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現代ダンジョン黎明期  作者: つくしー
第一部 どこにでもいる高校生
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第26話 ダンジョンアイテム


 テントの数は、十張りほど見受けられた。


 人が一人か二人入ればいっぱいになりそうなものから、四、五人ほどは入れそうなものまで揃っている。低い三角形を描くように張られていて、表面は布とも革ともつかない灰色だった。


 どれも長い間放置されていたとは思えないほど綺麗に形を保っている。支柱も縄も腐っていない。それどころか倒れたり傾いたりしているものすら一つもなく、一定の間隔を開けて整然と並んでいた。


 まるで、つい先ほどまで誰かがここで暮らしていたかのように。


「……人が住んでいたのか?」


 テントがあるというなら、もはやそうとしか思えない。


 この建物自体はモンスターが造った可能性もあるし、テントだってその気になれば作ることができるだろう。二層のゴブリンにだって藁葺の家が造れるのだから、三層のモンスターがやってできないことはない、気がする。


 だが、これほど完璧に、長期間保てるテントをモンスターが作れるか?

 可能性がないとは言い切れないが、俺には、とてもそうは思えない。


「いや……つい最近まで、使われていた可能性が残ってる、か?」

「それはないと思いますよ。遺跡に人の手が入った形跡はありませんでしたし、入口だって瓦礫に覆われていたでしょう。スライムだっていましたし、どうやってここまで入ってくるんですか?」

「……そうだな。なら遺跡が崩壊する前からあったと考えるのが自然か」


 となると謎しか残らないわけだが、別に俺達は謎を解き明かしにきたわけじゃない。

 現物が目の前にあるのだから、ここで考えていても仕方ないだろう。


「調べよう。何か攻略に有益なものが見つかるかもしれない」

「待ってました。いこ、綾」


 朱音が我先にと駆けていくのを見て、俺も苦笑しながら違うテントに入っていった。


 テントの中は思ったより広く、外観ほど綺麗ではなかった。


 雑然と放置された物品がいくつもある。それは朽ちていたり腐っていたりと月日の流れを感じさせた。虫が湧いているようなことはなかったが、見ていてあまり気持ちのいいものではない。


 それでも、一つのテントで実に様々なものを発見した。


 まず目についたのは、床に敷かれた布だった。色はすっかり抜け落ち、端は黒ずんでいる。触れれば崩れそうなほど薄くなっていたが、元は寝具として使われていたのだろう。 


 その脇には、口の広い壺が二つ転がっていた。一つは割れ、もう一つは形を保っている。中には黒く変色した何かがこびりついていたが、食料だったのか薬だったのかまでは分からない。


 さらに、細長い骨のような棒、刃こぼれした小刀、編み目の粗い籠、金属製の留め具らしきものも見つかった。どれも用途を想像することはできても、確信までは持てない。


 生活の痕跡だ。

 しかも、ここにいた誰かが、実際に寝て、食べて、道具を使って暮らしていた痕跡だった。


「どれも役に立たないな」


 珍しいものばかりだが、残念ながらそう結論付けるしかない。


 最初にダンジョンに来たばかりの頃であれば、これらは喉から手が出るほど欲しいものだっただろう。だが俺達は準備を万全にしてダンジョンに潜っているし、わざわざ使えるものを探すほど物資に困っていない。


 ……まぁ、遺跡を攻略しただけで満足しとくか。


 いくつかレベルも上がったし、得るものが何もなかったわけではない。


「先輩! こっち来てください!」

「――どうした!」


 朱音の切羽詰まった声に、俺は慌ててテントから外に出た。


 巨大スライムを倒したことで油断していたのかもしれない。もっと警戒を強めておくべきだったか。

 すわ襲撃かと大斧を腰だめに構えると、朱音がきょとんとした顔で立っていた。

 

