしてこないな。
俺は確信し、魔王を見据える。
「何だ」
俺はそう冷ややかな声を発する。
魔王はバツの悪そうな顔をして、俺の視線を受ける。
「今回は僕の負けだよ」
「そうか、なら帰ってもらおうか」
「冷たいな」
「あぁ」
そんな短いやり取りをした後、魔王はローブの男と共に、森を抜ける道へと歩いて行った。
数秒後、リリナが俺の横に歩み寄ってきた。セシリィはまだ気を失っているようだ。
「良いんですか?」
「……うん」
……僕はそう頷き、リリナさんに微笑む。
「あれ、キャルメは?」
一度あたりを見回すと、キャルメの姿が見当たらなかった。
「本当ですね」
「敬語」
「もうっ、こんな時まで……! ……心配したんですから……!!」
リリナさんはそう言い、泣き崩れてしまった。
やっぱり迷惑かけちゃったな。
僕は自分に苦笑し、リリナさんの背中を摩りながら、微笑んで宥め始めた。
……一体、さっきの自分は何だったのだろう。
何故僕が『俺』何て一人称を……、この戦いの始まる前から、確かに僕の体はおかしかった。セシリィを怒鳴りつけたり、キャルメに苛立ったり。
一体僕の体に何が起こっているのだろうか。