 ……ピンピンしてやがる。


「……なんだよ。焦らせんなよ」

「す、すみません。そんなつもりではなかったんですけど」

「お嬢様、今のは私でも焦ります。もう少し落ち着いてください」


 雪村さんの小言に、朱音が反省したようにうなだれる。

 だが、すぐにバッと顔を上げ、目を輝かせた。


「でも、これは本当にすごいんですよ! 見てください!」


 そう言って、朱音はパンパンに詰まった手の平サイズの小袋を掲げた。

 そしておもむろにそれをひっくり返すと、中に詰まっていたらしい魔石がポロポロと床に零れ落ちていく。

 まだ落ちる。まだまだ落ちる。すんごい落ちる。

 朱音の足元を埋め、膝近くまで山になってからそれはようやく動きを止めた。


 ……どういうこと?


 明らかに小袋の大きさと魔石の量が合ってないよね?


「……すごいな。マジックか? いつの間に覚えたんだ」

「違いますよ! 種も仕掛けもありません、先輩もやってみて下さい」


 そんな馬鹿なと疑いつつ、俺は朱音から小袋を受け取った。


 落ちた魔石を手づかみでわしっと掴み、十数粒丸ごと中に放り込む。一回、二回、三回と続けて、小袋の見た目が全く変わらないことに気付いた。


 内心慌て、両手で掬い上げるように魔石を入れてもキリがない。

 いや、わずかに膨らんだように見えた気もするが、それだけだ。


「なんだこれ、どういうことだ!?」

「ね、ね、すごいですよね! 私もめっちゃ驚きましたよ!」


 朱音が我を忘れるのもよくわかる。これは叫んでも仕方ない。

 だってこれ、こんなのもう、まるで。


「……アイテムじゃん」


 それこそ、ゲームや漫画でしか出てこないような便利アイテム。

 ダンジョンも空想上の産物だと言われればその通りだが、まさかこんなものまで出てくるとは夢にも思わなかった。

 

「これは、すごいな」

「すごいなんてもんじゃありませんよ! 大発見です!」


 ……めっちゃ興奮するね。


 朱音がここまで無邪気に楽しそうなのは、それこそ最初に会った時以来かもしれない。

 なんだか微笑ましいものでも見たような気持ちになって、俺は笑って小袋を返した。


「とりあえず、色々調べてみるか。他にもまだあるかもしれないからな」

「はい!」


 いい笑顔で返事をした朱音と共に、俺達は小物を調べまくった。


 まず小袋に関してだが、色々なことがわかった。


 口より大きい物体は入らず、容量も無限ではない。恐らく二立米ほどだろうか。中に入れた重さも多分一割ほどは残っている。


 しかし、それでも腰に下げられるほど軽くなるし、重さも俺達ならば苦にならない。まさに探索者ならば垂涎のアイテムだと言えるだろう。


「この小袋に物を入れて持ち帰れば、政府の目を欺けるのでは?」

「一度はこちらも提出する必要がありますので、難しいかと」

「そうだった。いや、契約では半々だからもう一つ見つければ……」


 二人で何やらぶつぶつ言っていたが、聞かなかったことにする。

 一蓮托生なのだから悪だくみも程々にしてほしい。


「結局良いと思ったのはこの小袋だけでしたね。ですが他のものも何か隠された能力があるかもしれません。研究のさせがいがありそうです」


 朱音の言う通り、他にこれはと思ったものは見つからなかった。


 だが、水筒らしき金属容器、薬瓶らしき小瓶など怪しいものは片っ端から持ち帰ることにしている。今効果が分からなくても、しかるべき所で調査すれば分かるかもしれないからだ。


「小袋も原理が解明できれば更に便利になるかもしれません。量産できて、もっと大きいものを入れられて、なおかつ容量が増えれば物流さえ変わるでしょう。世界がひっくり返りますよ」

「道のりは長そうだな」

「ふふん。現物が既にあるのです。そう遠い未来とは思えませんね」


 朱音は自信満々に言っているが、俺はそうは思わない。だって既存の技術と全く違うだろうし、制限ありとはいえ容量や重さを無視して好きに入れられるとか意味不明だろ。こんなファンタジーなのどうやって再現するんだよ。


 そう思っていたら、朱音が不意に「あ!」と声を上げた。


「小袋という呼び方も様になりませんね。こう呼びましょう、四次元ポケ、」

「やめろ」


 もっと無難な名前を付けられないのか。

 アイテムポーチとかでいいだろ。


「確かにこれでは後々一悶着ありそうですね」


 朱音はそう謎なことを言って、口元に手を当てた。

 しばらく考え込むと、思いついたようににっこりと笑う。


「では、『ハコブネ』にしましょうか」


 ハコブネ? 運ぶね……。


「……駄洒落かよ。それに大仰過ぎないか」

「いいんです。始まりは小さな舟でも、いずれ世界中の荷物を運ぶかもしれませんよ」


 ……まぁ、別に好きにすればいいか。


 最初の案を採用されるくらいなら駄洒落の方がなんぼかマシだ。

 アイテムポーチより呼びやすいしな。


「お嬢様。それより、私はこのテントの方が気になります。中にある物品の劣化具合とテントの見た目が一致してません。恐らく、かなりの耐久性を誇るものかと」


 雪村さんのその言葉に、俺と朱音が顔を見合わせた。


 ……確かに。盲点だったかも。


 これも小袋、いやハコブネ並みに不思議なアイテムかもしれない。


「なら、これも持ち帰って調べてもらうか」

「持ち帰るだけでは勿体ないですよ。今夜から使ってみましょう」


 朱音のその一言で、俺達はテントを一つ回収し、実際に使ってみることに決めた。


 万が一の時を考えてテントを分けることはしないが、選んだテントは今まで使っていた二人用のより広い。もう寝返りを打つ度に、体のどっかが当たることはないということだ。これで俺も少しは安眠できるかもしれない。


 ……別に残念に思ってないよ。


 余計なことをとか、本当に思ってない。


 アイテム捜索も一段落して、俺達は一度外に出た。

 夕暮れはないが、太陽は中天をとうに過ぎている。そろそろ野営の準備をしないといけない時間になっていた。


「さて。遺跡も攻略しましたし、どうします、先輩」

「しばらくは今の拠点をベースに遺跡を調べた方がいいな。攻略といってもまだ全部見たわけじゃない。他にも便利アイテムがあるかもしれないしな」

「そうこなくては」


 朱音がそう笑いながら頷いた。

 こういったものが好きな朱音には、まだまだ物足りないだろう。

 

「概ねは賛成ですが、レベル上げも並行して行うべきかと。これらのアイテムを持ち帰るにはボスを倒さなければなりません。そうでなくとも、何をするにも強さは必要でしょう」

「そうですね。スライムも経験値稼ぎにいいですけど、無限にいるわけではないでしょうから。いえ、無限にいて欲しくはありませんけど」


 そういえばモンスターはどうやって生まれるのだろうか。消える時は溶けるように消えるし、生まれる時はどっかから生えてきたり?


 ……考えても仕方ないな。


「最終目標はボスの撃破だが、そもそも俺達はボスの姿も知らないし、見当も付いてない。それどころか三層自体あまり知らない。遺跡攻略、レベル上げと並行して、少し探索する必要があるな」

「では、日によって分けます?」

「ああ、それがいいな。どんなモンスターがいるのかも知っておきたいし、地図も埋められて一石二鳥だ。それに、他にも遺跡があるかもしれないし」

「他の遺跡!」


 朱音がまた目を輝かせた。好きだなほんと。


 けど低い確率ではないと思う。むしろ、三層という広大なエリアにある唯一の遺跡を俺達が見つけた、という確率の方が多分低い。


「よし、方針は決まりだ。今の拠点をベースに遺跡を調べる、三層を探索する、モンスターを倒してレベルを上げる。この三つだ。いいな?」

「承知しました」

「ええ。徹底的に調べ尽くしましょう」


 雪村さんが静かに首肯し、朱音は待ち切れないように笑った。


 ……これでようやく、方針も定まったか。






 次の日から、俺達は本格的に三層の攻略へと乗り出した。


 まず遺跡の攻略だが、どうやらあの巨大スライムが根城にしていた部屋が一番の目玉だったらしい。他の分岐路を調べてみたが、あまり目ぼしいものは見つかっていない。


 テントもなく、残っていたのはどう見てもガラクタにしか見えないものばかりだった。それでも朱音がいくつか持ち帰っていたから、調べて良かったということにしておこう。


「……チッ、シケてますねー」


 お嬢様らしからぬ悪態は聞かなかったことにしておいた。

 雪村さんからめっちゃ怒られてたけど、俺は知らない。



 探索を開始して最初に倒したモンスターは、倒木に擬態した巨大なトカゲだった。


 苔に覆われた背中には小さな植物まで生えていて、なおかつカメレオンのようにカモフラージュまでしていた。だが、擬態スライムに慣れたおかげか俺達は難なくその存在に気付くことができた。何事も積み重ねと応用かもしれない。


 嚙む力は強かったが、擬態に頼って生き延びる性質なのか動きは遅かった。三人で掛かれば何ということはないモンスターだ。


「なんか、三層って擬態多くないですか」

「まだスライムとトカゲだけだろ。それに擬態ならなんか分かるし、好都合だ」

「ふふん。そろそろ直球で強い相手も見てみたいですね。それともこれが三層のコンセプトなのでしょうか」


 朱音がそう調子に乗った直後、すぐに別のモンスターが襲ってきた。

 大木に何重にも巻き付いていた、巨大なムカデだ。


「ぎゃあああああああああああ!?」


 朱音がこれまでで一番の絶叫を上げたが、これはちょっと責める気になれない。


 ……俺でも気持ち悪いよ。


 全長は六メートルほど。黒光りする甲殻に覆われ、無数の脚を波打たせながら木々の間を恐ろしい速度で走ってきた。大斧を振り下ろしても甲殻に弾かれ、逆に刃が欠けそうになる。

 

 最終的に雪村さんが終始ムカデの攪乱に徹底し、俺が頭を押さえ込んでひっくり返し、朱音が絶叫を上げながら腹にあった魔石を矢で砕いた。気持ち悪さ以上に厄介なモンスターだったのは間違いない。


「……よかったな、直球で強い相手だったぞ」

「それ以上に変化球で抉られた気分ですよ!」


 完全に同意だったので、あまり強く言うのは止めておこう。

 

 それと三層には、どうやら巨人がいるらしい。


 探索範囲を広げて数日、俺達はそう判断できるような足跡を見つけた。湿った土に付いたハッキリとした足跡には、指が五本付いている。しかも足跡だけで俺達並みにデカい。もうこれ絶対巨人だろ、と。


「追います? 先輩」

「……いや、追わない」


 いつ頃ここを通ったのかは分からないが、これだけの大きさを誇るモンスターなら質量も相当だろう。歩くだけで振動が起きる。近くにいたのなら間違いなく俺達は気付くだろうし、今追っても多分無駄足になる。


 もっとも、例え近くにいたとしても行く気はない。今の俺達が、わざわざ正体不明の巨人に喧嘩を売る理由もないからな。



 ……三層は、これまでの階層とは比べものにならないほど多様だ。


 空には鉄の羽根を持つ鳥。

 地面の下には振動を感じると飛び出してくる巨大な甲虫。

 水辺には苔に覆われたワニのようなモンスター。

 花に擬態して虫を捕食するものもいれば、逆に花粉を全身へ付着させて植物の種を運ぶ巨大な蝶もいた。


 それらがモンスター同士で捕食し、逃げ、縄張りを争い、ときには群れを作っている。


 襲ってこないモンスターも多かったが、とりあえず性質を知るために一度は戦った。どれも初見では厄介だったが、一度知ってしまえば対処できない相手ではない。


 俺達は新しいモンスターと遭遇する度に特徴を記録し、危険な場所を地図へ書き込み、少しずつ行動範囲を広げていった。


 一週間が過ぎる頃にはレベルも上がり、今では俺で22、朱音と雪村さんが20にもなっている。三層のレベルキャップがいくつかは知らないが、今のところは非常に順調だった。



 そうして三層を探索する日々を過ごしていると、ある日、朝から森全体が妙に暗かった。


 嫌な予感がして探索を中止しテントに引き返すと、ポツポツと雨音が聞こえてくるようになった。どうやら三層では雨が降るらしい。この日は一日テントに引きこもることが決定した。


 ついでとばかりに回収したテントだったが、予想以上に役に立っている。いつの間にか外は豪雨になっているのに、雨に打たれる音が窓を叩くように軽い。耐久性と撥水性が途轍もないのかビクともしていなかった。どういう技術だよマジで。


 実はあの中で一番の掘り出しものかもしれないと朱音がさらに回収したがったが、嵩張るから止めさせた。偶然ハコブネを見つけたからまだ余裕はあるが、流石に2個目はいらない。


「なんだか想像していた三層とは違いましたね」


 雨が降る中、朱音がテントで横になりながら口を開いた。


「もっとこう、未知な体験の連続かと思ってました。知らない場所で、知らないモンスターと戦って、その連続みたいな」

「まさにその通りだろ?」

「そうですけど、なんか絶妙に違うと言いますか。先輩とダンジョンに潜るとあれですね、なんか生活みたいになっちゃってますね」

「三層は物資が豊富なエリアだからな。肉も食えるし魚もいる」


 朱音の言葉通り、最近は生活みたいになっている。水は当然現地調達し、食料ですら狩りを行うようになった。解体のイロハも知らない俺が実地で覚えた雰囲気解体に、二人がドン引きしてたけど。


 俺は荷物を整理している雪村さんを見た。


「雪村さんのおかげで味も増えたので、非常に助かってます」

「いいえ、これくらいは当然かと。私も美味しく頂いていますので」


 雪村さんは探索の合間にも植物を採取し、毒性を確かめながら香辛料や調味料の代わりになるものを見つけていた。

 こういったサバイバル環境下では、とても有益なサポートだと言えよう。


 ……それにしても、ダンジョンにいる獣の肉って美味いよな。


 たまたま当たりを引いただけかもしれないけど、ダンジョンでとれる素材だけで作った飲食店とか開いたら、物珍しさからかなり流行りそう。


 ちなみに、モンスターの肉はまだ食べたことがない。


「……まぁ、そうですね」

「なんだ、不満なのか?」

「まさか。不満なんてありませんよ」


 そう言いながら、朱音は寝苦しそうに裾をまくってパタパタした。


 ……ああ、まぁ確かに、女性にはきつい環境だよな。


 命懸けで動いている間は気にならなくても、こうして生活に余裕が出てくると話は別なのかもしれない。


 湖を使ってたまに雪村さんと交代で見張りながら水浴びをしてるみたいだけど、それだけじゃどうにもならないことも多いのだろう。服だって好きに洗えないし、着替えにも限りがある。命の危険が薄れた今、そういう細かな不便が気になってきたのだろうか。


 ……正直気にするほどかと思うけどな。


 だってテントの中良い匂いしかしないもの。不思議だよな、意味不明だよ。

 

 どちらにせよ、男の俺が下手に口を出してもろくなことにならない。

 俺は知らぬ存ぜぬ気にせずを通すのがここでの正解だ。



 

 そうして雨の日を過ごすと、翌日には晴れていた。


 三人で朝日を拝むようにテントから出ると、不意に雪村さんがナイフを握る。

 俺と朱音も連動するようにそれぞれ武器を構え、雪村さんの視線を辿った。


 その先には……一匹のモンスターがこちらを見ていた。



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